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見聞きする物は虚構か真実か。精神を刺激するアクションADV「Hellblade: Senua's Sacrifice」:Steam

2017年09月15日 18時00分更新

 現代社会は病巣である。身体的な病気だけではなく仕事、対人関係、心理的な抑圧、先天的な精神への病気もある。だが、そんな障害に向き合い、理解を深めることで障害を乗り越える事も、治療、相互の理解へと繋がることもある。だが、無理解と恐れから敵対心を持ってしまえば、そこに向かうのは悲劇のみである。理解とは何かを定義することは難しいが、理解するという事自体がおこがましいとも言えるかもしれない。ただ、理解しようとすることは決して偽善ではない。

 第59回はそんな相互不理解と、恐れに立ち向かうアクション作品である「Hellblade: Senua's Sacrifice」を紹介しよう。

 

 本作品は日本語字幕に公式で対応している。また、操作はキーボードとマウスでもプレイ出来るが、アクションゲームとしてはコントローラーの方が操作がしやすいだろう。さらにはゲーム内での表現をフルで味わうためにも密閉型のサラウンドヘッドフォンの使用を特にオススメする。

圧倒的なビジュアルとサウンドで描かれる世界

注意:本作品は精神的疾患、特に幻覚や幻聴の疑いもしくは症状のある方、肉体的、精神的に疲れている際のプレイをおすすめ致しません。また、極度に酔いやすい方は適度な休憩を挟む事を推奨します。(公式サイトより)

 本作品は精神病や、精神科医らの協力を得て制作されたゲームである。公式の注意文も起動時に出る警告も、やや淡々としているが、感受性が高い人も当てはまる可能性が高い。

 本作品の主人公は画像の「セヌア」である。ケルト人の戦士である彼女は、恋人である「ディロン」の魂を救うために北欧神話でおなじみの冥府の女神である『ヘル』の元に赴こうとする。この冥府は亡者の巣窟であり、行き場を失った魂が常にうごめいている。

 セヌアはプレイヤーが操作するキャラクターであるが、セヌアだけではなく、更に他の亡者の声が延々と周りから聞こえ続ける。この声が、時には幻覚や正気を揺らがせていく。

 やや導入の説明が長くなったがゲーム部分の説明をしよう。スティックでの移動、Aボタンでのオブジェクトの操作といった部分は一般的なアクションゲームと変わらない。ただ、アクションもメインではあるのだが、どちらかと言えばアドベンチャーパートの方が長いと言うべきであろう。

セヌアはコントローラーのスティックで操作できる。LBを押す事でダッシュができる(オプションで固定と押しっぱなしかに切り替え可能)

 アドベンチャーパートではパズルのようなギミックを解いて進んでいかなくてはならない。

 例えば、閉じた門に画像上の円マークがあればLトリガーでフォーカスを合わせることでパズルパートへ突入する。そのパズルパートでは扉に書かれている同じルーン文字のアイコンが重なる場所を見つけ、同じようにフォーカスを合わせることで解除できる。言葉での説明では分かりにくいが、パズルは全て同じ解法なので一度やればコツは掴めるだろう。このパズルパートでは亡者の声も頼りに道やギミックを探す事になる。

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画像はズバリ答えなのだが、全てのパズルパートの解法は、ほぼ同じだ。中には非常にひねった答えもある。

戦士の誇りを示し、闇を打ち払え。

 アドベンチャーパートには戦闘が挟まるポイントもある。アドベンチャーパートに力が入ってるいるので戦闘パートはそうでもない?と思うかもしれないが、それは間違いだ。タイマンでの読み合いだけではなく、多人数との激しい剣劇は本作品のパートでも異質でもある。だが、この戦闘中も亡者の声は絶えず聞こえ続ける。「後ろにいる」と、ふと聞こえたときにはもう遅かったりするのだが。

 戦闘はAボタンで回避、Xボタンで高速攻撃、Yボタンで強攻撃、Bボタンで格闘、LBキーで防御だ。初回の戦闘でも一切の説明が出ないため感覚で戦うことになるが、相手の攻撃に合わせてタイミングよく防御するとカウンターとなったり、相手の攻撃モーションの隙間に攻撃を挟むといった戦闘システムはシンプルだが一進一退をドラマチックに演出してくれる。

 戦闘パートが苦手であっても難易度設定が柔軟に変更できるようになっており、オプションでイージーからハードまで設定が可能だが、標準ではオートとなり戦闘結果次第で目に見えない形で自然にプレイヤーの腕前に合うようになっている。

戦闘中はRBボタンを押しながら移動する事でダッシュもできる、ダッシュ中に攻撃をすれば各種ボタンに応じた行動も可能だ。

高画質を更に楽しむ第三の要素

 ゲーム中、スクリーンショットを自由な角度、視野、露出で撮影できる機能を本作品は搭載している。『NVIDIA Ansel』と『写真モード』と呼ばれるものだが、前者は対応のNVIDIA製のGeForceグラフィックボードが必要で、後者はゲーム内機能で、ある程度同じ内容のことができる。“Ansel”はキーボードのAlt+F2、“写真モード”はコントローラーの十時キーの下を押すことで、文字通りどんなタイミングであってもシームレスに起動できる。

 詳しい説明は割愛するが、キーボードのWASDとコントローラーの左スティックが画面のカメラ位置の移動、マウスと右スティックがカメラの向きの調整になる。なお、今回の記事の画面写真の8割はこの機能を使用して撮影している。

 “Ansel”と“写真モード”の大きな違いは360度のパノラマ写真や超高解像度化画像の作成ができるかどうかにある。上記のスクリーンショットは解像度を下げているがAnselのパノラマ機能で作成しているので、雰囲気をある程度味わっていただけるかと思う。(360度画像の閲覧方法は記事の最後に記載。)

ゲーム表現の勇気ある挑戦

 私は、序盤でのプレイでホラー作品であるという過程で原稿を書き進めていた。前評判でホラー作品と聞いていた事もあるが、幻聴や幻覚、時折感じるその理解の難しさから精神的な恐怖作品であると。

 だが、エンディングを迎え、本作品は決してホラー作品ではないと結論づけた。ゲームとして見た際に本作品はゲーム中に全くチュートリアルに当たる部分がなく、プレイマニュアルですら存在しない。言うなればリニアデザインのように一直線へとエンディングまで向かうが、そのエンディングまでの道程は決して平易なものではない。その道の困難な道程はセヌアの心理状態や精神状態をゲーム内で描写することで、セヌア自身の状態をプレイヤーが追体験するようになっている。

 プレイを重ねていく内に様々な見えてくる世界と、聞こえてくる言葉、彼女を襲う重圧をプレイヤーは感じることができるだろう。理解できるとは決していわない。「感じる」とだけしかいうことはできない。直接的に書くこともできてしまうが、それは理解とは言えない。やや持って回った言い方となってしまうが、本作品を面白さという観点からでは非常に評価が難しいが、歳を重ねて得た感受性という面から見れば非常に大きな印象を残したゲームであった。

 他者の無理解や、無理解から生まれる悲劇。その悲劇で巻き起こされるトラウマ。本作品を実質的に理解するのは非常に難しい。ただ理解できずとも理解しようとすることが、大人としてひとつ成長を重ねることになるだろう。今回は私のこの感想を持って終わりたいと思う。

Hellblade: Senua's Sacrificeの推奨動作環境は?

 GPUが最低GTX770(2GBメモリー以上)とあるが、“写真モード”はGPUを問わないが、Ansel機能を使いつつゲームを隅々まで堪能するなら、できるだけ性能が良いNVIDIA製のグラフィックボードを採用したい。さらに本作品は、密閉型のヘッドフォンや、没入できる環境下でプレイすることを強く推奨する。本記事では下記に添付した画像のオプション設定で1920x1200の解像度でスクリーンショットを撮影している。筆者のスペックはSteamのプロフィールに記載の通り(Core i7 3960X / GeForce GTX1080)となる。この設定で常時60fps以上(同期オフのため)をキープしていた。

記事中のパノラマ画像の閲覧方法

 VR機器を所有している場合はNVIDIA公式の説明を読んでいただけるといいだろう。もしVR機器を未所有の場合はGoogleフォトドライブにアップロードすることで自動で閲覧できるようにエンコードできる。是非、試してみて欲しい。参考に筆者が取ったスクリーンショットのアルバムを作っておいたので見てみて欲しい。(参考画像リンク

『Hellblade: Senua's Sacrifice』
●Ninja Theory
●2980円(2017年8月8日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows 7以上
ジャンル 雰囲気、精神的、女性主人公、物語、神話
© 2017 Ninja Theory Ltd. All Rights Reserved

■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat

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