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マイクロソフトが考えるクラムシェルPCのカタチ

Surface Laptop 試用レポート 手触りがよくて使いやすい末っ子なのである!!

2017年08月24日 17時00分更新

 マイクロソフトが5月26日に日本での新Surfaceシリーズを発表し、StudioとProはすでに発売していたが、Laptopも7月20日についに出荷が開始され、製品が到着したので試用してみた。Laptopは、SurfaceBookとほぼ同じサイズのPCである。ProやBookと異なり、変形なしの完全クラムシェル型で2in1ではない。

これがいちばんオーソドックス(?)な「プラチナ」色ですよ

使い始めはまずPro化?
Windows 10sにつまずく

 起動してまずはベンチマークアプリを起動しようとして、断られた。そうです、SurfaceLaptopには「Windows10S」が搭載されているのです。「S」の最大の特徴はストアアプリしか利用できないことです。

 なので、いつものフツーのアプリを起動しようとするとエラーメッセージが表示されるのだが、このとき「方法を確認する」というリンクがあり、押すとストアの「Windows 10 Proへのアプデ」というページが自動的に表示され、今年中なら無料でProに変更できますよと表示される。

 ネットの情報では「元(つまりS)に戻らなくなる」というウワサなのだが、アプリが動かなければなにもできないので、とりあえずProにしてみた。ものの数分でダウンロードが実行され、再起動しすれば、すでにProとなっている。いかに「S」が「Pro」に近いモノかが体感できるのである。

Windows 10Sでフツーのアプリを起動しようとすると、この警告とともに却下される。

ストアのWindows 10 Proアップデート画面へジャンプして実行する。

Windows 10Sで使っていた人はPro化するときにはデータをバックアップしておこう!!

 ちなみに、Windows 10マシンでPCを工場出荷状態に戻したい場合、「回復」の「初期状態に戻す」を実行するのだが、Pro化してしまったLaptopの場合、これを実行しても……戻るのはProであった。Sに戻したいときには、リカバリーイメージ(5.5GB)をマイクロソフトのサーバーから落として初期化することとなる。SからProへの変更がカンタンだったのだから、逆もカンタンにしていただけるとありがたいです……。

エクセーヌじゃなくてアルカンターラ
この感触は新鮮なのである

 LaptopはCore i5で2モデル、Core i7で2の4モデル構成である。Core i5のほうはメモリ4GB+SSD128GBと8GB+256GBで、下位はボディカラーがプラチナのみ、上位はバーガンディ、コバルトブルー、グラファイトゴールドも選択できる。Core i7はメモリ8GB+256GBと16GB+512GBの2モデルで、いまのところプラチナのみで、予約受付中だ。

箱はコンパクトサイズで、ぎりぎり本体が収まっている。ACアダプターは下ですよ!!

 Laptopの液晶を開けて目に入るのは、やはりキーボードの一面を飾る「アルカンターラ」である。この名前、一般名詞だとおもっていたのだが、イタリアのアルカンターラ社の商品名で、組成は68%のポリエステルと32%のポリウレタンからなる。外観と触感は天然スエードに近いのに、耐久性とクリーニング性が高いのが特徴だ(参考:Wikipedia)。

 そして、アルカンターラは、元々は東レが開発した人工皮革「エクセーヌ」であり、当初、アメリカでは「ウルトラスエード」、工業用ブランドは「アルカンターラ」とした。

 おかげで、BMWにメルセデスにマセラティにランボにポルシェにフェラーリも内装にアルカンターラを採用。現在は、工業用(自動車用)はアルカンターラ、一般用はウルトラスエードに統一され、エクセーヌという名称は公式には使われなくなったそうである。

 というわけで、日本人としては「液晶を開けると、ステキな手触りのエクセーヌにおおわれた大地が現れた」と表現したいところだが、アルカンターラだ。金属やプラスチックのパームレストと異なり、温かみとキモチよさがある。こればかりは、ぜひみなさんにも実機を触って、感じていただきたい。

アルカンターラの肌触りはとてもいいので、ぜひ実物を触ってみてくださいね。

13.5型3対2液晶は
広大な印象なのである

 それはともあれ、とにかくSurfaceLaptopの印象は、キーボード面の人工皮革と、液晶の大きさによるところが大きい。液晶は、SurfaceBookと同じ13.5型の3対2比率であり、実測すると画面表示部は285×190mm。面積では542平方センチとなる。

 日本における標準的モバイルノートは13.3型の16対9液晶なので、295×162mmで約478平方センチだ。SurfaceLaptopは面積にして13%広く、液晶の縦方向は28mm長い。面積で64平方センチというと、8×8cmだから、これはなかなか印象が違うものである。

LAVIE ZEROくん(右)と並べてみました。壁紙は横幅合わせで表示しています。横幅はZEROのほうが長いのですが、総面積はやはりLaptopです。

 液晶の解像度は、2256×1504ドットでちょうど200dpiとなる。同じ会社、同じ液晶サイズのSurfaceBookは、より細かい3000×2000ドットの267dpiである。Bookのほうはキーボードから取り外してタブレットとして使うから密度が高い必要がある。つまり、より目に近い場所で使われることを考慮して、解像度を上げているのだ。SurfaceProも液晶サイズは違うが267dpiになるから、タブレットとクラムシェルの違いなのである。

 Laptopの200dpiは十分な解像度で、100%表示では文字が小さくなりすぎるから、結局125~150%表示にして使うことになる。

 本体サイズは308×223×14.5mmと、狭額縁の元祖であるデルのXPS13の304×200×15mmに、幅で4mm、奥行きで23mmオーバーしている。奥行きは液晶サイズの違いでしょうがないが、いまどきの最新ラップトップとしては、ぎりぎりな狭額縁を狙ってほしかった。

液晶の狭額縁化はもうひとがんばりだが、視野角はかなり広くて使いやすいのだ。

 重量は1252~1283gと、海外パソコンとしては軽い。ただ、13型モバイルノートとしては、やはりNECのZEROや富士通のUHが700~800グラムを実現している日本では軽いとはいえない。500グラムの差といえば、ペットボトル1本ぶんだから、カバンに入れたときの重量感はいかんともしがたいだろう。

 キーボード配列は、BookやProやStudioと同じ日本語配列で、キーボード幅274ミリは標準的だが、キー配列のデザインがやや左手重視で、日本独自の「け」や「む」は同寸ながら、「¥」のためにバックスペースがやや小さい。

日本語キーボードは右上の部分が若干きゅうくつである。

 これは英語キーボードも同じだが、右上のDelのひとつ左側に電源ボタンがある。ここはBookでは液晶取り外しキーで、Proではインサートキーと、機種によって異なる。カーソルキーが凸型配列ではいのは全機種共通だ。

 キータッチはBookとほぼ同じだが、キーボード面がやや弱く、強く押すとたわむ感じがある。とはいえ手首にあたるアルカンターラはとてもキモチいいのである。

 タッチパッドの面積もBookと同じで105×70mmと、画面にあわせて四角くて十分広い。表面は、Bookほど滑りがよくないと感じた。

 インターフェイスは、USB3.0のType-A端子が1つとminiDisplayPortが1つとシンプル。デスクではSurfaceConnect(電源をつなぐところ)に専用ドックをつなげばいいが、出先ではちょっと不便だ。

USBはType-Aが1つだけと、ちょっと寂しい。右側はACアダプターや拡張ボックスをつなぐ専用端子である。

ベンチマークテストは優等生
ただし試用モデルのSSDは遅め

 みんなの大好きなベンチマークテストをとってみた。試用機はCore i5-7200Uの8GB+256GBモデルで、CinebenchはCPUが328、OpenGLが43と、標準的な値だった。

 3DMarkのFirestrikeは936と、Core i5モデルとしては最速。FFXIVなどほかの3D系ベンチマークテストもi7-7500Uに迫る値が出た。とはいえ、Core i7-7660UというIris搭載のSurface Pro 5に比べると、ちょうど60%の速度だった。

 3D系ベンチをまわすと冷却ファンが動作する。スーという音が液晶の付け根の部分から出てくる。液晶ヒンジの上下両方にスリットがあり、液晶側が出口、背面側が入口になっている。排気がまわりの人にかからないこの方式は、スリムノートではすでに常識化してきたようだ。吸気がヒンジ下というのは珍しいが、底面がフラットで穴もなく、スマートなデザインとなっている。

液晶ヒンジの後ろ側にきれいにスリットがあり、吸気する。

ヒンジの液晶側から排気が出てくる。液晶面をつたわって上部に発散するのは最近のハヤリ。

 SSDのベンチはいつものCristalDiskMarkで、こちらはちょっと遅めの結果。マルチのシーケンシャルリードが651、ライトが243と、SurfacePro5の1676/974の半分以下の速度だった。試用機が搭載しているSSDは東芝の「THNSN0256GTYA」で、BG2シリーズという、PCIe-NVMeタイプではあるが、速度はXGより遅いモデルである。インターフェイスではなくドライブそのものの速度が出たかたちだ。

 バッテリーベンチはいつものとおり、BBenchを使って、液晶輝度最大、省エネ設定OFFで実行したところ、4時間10分動作した。これは優秀な値で、バッテリー容量は45WhとSurfaceProと同量ながら、1時間近く長くもったことになる。

 同梱のACアダプターは102W型の、Surfaceシリーズとしては小型のほうだが、消費と同じ使用条件で50%まで53分、70%まで80分で到達。これもPro5より20%高速だった。もちろんCPUが違うのだが、液晶はProよりLaptopのほうが大きく、これだけバッテリーの利用が「うまく」なっているのは進化なのである。

 SurfacePro5と同様に、画面右下のバッテリーアイコンをクリックすると、バッテリーを節約するか、速度を重視するかをスライダーで指定できる。Surfaceシリーズ向けのカスタマイズだが、気軽に変更できるのは便利なので、Windows10の標準機能にしてほしいものである。

左のバッテリー駆動時は4段階で、右の電源接続時は3段階で、時間と速度を勘案できる。

速くてバッテリーの持ちもいい
液晶サイズを見て欲しくなったら即買うべし

 残念ながらCore i7モデルはまだ発売されておらず、Laptopの最高パフォーマンスはわからないのだが、3対2の大画面で仕事にも勉強にも使いやすく、バッテリーも長持ちでモバイルノートとしての出来はいい。

こうして並べるとLaptopは中央にいて次男のようだが、ハードウェアスペックとしては末っ子である。

 SurfaceLaptopは兄弟でいうと末っ子である。アニキ分のPro5とBookのスペックが高いぶん、Laptopは性能としては不利だが、液晶を指1本で開けられる、アニキたちにはない「スマート」なモバイルノートである。Proのつっかえ板がどうしても好きになれないキミやボクには、うってつけのSurfaceくんなのである。

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