2017年07月15日11時00分

IEM界のWizard来日、Noble Audioのモノ作りを語る

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 米Noble Audioの共同創業者のひとりで、「Wizard」の異名を持つエンジニア、ジョン・モルトン博士が来日。記者の質問に応えた。モルトン博士は、オーディオロジスト(聴覚学者・聴覚専門医)としての経歴も持ち、補聴器の開発に携わった経験も持つ。

Noble Audio
ジョン・モルトン博士

 テキサスの片田舎で育ち、街にある信号は3つだけ。タクシーをはじめて見たのは20歳になってからというモルトン氏。父は同じ聴覚士、母は専業主婦で油絵など芸術にも造形が深く、祖父は木を使った工芸が好き。現在の仕事のきっかけとなる要素がある家庭で育った。

 Noble Audioは2013年の創業で、海外でのブランドの評価を考えると驚くほど最近できた会社だ。きっかけとなったのは、モルトン氏がタイの補聴器会社に勤めていたころ、木で削ってカスタマイズしたIEMを海外のオーディオマニアが集うフォーラム「Head-Fi」に投稿したこと。大きな関心を集め、いつしかモルトン氏に「Wizard」というふたつ名が付いた。モルトン氏は、カスタムIEMを手掛けるメーカーはすでにあったが、「美しいものを作る」「芸術家としての血をわき立たせる」といった視点で開発しているメーカーはなかったと回想する。

 Noble Audioの製品はすべてアルミ削り出しもしくはアルミ削り出しプレートをあしらったデザインであるが、そのこだわりの深さが感じられる。多彩なカラーと個性的なネーミングは同社の製品の特徴だ。形状にはあまり差がないが、これはコストに配慮し、いい製品を低価格で届けたいという気持ちがあってのことだという。

Noble Audio
KATANA
Noble Audio
KAISER ENCORE

 ラインアップにはトップエンドの「KATANA」「KAISER ENCORE」を筆頭に、多数のBAドライバーを内蔵したハイエンドモデルが並ぶ。ただしすべてがKnowles製のカスタムBAドライバーを使用しているとのこと。

Noble Audio

 カスタムする理由としては、適切なインピーダンスを得たり、ベントレーション(BAドライバーに開けられた穴の位置)などにこだわっているためだという。イヤフォンの形状に合わせて配置しやすい形があるため、配線やチューブの場所をカスタマイズするという。使用するユニットは、周波数特性を参考にシミュレーションを通じた計算で、適切な組み合わせを想定し、サンプルを見て計算通りにいい音が出ていれば量産に回す。この組み合わせは手作業で試行錯誤することも可能だが、効率性を考えてか、メーカーに発注してカスタムしているようだ。

 こうした複数ユニットの組み合わせについては「10代のころから、車のステレオを自分で作っていた経験が生きていて、これとこれを組み合わせればよくなるという感覚が染みついている。(もうつぶれたが)RadioShackでアルバイトもしていた」とコメントした。

 KATANAなどの製品では、他社とは異なり、帯域別にいくつのドライバーを使用するかの情報が書かれていない。導管の数を見ると、片側2基のSAGEは2つ、ほかは3つになっているので複数ドライバーを組み合わせて2ウェイもしくは、3ウェイの構成にしているのではないかと想像できる。ただしこのあたりはノウハウが多いためか、質問しても言葉を濁していた。

Noble Audio

 ちなみに音調については、リファレンスとミュージカルの2種類がある。過去の代表モデルである「Kaiser 10」(K10)を開発する際、モルトン氏は「K10では偏りのない音を目指し、リファレンスとミュージカルの中間を狙った」そうで、K10でもリファレンスたりうる性能を持つと考えていた。しかし、より「分析的に音そのものを楽しみたい」層が多いというニーズを鑑みて、リファレンスラインの「KATANA」の開発を決めた。その後ミュージカルラインとして「KAISER ENCORE」も投入したが、ミュージカルラインの機種ではあるが、K10よりはリファレンス寄りのサウンドになっているという。

 なおカタログには現行機種のうち、KATANA、KAISER ENCORE、SAGEのみが「NOBLE DRIVER」を使用するとうたっている。NOBLE DRIVER自体にしっかりとした定義はないが、Noble Audioでは、この言葉を「ほかよりも上級」というマーケティング的な意味を込めて使用しているようだ。ちなみに、それ以外の機種でもすべて特注品のBAドライバーを使用しており、細かな調整を加えたうえ製品化しているという。

 ネーミングについても独特だが、おおむね音のイメージに合ったものをブレストして決めているそうだ。高解像度で研ぎ澄まされたサウンドの「KATANA」や低域を重視した「DULCE BASS」(甘美な低音)などは分かりやすいが、フラットな音だから「SAVANNA」(アニソンとの相性もいいとのこと)、3ドライバーだから「TRIDENT」(三又の鉾)といった、変化球的なものもある。ちなみに「DJANGO」は映画作品がモチーフで、6発打てるガンマンと6基のドライバーをかけたネーミングとのこと。色も登場人物の紫のジャケットを踏襲した。KAISERも映画からとった名前で、「Usual Suspects」に登場する伝説のギャング「カイザー・ソゼ」が由来だという。

 Noble Audioの国内販売代理店がエミライに変更となり、ユニバーサルIEMの現行7モデルのパッケージ内容と販売価格も変更となっている。変更点としては付属ケーブルをこれまで実売1万4000円程度で販売されていた銀コートの交換ケーブル「ULTRA THIN Cable」に変更。さらにパッケージも従来のペリカンケースに加えて、円形の新しいプラケースも付属する。価格はすべてオープンプライスだが、実売価格は基本据え置き、「Noble Driver搭載機種」ではさらに最大1万円程度安価となる見込みだ。なお、記事内の写真では従来標準だった黒いケーブルが写っているが、これらは全てULTRA THIN Cableとなる。

Noble Audio
ULTRA THIN Cable
Noble Audio
従来からあるペリカンケース
Noble Audio
新しく付属するケース
Noble Audio
このような形の新パッケージに収められる

 新パッケージへの切り替えは現在準備中で、7月中には開始したいとのこと。製品ラインアップと予想実売価格は下記の通り。

フラッグシップ製品
製品名 実売価格 傾向 NobleDriver 削り出し筐体
KATANA 19万8000円 リファレンス 片側9基
KAISER ENCORE 19万8000円 ミュージカル 片側10基
クラシックライン
製品名 実売価格 傾向 NobleDriver 削り出し筐体
DJANGO 11万6000円 ミュージカル 片側6基
DULCE BASS 8万2000円 ミュージカル 片側5基
SAGE 7万1000円 リファレンス 片側2基
SAVANNA 5万9000円 ミュージカル 片側4基
TRIDENT 4万8000円 ミュージカル 片側3基
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DJANGO
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DULCE BASS
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SAGE
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SAVANNA
Noble Audio
TRIDENT

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