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「私自身がファンなので、実写化したら絶対観たいと思ったアニメのシーンは採用した」

『ゴースト・イン・ザ・シェル』監督インタビュー「押井さんの言葉に開放感を感じた」

2017年04月01日 10時00分更新

『ゴースト・イン・ザ・シェル』のメガホンを取ったルパート・サンダース監督にインタビュー

 4月7日に、攻殻機動隊をハリウッドで実写映画化した『ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開される。筆者は攻殻機動隊のファンで、この映画のエクスクルーシブイベント(関連記事)から取材に参加し、製作総指揮のProductionI.G 代表取締役社長 石川 光久氏へのインタビュー(関連記事)も行なった。

 そして、満を持して『ゴースト・イン・ザ・シェル』を手掛けたルパート・サンダース監督にもインタビューすることができた。

押井さんの言葉のおかげで、非常に開放感を感じた

ーー本作は、今までの攻殻機動隊シリーズから採用した設定やストーリーが見受けられたのですが、これらの設定を持ってくる際に採用する基準などはあったのでしょうか

ルパート・サンダース監督(以下、サンダース監督):直感ですね。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(以下、S.A.C.)や『イノセンス』などを全部観て、響いたイメージやシーンを壁に貼り出しまし、グラフィックノベルに書き直してたんです。そこにストーリーや今回のイメージが含まれています。

士郎 正宗氏の原作や『イノセンス』、S.A.C.へのリスペクト、オマージュを感じるシーンもありつつ、新たな物語や映像としての魅せ方、世界観などがしっかりと組み込まれていた感じがあります。このバランスというのはどうお考えになったのでしょうか

サンダース監督:押井さんが「背景やキャラクターなどはオリジナルに囚われず、自分のバージョンを作り上げればいいんだ」と言ってくれたので、非常に開放感を感じました。

 私は攻殻機動隊シリーズのファンなので、実写化するとしたらどうしても観てみたいシーンがあるんです。そのまま実写化するのはまずありえないですが、例えば水のファイトや芸者の頭が爆発する部分、ブリーフケースが機関銃になるところなど、実写でも絶対に観たいという部分は入れています。ストーリーは、初心者でも入り込めるように心掛けて作り上げました。

水の上でのファイトなど、アニメを彷彿させるシーンもいくつか登場する

アニメではおなじみの、少佐がビルから落ちていくシーンも

ーー攻殻機動隊は人間の魂の所在がテーマの1つとしてありますが、制作するうえでテーマ性をわかりやすく伝えるために意識したことはありますか?

サンダース監督:私としては、答えを出すわけではなく問いかけをしたいと思ったんです。どちらかというと、すっと入り込めて臨場感たっぷりなワクワクするアクション映画にしようと考えました。アニメでは思想やテーマが表面にあったんですけど、入り口は簡単にして中に入っていけば色々な疑問がでてくるようにしたかったんです。

荒巻はお父さん、バトーはお兄さんというイメージ

ーー本編を鑑賞した個人的な印象だと、士郎正宗氏の原作、『イノセンス』、アニメシリーズの世界観や人物像などを監督なりの攻殻機動隊に落とし込んで映像化されている感じがしました。気になるのが人物像なのですが、監督が考える少佐、バトー、荒巻とは簡潔にどういう人物なのでしょうか。

サンダース監督:荒巻はお父さん、バトーはお兄さん、少佐は自分が何者かを探している思春期の女の子というイメージです。

ビートたけしさんが演じる荒巻にも注目だ!

ーーアニメシリーズと比べて少佐にどこか温かみがあるなと感じたのですが、いかがでしょうか

サンダース監督:スカーレット・ヨハンソンが演じているのが全身義体の捜査官なので、あまりにも観客と距離感をつくってしまうと、彼女に共感できなくなってしまうと考えました。アニメだったらそれでもいいかもしれないですが、やはり映画だと登場人物に思い入れができないとどうでもよくなってしまいますから。彼女とバトーの関係をより強く出したのには、そういう意図もあるんです。

少佐は、アニメシリーズより少しだけ温かみを感じた

少佐とバトーの関係性にも注目しながら観てほしい

ーー過去の作品に影響を受けた作品はありますか?

サンダース監督:リドリー・スコット監督の作品が大好きで、『ブレードランナー』や『エイリアン2』『2001年宇宙の旅』などの影響はあるかもしれません。ただ、攻殻機動隊はインスピレーションが多いので、(ほかの作品からのインスピレーションは)それほど必要じゃなかったです。


ーーProduction I.Gの石川社長がおっしゃっていて、私も鑑賞してすごく感じたのが、未来の世界の作りこみです。ホログラムで巨大な人間の広告があったりサイボーグがその辺を歩いていたりと今ではまだ実現していない技術がある中で、薄暗いスラム街のような場所はあまり進化していないなど、未来ではあるけど行き過ぎていない感じがしました。この世界観へのこだわりを教えてください

サンダース監督:石川社長が喜んでくれるように作りましたから(笑)。まず、触れる、信じられる世界観で、かつグラフィックのようなアニメのような感覚で撮影したかったんです。スラム街のように現実の世界観もあるのですが、少し視覚効果を追加して、現実とは何かちょっと違うという感じにしました。私と大学時代から一緒のジェス・ホールが撮影を担当していて、彼が各シークエンスのためにアニメから採用した色々な色彩をLEDを使って雰囲気づくりをしました。

本作は光の使い方がすばらしい

攻殻機動隊ファンのために作ったが、そうでない人にもわかりやすい作品を目指した

ーーまだまだ聞きたいことはたくさんありますが、最後にメッセージをお願いします

『ゴースト・イン・ザ・シェル』を通じて、世界中の人々に日本の文化に興味を持ってもらいたいと語るサンダース監督

サンダース監督:私自身が攻殻機動隊ファンなので、もちろんファンのために作った作品ですが、そうでない人にもわかりやすい作品になっていると思います。本作を機会に前の作品にも興味を持ってもらえると思っているし、日本のアニメ、漫画の文化に触れてもらいたいと考えています。本作を通じて日本の文化に興味を持ってもらえたらうれしいです。

ーーありがとうございました

紛れもなく攻殻機動隊だが、どの攻殻機動隊とも違う世界

 私自身、攻殻機動隊のファンなので、実写化はどうなんだろう? と不安に思うことはあった。しかし、鑑賞した結論からいうと、『ゴースト・イン・ザ・シェル』は紛れもなく攻殻機動隊だったが、今までの作品とは異なる新しい攻殻機動隊だった。

 インタビュー中もサンダース監督は自分自身がファンだと語っていたが、本作は確かに、監督自身が研究・解釈した攻殻機動隊の世界を実写として具現化したような作品だった。押井 守監督の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」「イノセンス」や、神山 健治監督のS.A.Cシリーズのファンの人も、どちらにもリスペクトを感じつつ、新たな攻殻機動隊の世界を描き切った本作を、ぜひその目で確かめてほしい。

 もちろん、本作はド派手なアクションも豊富で攻殻機動隊を観たことがないという人もすんなりとのめり込める作品になっている。監督も言っていたように、この作品を観て面白かったと感じたならば、前の作品も鑑賞してみてはいかがだろうか。『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、4月7日に公開予定だ。

作品概要

作品名:『ゴースト・イン・ザ・シェル』
監督:ルパート・サンダース
公開日:4月7日
配給:東和ピクチャーズ

イントロダクション
 近未来、脳以外は全身義体の世界最強の少佐(スカーレット・ヨハンソン)は唯一無二の存在。悲惨な事故から命を助けられ、世界を脅かすサイバーテロリストを阻止するために完璧な戦士として生まれ変わった。テロ犯罪は脳をハッキングし操作するという驚異的レベルに到達し、少佐率いるエリート捜査組織・公安9課がサイバーテロ組織と対峙する。捜査を進めるうちに、少佐は自分の記憶が操作されていたことに気づく。自分の命は救われたのではなく、奪われたのだと。―本当の自分は誰なのか?犯人を突き止め、他に犠牲者を出さないためにも少佐は手段を選ばない。全世界で大絶賛されたSF作品の金字塔「攻殻機動隊THE GHOST IN THE SHELL」をハリウッドで実写映画化。

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