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孫正義氏、MWCの基調講演に登場 「2018年にシンギュラリティが現実に」「1兆個のIoTチップを出荷」

2017年02月28日 20時00分更新

 2月27日にスペイン・バルセロナで開幕したMWC 2017。初日の最初の基調講演にソフトバンクの孫正義氏が登場。2016年に320億ドルで買収したARM買収の狙いについて語った。「コンピューターの脳が人間の頭脳を上回るシンギュラリティーは30年以内に起こる」と予想するとともに、スーパーインテリジェンスの誕生が現実のものになるとした。

 孫氏は同業のオペレーター、政府関係者、モバイルが関連したサービスや機器メーカーといった業界関係者を前に、「今後30年のビジョン」として、将来についての自身の予想を披露した。なお、傘下のSprintの動向について、憶測が米国を中心に出ているが、これについては一切触れなかった。

ジョークも交えつつ英語で講演した孫氏。笑顔も見られた

シンギュラリティーはまもなく実現される
ARMではセキュリティーに力を入れる

 「シンギュラリティーは今後30年内に起こる。現実になる」と孫氏。シンギュラリティーとは、人間の脳の結合の限界をコンピューターが上回る事象で、技術的特異点とも言われる。「コンピューターのチップのトランジスタが人間の脳細胞を上回るのはいつか、20年前に計算したら2018年だった。数年前にもう一度計算したら、やはり2018年だった」と語る。

 重要なのは、予想通り2018年かが重要なのではなく、人間の神経細胞は増えていないということだとも続ける。なお、Wikipediaによるとシンギュラリティーの提唱者は2029年頃と予想していたそうだ。

 「人間のIQの平均は100、アインシュタインなど天才と言われる人は200と言われている。30年以内にコンピュータのIQは1万になる」と孫氏、人間より50倍も優れていることから「スーパーインテリジェンス」と呼ばれている。

 スーパーインテリジェンスが今後30年内に誕生し、これがロボットに組み込まれてスマートロボットとなる。孫氏の解釈では、自動車もスマートロボットであり、「飛ぶ、泳ぐ、走る、大きい、小さいなどさまざまな形のスーパーロボットが登場する」という。スマートロボットの数が人間の数を超え、「人々の生活は大きく変わる」という。

 これこそが、2016年10月に発表した1000億ドル規模の「Softbank Vision Fund」の立ち上げ、ARMの買収の理由だという。

 「ARMはCPUの99%を占めており、IoTチップの80%がARMだ。ARMを所有することで、将来の設計ができる」とする。自動車、産業、ヘルスケア、様々な業界で使われ、クラウドに繋がる。これによりリアルタイムで共有や操作が可能になる。

 孫氏は、「チップが入っている靴の方が、人間よりスマートになる。我々は足でそれを踏むことになる」とのジョークで会場を沸かせた。

 そのARMでは、現在セキュリティーの強化にフォーカスしていることにも触れた。「ARMチップはこれまで安全とは言えなかった」とし、ハッキング事件は増えておりIoTデバイスも例外ではなくなっていると続ける。IoTによるARMチップの用途拡大を受けて、セキュリティーを重要課題としているようだ。

IoTを襲うサイバー攻撃は年4.5倍のペースで増えている

 ARMは2月に入り、MistbaseとNextG-Comの買収を発表、NB-IoTチップの強化を目的としたもので、セキュリティーでは「TrustZone」という技術を持つ。「mBED Cloud」機能を利用して安全にクラウドに接続できるという。「高度なチップだけではなく、すべてのマイクロコントローラチップにセキュリティーを組み込む。あらゆるデバイスが暗号化されて安全に接続されなけばならない」と孫氏は述べ、会場に向かって改善を約束した。

TrustZoneを備えるARM v8-Mにより、すべてのIoTデバイスにセキュリティをもたらす

 NB-IoT向けの低消費電力のチップ「Cordio-N」については、今年第3四半期に技術提供を開始し、その後出荷になるという。

ARMのNB-IoTソリューション「Cordio-N」

AIは人類の脅威かもしれないが
それ以外のすべての人類の脅威を解決してくれる

 孫氏はIoTチップの出荷について、今後30年もしないうちに1兆個規模になると見積もった。

 孫氏はまた、2016年末に出資を発表した米OneWebの衛星インターネットサービスについても紹介した。多数の衛星を低軌道に打ち上げ、干渉なく低遅延での通信を実現する。「基地局のように機能する。宇宙から地球にファイバーがおりてくるようなもの」と形容した。最大速度は下りが200Mbps、上りは50Mbps。衛星は今後数年で約800基を打ち上げ、最終的には2000基を目指す。

 「ユビキタスに世界中のあらゆるものをコネクトする。過疎地など電波が通じなくなるようなことがなくなる」と孫氏は衛星インターネットのメリットを強調した。

 このように、IoT時代に向けたチップと通信の取り組みを説明した後、孫氏はシンギュラリティーの重要な問題を提起した。「我々人間の仕事はどうなる? 生活はどうなる? 哲学的な問いに答えなければならない」と孫氏。そして、オックスフォード大学が発表した人類滅亡の12のシナリオに触れた。気候変動、世界規模の流行病、火山噴火、巨大隕石の衝突などの中に、AIも含まれている。だが孫氏は、「AIはリスクだが、残り11のリスクの解決策になりうる」と楽観する。

 「スーパーインテリジェンスは人間のパートナーになると信じている。使い方を間違えるとリスクになるが、善意で使えばパートナーになる。将来を予測でき、健康を改善できる」と語る。

 そして、会場に向かって、「一社ではできないし時間はない。一緒に良い変化を起こすことができるパートナーを探している」と呼びかけた。

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