2016年07月31日16時29分

フルデジタルで平面駆動、新機軸が詰まったクラリオンのヘッドフォン

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ポタ研 クラリオン

スマホのUSB端子に直結して使う、ヘッドフォン

 クラリオンは7月30日、東京・中野サンプラザで開催された“ポタ研2016夏”の会場で、世界初をうたうフルデジタル/フローティング・フラットドライバー搭載ヘッドフォン「ZH700FF」を展示、その開発の背景や技術的な取り組みを解説する説明会も実施した。

 ZH700Fは2年ほど前から、試作機が繰り返し、展示会などで出展されてきた製品。7月25日に正式発表されており、10月の発売に向けて最終調整が加えられている。オープンプライスで、店頭での販売価格は14万円程度になる見込みだ。

ポタ研 クラリオン
図にiPhoneが載っていないが、非公式ながらカメラコネクションキット経由で利用できるそうだ。

 パソコンやスマホのUSB端子や、AV機器の光デジタル出力端子に直結して使用する。デジタルソースをヘッドフォンやスピーカーで再生する際、通常は一度DACを通して、アナログ信号に変換するが、本機ではそうせず、デジタル信号のまま、直接“ボイスサーキット”という振動板を駆動するための回路に流す。

ポタ研 クラリオン
Dnoteを利用したフルデジタルのシステムとなる

 Trigence Semiconductorが開発した“Dnote”技術を用い、入力したPCM信号を変換し、4つあるボイスサーキットそれぞれに向けて分配。約0.02μ秒(24MHz)の間隔で、+1/0/-1のうちいずれかの信号を送る。具体的には、電圧が+3.3V、0、-3.3Vのパルス信号。この組み合わせによって振動板がどちらの方向にどのぐらい動くが決まるわけだ。

ポタ研 クラリオン
4つのボイスサーキットにマイナスの電圧を送れば-4、プラスの電圧を送れば+4。何も送らないを含めると、9段階の表現が可能になる
ポタ研 クラリオン
0.02μ秒という非常に短い間隔で振動を転送。正確な波形を再現する

 複数のボイスサーキットを利用する理由は、振動板を短い時間で大きく動かせるため過渡特性に優れる(音の立ち上がり、立ち下がりを速くできる)こと。もうひとつは振動板を大きく動かす必要がない場合には使用するボイスサーキットの数を減らし、電力消費を低く抑えられるからだ。

 ちなみにクラリオンが車載機器用に提供しているシステムでは6つのボイスサーキットを用いているが、信号を振り分けるLSIの性能や大きさなどのバランスによって最適な数は変わってくるという。

ポタ研 クラリオン
4つボイスサーキットを利用するのは、反応の高速化と低電力化のため
ポタ研 クラリオン
大きな振幅が必要ない場合は、使用するボイスサーキットの数を減らせる

浮かせた平面振動板で、よりひずみのないサウンドを

 もうひとつの特徴は、平面駆動型のドライバーを採用している点だ。さらに、振動板の端を固定するのではなく浮かせる(フローティング構造にする)ことで、振動板が歪まず、平らな状態を守ったまま、面全体が動くようにしている。クラリオンはこれを“フローティング・フラット・ドライバー”と呼んでいる、

ポタ研 クラリオン
ポタ研 クラリオン
フローティング構造の平面振動板を使用している。ダイナミック型のように変形せず、一般的な平面振動板の機種と比べてもフローティングすることで振動板の変形が少ない。

 ドライバーユニットのサイズは60×54mmあり、振動板は穴の開いたネオジウム磁石のプレート2枚に挟まれている。振動板の上には電極のパターンが張り巡らせてあり、電圧をかけるとこの磁石と反発したり、ひきつけあったりして振動板が動く仕組みだ。振幅の大きさは1mm強あるとのこと。上で書いたボイスサーキットは、この振動板上に形成された電極のこと。4本の線が並走するパターンを形成し、それぞれのボイスサーキットに等価な役割を持たせている。

最も難しかったのは使いやすいヘッドフォンの形に落とし込むこと

 密閉型で重量は約510g。入力する信号は、最大192kHz/24bitのPCM。再生周波数帯域は10Hz~48kHz。パソコンとのUSB接続のほか、OTG対応のAndroidスマホとの接続も可能だ。非公式だがiPhoneと接続する際にはカメラコネクションキット経由で、USB接続できるそうだ。さらに直径3.5mmの端子はアナログ入力に加えて、光デジタル入力にも対応している。CDプレーヤーやBDドライバー、光出力できるハイレゾプレーヤーなどと接続できる。

 なお、フルデジタル駆動のため、アナログ入力時は一度AD変換して後段はデジタル信号として処理するとのこと。付属のUSBケーブルは輻射対策などを考慮した専用設計品。充電はMicro-USB端子経由で、5V/0.5Aでフル充電まで約4時間。バッテリー駆動時間は、USB入力時で最大約6時間。光入力時に最大約12時間となる。

ポタ研 クラリオン
インジケーターでバッテリー充電の状況が分かる
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片側だけに付けたアームが先進的
ポタ研 クラリオン
音量調節用ボタンやUSB端子などを装備。3.5㎜の端子はデジタル/アナログ共用

 ハウジングの側面に緑(満充電)、青(50%以下)、赤(30%以下)に光るLEDを備えており、充電時の容量が把握できるようになっている。

 製品の開発には、長い期間を要したとのことだが、その理由のひとつは、装着感をはじめとした物理的な構造の部分。クラリオンでは車載オーディオをはじめとして、音響機器の分野では非常に長い経験を持つが、ヘッドフォンは初めてであり、サプライヤーを含めて多くの検討と試行錯誤があったそうだ。

ポタ研 クラリオン

 イヤーパッドは肉厚で斜めにすこし傾いてフィットするタイプで背後にも音漏れが少ない。アームにアルミダイキャスト、アーム軸にヘアライン仕上げのアルミを使用。ハウジングは樹脂だが、アルマイト仕上げでダイヤカット仕上げのアルミカバーを組み合わせている。片持ちのアームバンドは先進的な印象であると同時に、なかなかごついつくりでもあるが、これは左右のユニットで情報をやり取りするための信号線が多いことも関係しているという。

ポタ研 クラリオン
ポタ研 クラリオン
ポタ研 クラリオン
大きさや装着感のイメージ
ポタ研 クラリオン

 内部のパーツに関してもHi-Fi機器に要求される高品位なものを厳選。低位相雑音の水晶発振器や、メイン、マイコン、クロック、USB、光/AD変換、FDSドライバーの各回路に対して独立した専用設計の電源を使用している。コンデンサー類についても、SILMICアルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、PMLCAPフィルムコンデンサなどを使用している。

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Hi-Fi機器でも用いられている高品位部品を使用

 説明会ではDSD対応の可能性を聴く質問があったが、現状ではネイティブ再生には対応していない(DSDをPCMに変換した上での再生となる)。仕組みとしては、1bit信号をやりとりするDSDに近く相性はいいが、「このためにLSI開発をやるか次第」とのこと。

 また平面駆動型ヘッドフォンは開放型が多いなか、密閉型を選択している理由としては屋外を含め、持ち出しての利用が想定されるため、回路部分の露出をできるだけ避けたかったのが理由であるとした。

ポタ研 クラリオン
製品の説明をしたマーケティング部の井上陽介氏。
ポタ研 クラリオン
クラリオンは1940年代に創業し、1948年には日本初のカーラジオ、1968年には同じく日本初のカセット搭載カーラジオを発売している。1981年のシティコネクションを経てナビに注力してきたが、マッキントッシュのカーオーディオなどを手掛け、1996年にはDRX9255を投入している。
ポタ研 クラリオン
フルデジタルサウンドについてもデジタルスピーカーを皮切りに2012年から継続して取り組んできている。

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