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伊藤園が茶ッカソンで伝えた日本古来の心

2016年07月25日 06時30分更新

大手企業によるスタートアップ企業への支援が加速している。直接的な投資や協業だけでなく、ピッチイベントの開催、イベントへの協賛、インキュベーションプログラム、アクセラレータープログラムの実施など。大手企業は何を狙い、スタートアップ企業へと近づくのか。

伊藤園 最終回(全4回)

 シリコンバレーのエンジニア達のニーズを開拓し、緑茶ブームを巻き起こした伊藤園広告宣伝部の角野賢一氏。同氏はなぜベンチャー支援の取り組み“茶ッカソン”を立ち上げるに至ったのか、これまでに引き続き話を訊いた。

伊藤園の第1回目から読む

アメリカと日本の茶ッカソンの違い

 アメリカでの“茶ッカソン”の盛況は、伊藤園の本社にもしっかり伝わっていた。そのため角野氏が帰国して間もない2014年10月5日、日本で最初の茶ッカソンを都内で開催することができた。その後、横浜や鎌倉など開催場所を広げながら、これまで国内で6回の茶ッカソンを実施している。

 アメリカと日本の茶ッカソンの違いについて、角野氏は次のように語る。「日本の茶ッカソンのほうがより文化寄りなイメージになってきていますね。アメリカですと畳や大量の茶器を手に入れることが難しいし、伊藤園の“ティーテイスター”も少ないので、どうしても“お茶文化”のリソースが限られてしまいますから」

 ティーテイスターというのは伊藤園の社内資格で、筆記テスト、論文、検茶、面接などをすべてパスした、お茶に関する高度な知識を有する社員に与えられる。ランクも1級、準1級、2級、3級とあり、グループ全体で約2000人がティーテイスターの資格を保有している。このうち1級はたったの15名と極めて狭き門で、その保有者は、お茶のスペシャリストが集う同社の中でもリスペクトされる存在だ。

 畳が敷かれた会場で行なわれるのも茶ッカソンの特徴だが、この畳には北一商店の“さらり畳”が使われている。茶殻のリサイクルを目指して伊藤園が開発を依頼した畳で、一畳当たりに『お~いお茶』600本分の茶殻が配合されている。

「伊藤園が目指しているイノベーション、ベンチャー支援は場をつくることです。畳の上でお茶を飲みつつ、みんながより自由にコミュニケーションできる空間をつくってきたいのです。おもしろいことに、座る場所が椅子から畳の上に変わるだけでも、コミュニケーションのかたちが変わってくるんですね。理想の空間づくりのために、毎回少しずつ工夫を加えています」(角野氏)

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