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関西大手メーカーに学ぶオープンイノベーションの思いや悩み

2016年06月28日 06時30分更新

大手企業によるスタートアップ企業への支援が加速している。直接的な投資や協業だけでなく、ピッチイベントの開催、イベントへの協賛、インキュベーションプログラム、アクセラレータープログラムの実施など。大手企業は何を狙い、スタートアップ企業へと近づくのか。

 関西圏の大手メーカー企業のオープンイノベーション、新規事業担当者が集まり、会社としてだけではなく、個人としても思いや悩みを話し合う。オープンイノベーションを促進させようというイベント“オープンイノベーションカンファレンス”が2016年6月3日に大阪のコーワキングスペース“TheDECK”で開催された。

 集まったのはパナソニックや村田製作所、ヤンマーホールディングス、ダイキン、NTT西日本などのモノづくりメーカーの担当者で、まとめ役は大阪市の職員からオープンイノベーション促進のため、自ら起業し、全国で企業と企業を結ぶファシリテーターのような役割を担っているフィラメントの角勝代表だ。

380億円の巨大施設にオープンイノベーションセンター

 オープンイノベーションと言えば、企業と企業、またはヒト、技術などを組み合わせて、新しいモノ、サービスを共創して生み出す取り組みのことだ。ベンチャー、スタートアップの新しい技術とスピード感を大手企業が経験や資金などで支援して、お互いの良いところを組み合わせて伸ばすことなどがよく言われている。もちろん大手企業どうし、また個人が参加するケースもある。

 ただ自然発生的に生まれてくるものではない。必要な要素のひとつに“共創の場”というものがある。企業内に誰もが自由には入れる場所をつくり、イベントを開催したり、社内と社外が触れ合う空間をつくる。多くの人が集まる場をつくることで、仕組み的に、自然発生的に共創を生み出そうというものだ。企業のワンフロアーやコワーキングスペースを利用するケースはよくあるが、桁が違うハコをつくったのが、空調機器メーカーのダイキンだ。

 ダイキンは2015年11月、大阪の淀川製作所内に総工費380億円をかけて、5万平米の“テクノロジー・イノベーションセンター”を建設した。建物には実験エリア、商談エリア、事務所エリア、大学の先生用の部屋が用意されている。本来的にはダイキンの研究者600名を集めた一大実験施設でもあるが、さまざまな人が集い共創が生まれるように、安全管理に厳しいエリアの外側にセキュリティーカードなしで入れるイノベーションセンターを設置した。まずは大きなハコをつくった段階で、これから魂を入れていくというが、開設から半年で1万人以上が見学に訪れ、ほぼ毎日ツアーが組まれているということで注目度は非常に高い。

 またパナソニックも2016年4月、大阪府門真市に“Wonder LAB Osaka(ワンダーラボ大阪)”を開設。約2640平米のコミュニケーションスペースを有しており、社外の人もフリーで入れる。施設ではパナソニックの技術メンバーが実証実験なども行なっている。組織を超えて、交流、実験、発進のできる場としてつくられた。セミナールームなどのほか、セルフキッチンやカフェ、ショップなども併設されている。

 そのほか村田製作所も招待した人を迎え入れる場として、滋賀県の野洲事務所内にオープンイノベーションセンターを2015年5月に開設。共創の場を提供している目的はまず自社を知ってもらうこと。そして社内の開発メンバーに対しても、外と触れ合ることで新しいアイデアが生まれ、新しいモノづくりにつながればいいという考えがある。

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