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ゲームの祭典「E3 2016」現地レポート!

「サマーレッスン」や初音ミクのライブから見える、日本におけるPlayStation VRの強み

2016年06月19日 10時00分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

「カプコンもコロプラもスクエニもセガもバンナムも! こんなに嬉しいことはない。E3取材に来てよかった」と大興奮のVRおじさんが、現地で体感したPlayStation VRについて紹介します

どもども! VRおじさんことPANORAの広田です。今週は、もう何と言っても米国ロサンゼルスで開催されたゲームの祭典「E3 2016」関連のニュースで埋め尽くされています。ざっとハードメーカーを主軸に見るだけでも(リンク先はPANORAの記事)、

PlayStaion VR(PS VR)の発売日が10月13日に決定
Oculus Touch向けの対応コンテンツが30超に
Xboxが来年末に発売予定の次世代機「Project Scorpio」にてVR対応予定
・RazarがオープンソースのVRヘッドマウントディスプレー「OSVR」の第2世代開発キット「HDK2」を公開

……といった感じでモリモリです。ここにソフトメーカーの発表を加えるとさらに膨れ上がります。E3という場は、どちらかといえば新技術のお披露目ではなく、新作ソフトを体験してもらうことがメインなので、ここに合わせて大作が投入されるわけです。ちょうどホリデーシーズンの半年前で、「こういうのが出るから買ってネ」とアピールするのにピッタリな時期ですね。

ということで今回は、この週末に日本でも予約が始まって、一部店頭では行列オンラインでは争奪戦になっていたPlayStation VRについて、国内向けコンテンツを語っていきます。

日本らしいコンテンツをローンチに盛り込んできた

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のPS VRは、ゲーム機の「PlayStation 4」に接続して利用するVRシステムです。ライバルとみなされているのは、米Oculus VRの「Oculus Rift」、台湾HTCと米Valveが共同開発した「HTC Vive」で、どちらもPCにつないで使います。そうしたライバルと比較すると、国内におけるPS VRの強みは以下になるでしょう。

  • 本体も含めて10万円前後で買える(RiftやViveは10万円台以上のPCが別途必要)
  • 流通面が整っている(RiftやViveは国内で店頭販売していない)
  • OSの操作やドライバーのインストールがないので設定がより手軽

 逆に弱みは、家庭用ゲーム機なのでハードを頻繁にアップデートできない(=表示品質や位置トラッキングなどの体験で劣る可能性がある)ことや、審査があるので個人開発者がサクっとつくったコンテンツを体験させることができない点などでしょうか。




 話を戻すと、今回のE3でさらに強みとして、日本向けにコンテンツも用意してきたという点が加わりました。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントのプレスカンファレンスでは、PS VRは年末までに50タイトルを開発中と発表していましたが、日本向けのプレスリリースには「40本を超えるPS VR専用または対応タイトルを開発」としており、微妙な差が見えてきます。SIE ワールドワイドスタジオプレジデントの吉田修平氏にインタビューしましたが、この数の差はインディーコンテンツにあるとのこと。

 しかもラインアップされているタイトルも同じではありません。日本市場向けに開発が明らかになっている25本の中身を見ると、今のところプレスカンファレンスで全面に押し出されていたFPSの「Farpoint」や、シューティングの「Star WarsTM BattlefrontTM: X-Wing VR Mission」は含まれていません。一方で、「サマーレッスン(仮)」や「初音ミク VRフューチャーライブ」などの過去のPS VRのデモで好評だったタイトルが製品として昇格。さらに、ディースリー・パブリッシャーが手がける恋愛アドベンチャー「しあわせ荘の管理人さん。」などの名前が挙がっています。




 サマーレッスンは、VRファンにとって非常に知名度が高いタイトルです。2014年の東京ゲームショウで初お披露目するつもりが、新聞などにも取り上げられてあまりに話題になりすぎて展示を中止するという伝説を残しています。女子高生と同じ部屋に入り、勉強を教えるというシチュエーションが、VRと本当に相性がいい。3Dモデルの造形や動き、背景がデモの段階においてVR向きに細かく作り込まれていることもあって、本当に目の前にバーチャルキャラクターがいるような錯覚を覚えてしまいます。

 初音ミクのVRライブも、目の前でバーチャルキャラクターが歌って踊ってくれるのがポイントで、バーチャル空間でケミカルライトと化している両手のモーションコントローラーを振って応援してしまいます。「しあわせ荘の管理人さん。」は情報がまだありませんが、ディースリー・パブリッシャーといえば、恋愛シミュレーションの「ドリームクラブ」や乙女ゲームを手がけている企業なので、きっとキャラクターと何がしかのやり取りがあるでしょう。

 これらのキャラに近づけるというのは、平面のディスプレーでは絶対に得られないVRヘッドマウントディスプレーならではの大きな利点になります。文字どおり二次元から三次元の「次元の壁を超えられる」装置としてVRが貢献しているわけです。



 E3におけるXboxやSIEのプレスカンファレンスにでて改めて実感したのは、ウケるコンテンツの違いです。発表会ではFPSやアクションが中心に取り上げられており、PVにて武器でカッコよくゾンビやモンスターを倒すと、会場から大歓声があがっていました。かなり筆者の偏見が入りますが、主人公の外観デザインをとってみても、海外発はマッチョなヒゲメン、日本発はヤサ男のイケメンとコントラストが感じられます。多分、北米向けにアイドル育成ゲームをつくったら、最終的にキャラに銃を持たせてゾンビを撃ちまくるのが目的になるんだろうなぁ……。

 もちろん日本でもFPSやアクション好きな方も多いですが、より多くのニーズを取り込むために、国や地域ごとにウケるようにコンテンツをローカライズするのは重要ですよね。VRは北米が中心に盛り上がっている現状ですが、それでも日本向けのコンテンツをローンチに盛り込んできたのが素晴らしいと思います。


キャラでも盛り上がってきた日本のVR

 振り返ってみれば、ここ数年、日本でVRヘッドマウントディスプレーが盛り上がってきた背景に、キャラクターものは欠かせないジャンルでした。初期からVRコミュニティーで有名なGOROman氏が開発した、初音ミクと握手できる「Miku Miku Akushu」は多くの人に衝撃をもたらしました(関連記事)。




 日本ではキャラクター愛が高まりすぎて「なければ俺がつくる」と二次創作を始める人も多く、そうしたキャラに会うためにユーザーベースでVRヘッドマウントディスプレーを活用する例も見られます。PC向けのアダルトゲームですが、「カスタムメイド3D」もOculus RiftとHTC Viveに対応しており、自分でカスタマイズした「嫁」を目の前にできるツールも発売されております(PANORAの記事)。

 Oculus VRの共同創業者であるパルマー・ラッキー氏は、かつて日本の開発者についてユニークなコンテンツをつくっていると高く評価していました。そうした背景もあって、2014年に発売した第二世代の開発キット「Oculus Rift DK2」は、日本に優先出荷されました。

 先のGOROman氏は、筆者が週刊アスキーに寄稿した記事

「アトム(原子)からビット(電子)へのコンバート社会の到来。しかも日本は土地が狭いので、物質的なもののビット化は加速するはず。今もソーシャルゲームで、JPEG画像のために100万単位でお金を投じる人もいますし、その傾向がさらに進むと思います」

と語ってくれました。

 何も美少女キャラクターに限らず、今後はゆるキャラやペットでも近さを感じられるVRコンテンツがどんどん出てくるでしょう。美少女キャラクターに「あれ買って」とねだられてしまい、思わず課金してしまう未来も意外と近いのかもしれませんね。

 そして今回のE3のことをアツく語る「Tokyo VR Meetup #06 E3報告会 & ここがスゴいよHoloLens」というイベントを金曜日の6月24日に実施しますので、ぜひご参加ください(アツい宣伝)。


著者近影。ソニーインタラクティブエンタテインメントのプレスカンファレンスでは最前列を確保したVRおじさん。なんとキラキラした瞳で小島監督を見つめる様子が、ライブ中継で全世界に配信されていました! 「鳥肌立ちっぱなしだった!!! 小島監督が持っていった感はすごいw」と感動してました!

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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