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るろ剣プロデューサー語る 「日本で映画監督になる正攻法はない」

2016年06月02日 21時49分更新

 「こうすれば監督になれる」という正攻法がないそうだ。

 いま日本で映画監督を目指そうとすると、ぴあフィルムフェスティバルのコンペに出す、自主制作を作り続ける、フリーランスの演出家になる、映画とは少し離れるが、テレビ制作会社に入って演出家を目指すなどがある、とプロデューサーの久保田 修さんは話す。

 多様な道筋があるように見えるが、どれも監督になれると保証されたものではない。それどころか映画監督になる難しさは1970年代から続いているという。

 「映画会社が映画を作らなくなり、撮影所のシステムが崩壊してから『こういう風にやれば監督になれるというセオリーがなくなった』」

 そんな時代において、映画監督になるひとつの方法が「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」になると言う。

映画プロデューサーの久保田 修さん。代表作品に「ジョゼと虎と魚たち」、「NANA」、「イキガミ」、「のぼうの城」、「るろうに剣心」などが挙がる

 TSUTAYA CREATORS' PROGRAM(TCP)は簡単に言ってしまうと、名作映画になりそうな企画を募集するTSUTAYA主導のコンペ。応募はだれでもでき、個人・チームの応募も自由だ。募集内容も映像化可能な企画書を送るだけ。

 ぴあフィルムフェスティバルとの違いは、応募時点で作品ができあがっていなくてよいこと、そして、グランプリ1作品と準グランプリ2作品には5000万円以上の製作費と製作体制のバックアップがつくこと。

 つまり、いま予算がなくて撮れないんだけどアイデアはあるという人も応募でき、しかもうまくいけば実製作に入れる可能性がある。

TCPは映画製作者から「作った映画を置いてほしい」「どうしたら映画を上映できるだろうか」という意見から、熱意があるならTSUTAYAとしてやれることを、ということでスタートしたという

 2015年からスタートし、第1回目の応募作品は474あった。準グランプリを勝ち取った加藤 卓哉さんは長年助監督をやっており、「日本でずっと助監督をやりたい人はいないと思う。自分もいつか監督になりたかった。いろいろな方法で監督になれると思うが、5000万円の支援はなかなかないと思って応募した」と話す。

 同じく準グランプリの片桐 健滋さんも10年以上助監督をやっていて「町場の助監督が監督をやれることはない」と話す。

「裏アカ(仮)で準グランプリを受賞した加藤さん」

片桐さんは「ルームロンダリング(仮)」で準グランプリに

 デジタルガジェットやインターネットをはじめとする技術が発達して以降、音楽や写真、文章などは誰もが低予算で作りやすく、発表も手軽になった。映像もフィルムに比べたらだいぶお金がかからなくなった、という話を聞くが、それでも予算の規模が違う。

 最終審査で加藤さんは5分間の映像を提出したそうだが、スタッフ(俳優も含む)にはノーギャラで説得、それでも製作費に20万かかったという。「正直、(審査のための映像で)自費ってどないやねんと思った」と話していたが、ここまできたのだからと映像制作に踏み切ったそうだ。

 こういったエピソードを拾うだけでも、助監督といえども監督になってひとつの作品を作るのが予算的にも難しいことがわかる。また、仮に自主制作映画を作れたとしても、撮って終わりが多いと久保田さんは話す。ありがちなのは学園祭で流して終わり、だそうだ。

 その中でTCPはグランプリ、準グランプリになり、作品が完成したら全国のTSUTAYAでのレンタル、TSUTAYA TVでの配信も予定されている。撮った作品がしっかり世に出るようになっている。

 ユーザーにとっても、才能ある監督の作品に出会うチャンスだからうれしいシステムだ。

 今年の応募期間は6月13日の月曜日まで。

 第1回のグランプリ受賞者たちの作品は現在製作中だそうだ。劇場公開されるのを楽しみに待ちたい。

 それと、TSUTAYAさんにはぜひ途中で挫折せずに長く続けていただきたい。

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