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「友達の猫を探しに」盲目の少女の世界を表現した異色アドベンチャー『Beyond Eyes』:Steam

2016年05月13日 18時00分更新

 PCゲームのダウンロード販売サイト『Steam』から、面白いゲームを発掘して紹介するレビュー連載。第31回は、目が見えなくなった少女を操作して猫を探すアドベンチャーゲーム『Beyond Eyes』を紹介する。

 目が見えない状態でどうやって少女を操作するのかと疑問に思われるだろうが、プレイ時は少女から半径1メートルくらいの景色が描写されるようになっている。つまり「目が見えない」は「遠くが見えない」状態だと思ってくれていい。

 ただし、それだけだと今度は“暗闇系アドベンチャーゲーム”と同じになってしまうため、このレビューではそのあたりの“描写の違い”も説明していきたい。

 ひとまず、本作では「新たな表現が楽しめる」ことを先にお伝えしておこう。

日本語化MODあり

 Beyond Eyesはあまり文章のないゲームではあるものの、日本語に対応していない。そこでまずは日本語化MODを導入しよう。

 日本語化MODはブログ『月が綺麗ですね』を運営している“そめぃけ”氏が公開しているぞ。

月が綺麗ですね: お年玉(Beyond Eyes)

 筆者もありがたく導入させて貰った。エイゴニガテナンデス。

目が見えなくなった女の子

 プレイヤーが操作をする主人公の女の子の名前はレイ(Rae)。レイは、あるとき花火の事故によって目が見えなくなってしまう。つまり、後天的に目が見えなくなった。

目が見えなくなってしまったレイ

レイのもとに猫のナニがやってきた!

 目が見えなくなってからのレイはひとりぼっち。そんなときに現れたのが猫のナニ(Nani)だ。家の前のベンチに座っているレイのもとをたびたび訪れてくれるナニだったが、冬を境にほとんど来なくなってしまう。

 そして季節は春。会いにきてくれなくなったナニを探しに、レイは外の世界へと足を踏み出すのであった。

庭から外へと出て行くレイ

見えない少女が見る世界

 目が見えないレイだが、その視力は想像力によってサポートされる。目が見えない分、耳が発達しており、音を聴くことでレイは周りに何があるのかを想像する。そして画面にはその想像の世界が映し出されるというわけだ。

レイの想像の世界が描かれる

 一方、音が届かない部分は何も見えない白い世界になっている。これが暗闇だとホラーゲームだっただろうが、白のため「目が見えない」ことについての恐怖感はあまりない。そのため、プレイヤーはレイが思い浮かべた風景を穏やかに楽しめる。

音が聞こえるところだけ世界が見える

 とは言え、今“見えている”世界が正しい姿とは限らない点には注意しなければならない。目が見えないためゆっくりと歩くレイだが、通れると思ってようやくたどり着いた道に突然、壁や柵が出現することがしばしばある。

何もなさそうに見えて……

近づくと柵があったりする

 レイが音で「たぶんこうだろう」と思っていても、近づいてみると実際は違っていたというわけだ。パッと見は通れるように見えても、かなり遠回りしないと目的の場所まで辿りつけないことはざらだ。

 また、音により危険を察知するため、怖い音がしている方向にも近づけない。これはプレイヤーをうまく誘導するための仕掛けなのだが、怖い音が聞こえてきたときの世界の変化にも注目して欲しい。

プレイヤーの行く手を妨害する犬

美しき世界を堪能しよう

 それにしても注目すべきは水彩画のような美しい世界だ。盲目の世界がこういうもの、というわけではなくそう描かれているだけだが、プレイヤーの行動によって変化していく世界は見るべき価値がある。

ナニがいるところを想像するレイ

 この世界は見ている人の感情によって、美しいものにも恐ろしいものにも変化する。本作はそのことを表現したグラフィックを堪能できるゲームなのだ。

目の前に現れた黒い帯。この恐怖の正体とは?

 一方で“ゲーム性”となると評価がしづらい。グラフィックの描写や盲目をテーマにした世界の変化、ストーリーはなるほどと頷けるのだが、「はたしてこれはゲームなのか?」と問われると答えに詰まる。

 主人公が盲目であるがゆえその進行は遅く、これといってつまづくようなポイントもない。つまるところ攻略の要素がなく、ゲームの名を借りた絵本を読んでいるようなものなのだ。

筆者は2時間半ほどでクリアー

 ただ、それを差し引いてもグラフィックの美しさには見るべき価値がある。新しい表現を体験したい、そういうゲーマーにオススメしたい1本だ。

Beyond Eyesの推奨動作環境は?

 最低システム要件は、CPUがCore i5-3570KもしくはFX-6350、GPUがGeForce GTS450もしくはRADEON HD6770以上となっている。最新のCPU内蔵GPUであれば、グラボなしでも動作する負荷といえる。

 Core i7-3770(3.4GHz)、GeForce GTX960を搭載するPCだと、常時フレームレート上限の60fpに張りついた。

『Beyond Eyes』
●Team17 Digital Ltd
●1480円(2015年8月12日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows、Mac
ジャンル アドベンチャー、独立系開発会社
Beyond Eyes developed by Tiger & Squid and Team17 Digital © 2015. Team17 Digital is a registered trademark of Team17 Digital Ltd. All other trademarks, copyrights and logos are property of their respective owners. Published by Team17 Digital Ltd.

■著者:篠原修司
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: KiDD
・Twitter:@digimaga

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