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Japan VR Summitオープニングセッション:

ソニー吉田氏「PlayStation VR、Oculusのおかげで順調」

2016年05月10日 15時01分更新

 健全な競争が健全な業界をつくる。VR業界ではOculusの「Oculus Rift」「Gear VR」、HTCの「HTC Vive」、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR」による競争がはじまろうとしている。

 東京・品川で5月10日、VRカンファレンス「Japan VR Summit」が開催。世界各国のVR関係各社がブースに集まり、VR専門家たちがVR技術やVRビジネスについて講演した。主催はグリー、VRコンソーシアム。

セッションは満員。ブースもぎゅうぎゅうづめだった

 オープニングセッションはOculus、HTC、SIEの大手3社が集まった「VRがもたらす大変革」。SIEワールドワイド・スタジオ吉田修平プレジデントが登壇するとあり、会場はざわざわした熱気にあふれていた。

 モデレーターはハコスコ藤井直敬代表取締役。座談会の相手は、Oculus日本法人の池田輝和氏、HTC Raymond Pao(レイモンド・パオ)氏。セッションで吉田氏はPlayStation VR開発の経緯やOculusに対する考えも明かした。

PlayStation VRは2010年
「草の根」で開発が始まった

(写真左から)ハコスコ藤井直敬代表取締役、Oculus日本法人 池田輝和氏、HTC Raymond Pao(レイモンド・パオ)氏、SIEワールドワイド・スタジオ吉田修平プレジデント

 PlayStation VRはPlayStation 4に接続して使う。4万4980円で2016年10月発売予定だ。開発者がゲームをつくりやすいのも特徴の1つ。PS4を使うことで、スペックにより処理性能が異なるPCとちがい、安定した環境で開発できる。

 吉田氏によれば、PlayStation VR開発が始まったのは2010年。PlayStation 3用コントローラー「PlayStation Move」(PS Move)が始まりだった。

 「『モーションコントローラー』と呼んでいたが、3D空間のポジションと傾きをとれるポジショントラッキングのコントローラーを世に出していた。当時ゲームをつくっていたスタジオが、映画を見るためのHMDにPS Moveをくっつけた『簡易VR』をつくっていた」(SIE吉田氏)

 試しにVR版をつくったのがSCE開発の3Dアクションゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』。主人公クレイトスになったVR体験は「衝撃だった」と吉田氏。

 「自分が筋骨隆々のキャラになっていて、敵が迫ってくるのをチェーンで倒す。スタジオの連中が遊びはじめて、これがPS4の時代になったらすごいものになるんじゃないかと草の根で開発をはじめた」(同)

Oculusが話題にならなければ
順調な行動にはならなかった

Oculus Rift。「出していただけたのがうれしかった」と吉田氏

 ディスカッション中盤、藤井代表が冗談めかして「たがいのいいところを言う」というトークテーマを出す。吉田氏がほめたのはOculusだった。

 「世の中に最初に製品としてKickstarterでDK1を出していただけたのがうれしかった。水面下でPSVR、当時は『Project Morpheus』の開発をしていたが、いろんなデベロッパーがいろんなものをつくりはじめた。(Oculus DK1を)数万人のデベロッパーに提供してもらえたのがうれしかった」(吉田氏)

 Oculusがスタートアップとして市場を拓いたおかげで、巨大なVR開発者コミュニティーが立ちあがった。市場の期待値があらかじめわかったため、ソニーという大企業の中で、新たにVR事業を進める推進力を得られたというわけだ。

 「もし(DK1が)出ていなかったら、もしFacebookがOculusを買収して大きなニュースになっていなかったら、どれだけ社内で推進していくぞという力を持てたか。今のように順調な行動にならなかったと思う」(同)

 吉田氏がふりかえるのは2014年の東京ゲームショウ。PlayStation VR、Oculus、Gear VRが一斉展示されたことで、メディアが「今年のTGSはVR」と報じた。そのとき業界は1社だけでは成り立たないという意識を強くもったそうだ。

Oculus、配送遅延にお詫び
「頼んでいたHTC Viveはもう来た」

HTC Vive。コントローラーを使った「歩きまわれるVR」が売り

 ちなみにOculus池田氏がほめたのはHTC Vive。バーチャル空間に入って動きまわれる「ルームスケールVR」の自由度を称賛するとともに「非常にオーダーから配送までがしっかりやっていらっしゃる」点を激賞し、会場は優しい苦笑モード。

 「この場を借りてお詫びする。(Oculus Riftは)1月からプリオーダーをスタートしているが、なかなか届いていない人がいる。一方、わたしが頼んだViveはもう届いた。Oculusは2012年にできたばかりの企業。ハードをずっと作ってこられた先輩方は当たり前のことを当たり前にできるというのがすばらしい」(池田氏)

 VR産業の歴史はすでに長い。1980年代に産声をあげ、1990年代に商用利用が始まり、Oculusブームで火がついたのが現在だ。まだ市場の可能性は未知数で、Oculusのストア「Oculus Store」で配信されているタイトルも50本程度。

 しかしOculusを買収したFacebookマーク・ザッカーバーグCEOは、Oculusをやがてメガネレベルのサイズにしたいと発表するなど、スマートフォンの次にあたる市場にしっかり投資をしていく算段だ。

 パソコンでマイクロソフト、スマートフォンでアップルとグーグルが市場の覇者となったように、次なるVRの王座をめぐる競争はすでにはじまっている。難しいことを書いてしまったが、わたしはまずPlayStation VRがほしい。




盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中

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