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「お菓子屋さんのスタートアップ」が受け継ぐ老舗洋菓子屋のDNA

爆売れチーズタルトはなぜ美味いのか アップデートし続けるBAKEの秘密

2016年03月18日 07時00分更新

 大ガラスを施したスタイリッシュな外観。アパレルショップかヘアサロンかと通りから中をのぞけば、そこにはきつね色に焼き上がったタルトが整然と並ぶ。株式会社BAKEが手がけるチーズタルト専門店、「BAKE CHEESE TART」だ。

 BAKE(ベイク)は2016年3月現在、「BAKE CHEESE TART」12店舗、クロッカンシュー専門店「CROQUANT CHOU ZAKUZAKU」3店舗、焼きたてカスタードアップルパイ専門店「RINGO」1店舗を国内外に展開している。ビジネスのメインであるこれらのストアブランドに加え、ユーザー自らがケーキやチョコレートをカスタマイズできるECサイトを運営し、「BAKEだからこそできる価値のあるお菓子のブランド」を体現する。

 2013年に設立された同社の売上は、1期目に1億円、2期目には10億円、そしてこの3期目が38億円(見込み)と、爆発的な成長をとげている。この勢いを支えるのは、ひとつひとつの商品の確かな「おいしさ」はもちろんのこと、商品を絞り込むことによる現場オペレーションの効率化と、小規模店舗の大量出店によって得られるスケールメリットが大きい。

 自らを「お菓子屋さんのスタートアップ」と位置づけるCEOの長沼真太郎氏に、BAKEが見据えるビジョンについて話をうかがった。

BAKEの長沼真太郎CEO

「お菓子屋さんのスタートアップ」
驚異の成長を続けるBAKE

 現在のBAKEの事業は、チーズタルト専門店やクロッカンシュー専門店といった国内外の店舗のほか、カスタマイズできる写真ケーキ『PICTCAKE』、同じくカスタイマイズで世界に1つだけのチョコレートバーができる『99chocolate』と2つのECサイトを運営している。

 ビジネス面での成長スピードを支える要因の1つが、シングルプロダクトとシンプルオペレーションによる効率化だ。これは、長沼氏の海外進出失敗という苦い経験に基づいている。

 そもそも長沼氏は、北海道の老舗洋菓子店「きのとや」の創業者を父に持つ。だが父の会社にとどまるわけではなく、自らお菓子に関連した会社を上海で興そうと動いていた。しかし、これはあえなく失敗に終わる。海外進出について声をかけてくれた香港の財閥関係者が、お菓子屋の息子だから当然お菓子が作れると考えていたのだが、実際長沼氏自身はお菓子を作ることができず、そこで経営方針が合わなくなったのが原因だった。

 このとき、「最初はきのとやのようないろいろな種類を取り扱うお菓子屋を海外に展開しようとしていたが、海外でいきなりそういうのは無理だと痛感した」と長沼氏は振り返る。たどり着いたのは、シングルプロダクト・シンプルオペレーションにすることで1つのお菓子に集中し、かつ東京である程度認知度を持ってから海外進出を果たそう、という結論だった。

 これをきっかけに開発したBAKEの業態は、店舗が小規模で出店しやすく、チーズタルトもクロッカンシューもオーブンや冷凍庫など使用する機材がほぼ同じであることから、パッケージとして展開しやすい。このシングルプロダクト・シンプルオペレーションは、店舗の出店スピードにも好影響を及ぼしている。

 もう1つ、BAKEの躍進を語る上で忘れてはならないのは、ITスタートアップを意識したブランディングだ。

 菓子業界では自社サイトの制作やアプリの制作、デザインなどはアウトソースするのが一般的だが、クリエイティブを重視するBAKEでは、すべて内製で実現できる人材を確保している。現在は、エンジニア3名、デザイナー5名を抱えており、それぞれのバックグラウンドは、外資系グラフィックデザイン事務所、アパレル業界、店舗設計……など実に多様。「東京でスタートアップ感を出してブランディングをして、そういう人材が集まっているというのは圧倒的な強み」だと長沼氏は語る。

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