2016年02月12日07時00分

「よくないスタートアップ」が伸びた理由 労務管理で中小・ベンチャー企業を支えるSmartHR

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 労務の手続きをクラウド化するスタートアップが、中小・ベンチャー企業の間で支持を広げている。

 背景には、企業経営での入退社の書類作成や社会保険・雇用保険への加入などさまざまな労務手続きがある。この一連の手続き、実は非常に煩雑で、現場の労務管理責任者に大きな負担を強いている。そのような状況を改善すれば、経営者や人事担当者は本来の業務に専念し、より価値ある仕事を成し遂げられるのではないか。

SmartHR

 この課題に答えるのが、労務管理クラウド『SmartHR』(スマートエイチアール)だ。画面のフォームに従って情報を入力すれば書類が自動作成され、電子申請まで行ってくれるため役所との往復は不要になる。人事データベースとしても使用可能。ありそうでなかったこのクラウドサービスは、2015年11月に一般公開されると瞬く間に契約者数を伸ばし、現在500社以上もの企業で導入されている。

 SmartHRを開発・提供しているのは、東京都港区にあるKUFU(クフ)。「テクノロジーと創意工夫で社会構造を変えていく」というミッションのもと、2013年の設立後は2年ほど受託開発を手がけていたが、1年前、デジタルガレージが主宰するOpen Network Labに参加したことで一変。KUFUの宮田昇始代表取締役は、「サービスのつくり方を仕込まれた」と振り返っており、ユーザーから徹底したヒアリングを行うことで開発に結びつけるという手法を身につけた。

 自身が「よくないスタートアップ」だったと語る期間を経て、どのようにビジネスを羽ばたかせたのか、またその成功のきっかけは何だったのか。宮田代表に話をうかがった。

SmartHR
KUFUの宮田昇始代表取締役

煩雑な労務管理を1クリックで解決するSmartHRとは

 日本には現在、社会保険、雇用保険をはじめとする社会保障制度がある。病気やケガで会社を休んだときは傷病手当金が支給されるし、企業の倒産などで突然職を失うことになっても失業保険が支給されたりと、社会のセーフティーネットとしての機能を果たしている。だが、問題はそれにかかる手続きが非常に煩雑であるという点だ。

 例えば、産休や育休を取得しようとする場合、従業員にとって健康保険協会に提出する書類の作成をするのは相当骨が折れる作業だ。事業所番号、過去何ヶ月分にさかのぼっての給与情報など、企業側に確認が必要な項目も多い。また、管轄である役所に何度も通わなければならない不便さもある。社会保障制度の申請は、本来企業側の業務であるはずだが、従業員数が少ない場合、時間と人員を割けないのも現状だ。

 また、新入社員入社時には必ず加入しなければならない社会保険や雇用保険の申請も、少ない従業員数で現場をまわすスタートアップ企業にとっては頭痛のタネだ。1枚1枚の申請書類は内容が複雑で、初めてそれをする人にとっては専門書が必携となるほど難しい。さらに、社会保険、雇用保険の申請先も年金事務所、ハローワークと2ヶ所を訪れなければならず、窓口で長時間待たされるということを繰り返していると申請だけで半日~1日時間を取られることになる。こうなってしまっては、経営者においては企業の運営、人事担当者については採用等といった企業の根幹となるべき本来の業務がおろそかになりかねない。

 SmartHRは、誰もが避けて通りたくなるこの面倒でアナログな部分の悩みをテクノロジーで解決した。例えば、新入社員を登録する場合。「入社手続き」をクリックし、フォームに従い入社日、氏名、基礎年金番号などを入力すれば、同時に社会保険、雇用保険の適用申請書類ができあがる。しかも、「基礎年金番号はどこを見ればいいんだっけ?」と思ったときには、ヘルプを参照すれば丁寧に図示までされている。画面右側にはToDoリストが表示されるので、順番にこなしていけば初めての人でも戸惑うことなく申請作業を進めることができる。

SmartHR
SmartHR

すでに500社を超える企業がSmartHRを導入

SmartHR

 SmartHRは2015年11月の正式リリース後、2ヶ月間で500社もの企業が導入に至っているというのだから驚きだ。そのうち7~8割はインターネット関係が占めている。当初は10名規模の小さな企業を想定して開発したというが、ふたを開けてみると実際には50~150名規模の中堅ベンチャー、スタートアップが非常に好んで使っているという。

 約400名の従業員を抱える家事代行サービス企業、ベアーズもその1つ。全国に支店を構えるベアーズでは、従業員情報のやり取りをそれまでの紙ベースからSmartHRに転換し、効率化を促した。また、このシステムを高く評価するWantedlyでは、ユーザー企業や人事担当者を集めてSmartHRについてのセミナーを開催したほどだ。

 「2016年3月からは、SmartHRがますます便利になる」と宮田代表は語る。SmartHRで作成した社会保険、雇用保険の書類を申請する際、役所への申請をWebで行えるようになるという。

 総務省が運営する「e-GOV」では、もう何年も前からこのような社会保障制度の電子申請システムが稼働している。しかし、税務や会社登記の分野では5~6割が電子申請に切り替わっているのに対し、労務の分野ではその利用率は5%ほどに留まっている。そこで、総務省では2014年10月、利用率の向上を目指し、外部連携APIの仕様を一般公開した。

 KUFUが労務手続きに目を付けて、事業をピボット(方向転換)したのもちょうどこの時期だ。「API公開はすごく大きかった。強く背中を押してもらえた」と宮田代表。SmartHRはすでに総務省のテストをパスしており、実現されれば、短時間で正確な書類を作成できるばかりでなく、役所に足を運ぶ必要もなくなるだろう。

 このように順調にサービスが受け入れられているKUFUだが、ここにたどり着くまでにはシンプルゆえに難しい課題の模索が必要だった。それはいったいどういうことか。

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