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太陽系外縁部の有機分子の存在とともに地球生命の起源の謎に迫る

ラブジョイ彗星からワインボトル500本分/秒のアルコールを検出

2015年10月26日 18時10分更新

ラブジョイ彗星からワインボトル500本分/秒のアルコールを検出
「彗星ワインの歌」イラストレーションAristide Bruant (1883)  E. Geffroy (Paris) 1896-1897.)

 パリ天文台は10月23日、ラブジョイ彗星が秒あたりワインボトル500本分のアルコールや糖を噴出していたと発表した。

 観測されたラブジョイ彗星は「C/2014 Q2」。発見者が同じであるため混同されやすいが、肉眼でも見ることができたラブジョイ彗星C/2011 W3や、C/2013 R1とは異なる天体。パリ天文台をはじめとした国際研究チームは、電波望遠鏡を用いて2015年1月に観測を行なった。

 ミリ波分光データ解析の結果、彗星から噴出する水に対して0.12%のエチルアルコール、0.02%のグリコールアルデヒドが検出されたという。このほか、エチレングリコールやアセトアルデヒド、ギ酸のような複雑な有機分子も検出されるた。彗星の成分はいくつもの彗星で行われており、既に観測しているヘール・ボップ彗星などと比較すると、含まれる化合物の比率が異なり、形成された時期や太陽接近による枯渇が推測される。

 太陽系外縁の彗星の巣「オールト雲」は、さまざまなガスや小天体が浮遊し、ときおり軌道が乱されて太陽系内側に入ってくる。これらの分子は宇宙空間でゆるやかなに反応して複雑な分子を形成し、有機分子も形作ると考えられている。彗星の素材はオールト雲など太古の太陽系形成期のものがそのまま残っているため、今回の発見は地球で生命出現の元となった有機物とも関わりあるかも知れないとしている。

 噴出量を「ワインボトル500本分」と表現するのもフランス・パリならではの表現だが、パリ天文台の発表ではワイン樽に座った人の絵が掲載されている。これは1811年に接近して空に大きく見えた大彗星(ヘール・ボップ彗星)の翌年がワインの大当たり年だったことから「彗星ワイン」と歌にうたわれたもの。現在でも「彗星のくる年はワインの当たり年」というジンクスがある。

ラブジョイ彗星からワインボトル500本分/秒のアルコールを検出
ラブジョイ彗星C/2014 Q2(Copyright Fabrice Noel)とスペイン・グラナダにある30mIRAM電波電問題(Copyright N. Biver / Observatoire de Paris / LESIA)
ラブジョイ彗星からワインボトル500本分/秒のアルコールを検出
噴出された有機分子の分布、ヘールボップ彗星と比べるとアルコール分は多めなど、異なる組成となっている

■関連リンク
ニュースリリース(パリ天文台)

ニュースリリース(NASA)

パリ天文台
 

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