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Apple Payより少し緩い? Googleの非接触決済“Android Pay”を導入してみた

2015年09月25日 14時00分更新

 GoogleのMVNOサービスである『Project Fi』。それなりに苦労をして申し込みをして、無事にSIMも届いたのだが、アクティベーションができないままストップしている。どうやら米国の携帯の電波が届くエリアでないとアクティベーションできないようで、Project Fiのチャットサポートに問い合わせたところ、「当局の規制のため」という理由だという。

 しばらく米国に行く予定がないため、Project Fiのアクティベートが宙に浮いてしまっている。アクティベートしなければ料金は発生せず、特にアクティベート期限の情報がないので、ひとまず放置状態なのだが、このProject Fiの申し込みで思わぬ副産物があった。

 それが『Andorid Pay』だ。そこで今回、Android Payを実際に試してみた。

Android Pay
↑いよいよスタートしたGoogleのモバイル決済『Android Pay』。

 Android Payは、Googleのモバイル決済サービス。NFCを使っており、日本のおサイフケータイと同様に、レジの端末にスマホをタッチするだけで支払いができる。こうした決済方法は、海外では“コンタクトレス”とも言われ、Appleの『Apple Pay』が米国で先行して開始している。

Android Pay
↑海外のPOSレジ。これはスペイン・バルセロナのカルフールのセルフレジ。中央にある電波のマークがコンタクトレスが使えるというマーク。
Android Pay
↑このように画面にタッチすれば、それで支払いができる。ドコモのiDが設定されている日本のスマホでもPayPassとして支払いができる。
Android Pay
↑ドイツのデパートGALERIAに掲示されていたコンタクトレス対応のシール(一番下)。デパートなどでは、これが掲示されていれば中の店舗ではだいたいコンタクトレスが使える。

 ビジネスモデルはともかく、技術的な仕組みとしては、VisaやMasterCard、American Expressが提供しており、クレジットカード情報をスマホに格納して、より安全に取引を行なうためのもの。基本的にApple PayやAndroid Pay、Samsung Payで大きな違いはない。Samsung Payのみ、通常の磁気ストライプ型のクレジットカード読み取り機で利用できる技術があるが、NFCを使ったモバイル決済としての違いはない。

Android Pay
↑Apple Payでの支払いをしているところ。欧州ではこうしたハンディの読み取り機でも対応している店が結構ある。

 そのため、コンタクトレスに対応したカード読み取り機さえあれば、Apple PayもAndroid Payも同様に支払いができる。ドコモのクレジットサービス『iD』は、MasterCardの『MasterCardコンタクトレス(PayPass)』にも対応しており、海外ではPayPassでのコンタクトレスが可能。PayPassが使えるところでは、ほとんどの場合Apple Payも利用でき、同様にAndroid Payも使えるはずだ。

 とはいえ、現在Android Payの提供は米国ユーザーに対してのみ。正確に言えば、米国発行のクレジットカード/デビットカードを持つ米国を拠点としたユーザーだけがAndroid Payの利用登録ができる。これはあくまで利用登録の制限だけなので、世界中でAndroid Payを使った支払いは可能だ。

 そしてAndroid Payは、この“米国拠点”と“米国発行のクレジットカード/デビットカード”の基準が、Apple Payよりもゆるいようなのだ。

 米国拠点かどうかは、Googleアカウントの拠点で判断されるが、Project Fiの申し込み時点で自分のアカウントは米国拠点に変更されている。そしてProject Fiの支払いのために米国で購入してきてもらったVisaのギフトカードがある。Apple Payの場合、基本的に銀行口座が必要なようだが、Android Payだと、通常のスーパーなどで売っているギフトカードが登録ができてしまった。

 つまり、Project Fiの申し込みのための行動が、すべてそのままAndroid Payに適用できてしまったのだ。

 そして、Project Fiとは異なり、新たな端末も、米国のネットワークも不要。どうやらAndroid 4.4(KitKat)以上を搭載し、タップ&ペイ機能に対応したスマホであれば問題ないらしい。筆者の手元では、とりあえずau版の『Xperia Z4 SOV31』がこれに該当した。

 利用するには、米国拠点のGoogleアカウントを使ってGoogle Playからアプリをダウンロードする。“Android Pay”で検索すると『Google Wallet』と『Google Wallet(New)』という2つのアプリが検索されるが、この(New)というのが従来のGoogle Walletアプリの新版で、『Google Wallet』の方が『Android Pay』アプリに切り替わる。

Android Pay
↑対応するスマホだと、Walletアプリの一方がAndorid Payアプリに変化する。
Android Pay
↑非対応だと2つのアプリが並ぶだけ。どちらがどちらかよくわからない。

 Xperia Z4で『Google Wallet』アプリをダウンロードして起動しようとすると、いきなり『Android Pay』アプリに変化しており、それで利用できることがわかったのだが、タップ&ペイのない端末では、『Google Wallet』と『Google Wallet(New)』が並ぶだけで、Android Payに切り替わらない。Nexus 7(2013)では、最初は2つのアプリが並んでいたが、その後Google Walletにアップデートが入り、更新をかけてみたところ、無事にAndroid Payアプリに変化した。順次切り替わっている途中ということだろう。

Android Pay
↑しばらく待ってみると、Google PlayもAndorid Payに切り替わっていた。

 とりあえずXperia Z4とNexus 7でAndroid Payアプリが使えるようになったので、これで設定をはじめてみる。

 起動すると、まずはクレジットカードの登録を行なう。ここで日本のクレジットカードをいくつか試してみたが、すべてエラーが出て登録できない。これは予想通りなので、購入してあった米国発行のギフトカードを登録してみる。Project Fiの申し込み時点で支払い方法として登録してあって、Google Walletサービスからデータが読み込まれるので、登録自体は簡単。実際は電話番号を日本の番号にしていたために弾かれたが、以前米国訪問時に登録したGoogle Voiceの米国番号に変更したところ、無事に登録できた。

Android Pay
↑Android Payの初期画面。まず“+”からクレジットカードの登録を行なう。
Android Pay
↑Googleサービスの有料支払いをしているなら、Google Walletにすでにクレジットカードが登録してある。Project Fiを使うために登録した“Vanilla”のカードを設定する。
Android Pay
↑カード情報を登録する。
Android Pay
↑カードが登録された。さらに米国のスターバックスのギフトカードも登録してみた。
Android Pay
↑登録されたカードの情報。PayPassなどのシステムは、クレジットカード番号を別の番号に変化する“トークナイゼーション(トークン化)”がその特徴。カード番号が変換されるため、実際のカード番号が店舗などには渡らない。
Android Pay
↑ちなみに、スターバックスのギフトカードを登録したところ、国内のスターバックスのそばを通ったときに通知が表示された。

 その結果、Android Payの登録が行われ、無事に使えるようになった……はずである。ただ、現在地は日本。日本ではおサイフケータイは利用できるが、NFCを使ったコンタクトレスはほとんど使える場所がない。

 それでも、いくつかコンタクトレス対応スポットがある。千葉県・幕張のイクスピアリや同船橋のIKEA、神奈川県・みなとみらいのColette・Mareといった場所があげられる。

 今回、IKEA船橋店で実際に試してみた。店頭レジにはNFCを使ったコンタクトレスのロゴが掲示されており、実際に商品をレジに通して、クレジットカード読み取り機にXperia Z4の画面ロックを解除したうえでタッチすると、自動的にAndroid Payアプリが起動し、支払いが行われた……と思いきや、エラーが発生。Android Payアプリ上は完了したが、その後のクレジットカード認証に引っかかったようだ。

Android Pay
↑IKEAのハンディターミナルに、ロックを解除した状態でタッチする。
Android Pay
↑すると、自動的にAndroid Payアプリが立ち上がった。このあと、Android Payマークがチェックマークに変わり、支払いが行われたことが示された。しかし、その後エラーが出てしまった。

 考えてみれば当たり前で、今回のVISAギフトカードは、そもそも米国外では使えない。Android Payアプリが起動し、アプリ上での支払いが完了しているのを見ると、Android Pay自体はきちんと動作し、Visa側の認証で弾かれた、ということだろう。プラスチックカードであるギフトカードそのものを日本で買い物に使ったときも同じ動作になっているはずだ。

 いずれにしても、本来はタッチだけで支払いはできたはずで、米国であればそのまま使えただろう。アプリの動作も、リーダーにタッチするだけで起動して、特別な操作はいらない。画面ロックを解除した状態でないと使えないが、このあたりはApple Payと同じで、Android Payの場合は指紋センサーのないスマートフォンでも使えるため、ロック解除方法はジェスチャーでも構わない。指紋センサーがあればより簡単だろう。

 というわけで、Android Payの支払い自体は失敗したが、登録・利用が可能なことは分かった。とはいえ、現時点で利用場所が「米国限定」という課題は残されたままではある。これもApple Payと同様、米国で口座を開設すれば、グローバルで使えるはず。

 今後、Android Payが日本でサービスを開始するかというと、クレジットカード会社の動き次第で、マスターカードもVISAも、日本でのサービス自体は計画しているようだ。日本ではすでにFeliCaが普及し、iDやQUICPayといったクレジットカード型のモバイル決済も使われているため、利用方法は多くの人が理解しており、海外のようにコンタクトレスで支払いをしようとして店員に「使えるかわからない」などと言われることもないだろう。

 店舗にとっては、わざわざNFC対応POSやクレジットカードリーダーを新たに導入する理由には乏しいが、2020年にはグローバルでコンタクトレス決済がさらに普及していることが考えられ、東京五輪に向けての対応も進みそう。それまでにPOSレジなどの更新があれば、NFC対応POSが導入される可能性も高いだろう。Android PayやApple Payが利用できる環境も、順次整備されていきそうだ。

 ちなみに、海外でAndroid PayやApple Payを使うなら、素直にドコモのiDを使うのが一番簡単。回線契約や指定のクレジットカードが必要だが、日本で使っているiD対応スマホをそのまま使って、海外でコンタクトレスの支払いが行なえる。しかも、現在は利用金額の30%がキャッシュバックされるキャンペーンも行われている(1ヵ月あたりキャッシュバック金額は1万円まで)。海外でAndroid Payを使うぐらいなら、iDで支払った方がキャッシュバックもあってお得。

 現時点でAndroid Payを導入する理由はほとんどないが、スマートフォンを使った新しい決済方法として、海外や日本での動向をチェックしていきたい。

……と、意気揚々と書き上げたその日、Google Play上でAndroid Payアプリが公開され、ダウンロードが可能になった。端末次第だが、日本のGoogleアカウントでもダウンロードできるようで、インストールが可能になったようだ。

 ただ、筆者の環境では日本アカウントだとカード登録で『Google開発者サービス』が強制終了し、登録ができなかった(同じ端末でも米国アカウントからならカード登録できる)。Google Walletとも連携しているはずなので、このあたりの設計がどうなっているのかがよく分からないところ。

 いずれにしても、少なくとも米国発行のクレジットカードやギフトカードが必要な点や、日本で利用できる環境がほとんどないことは変わらない。今後、Googleがどのようにサービスを拡大し、ビジネスとして成立させることができるか、という点が注目だ。

●関連サイト
Android Pay(英文)

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