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ななふぉ出張所

Unpackedに見る、サムスンが高級路線をあきらめない理由

2015年08月18日 07時00分更新

 8月13日、米ニューヨークでサムスンのUnpackedイベントが開催され、既報のとおり『Galaxy Note 5』と『Galaxy S6 edge+』が発表されました。

 筆者もここ数回、Unpackedに連続参加してきたことから、今回も現地取材を敢行することにしました。

サムスンが高級路線をあきらめない理由
8月13日のUnpackedイベント後、ニューヨークのタイムズスクエアには『Galaxy Note5』と『Galaxy S6 edge+』の予約開始を知らせる広告が出現。

例年より3週間前倒しでNote最新機種を発表

 これまでサムスンがGalaxy Noteシリーズを発表してきたのは、9月の家電見本市“IFA”のタイミングでした。これは、IFAにおける他の発表に埋もれてしまう恐れはあるものの、IFAに集まった報道陣を呼び込めるというメリットもありました。

 これに対して2015年は、例年より3週間も早い8月13日の開催です。その背景として、毎年恒例の新型iPhoneの存在が指摘されています。サムスンが発表会を行なった1週間後にはアップルが発表会を開催し、世の中はiPhoneの話題で一色になってしまうというパターンが続いてきたからです。

サムスンが高級路線をあきらめない理由
サムスンのGalaxyシリーズの発表ではお馴染みとなったJK Shin氏。『Galaxy Note5』と『Galaxy S6 edge+』を世界に披露した。最後には『Gear S2』のサプライズも。

 今回、サムスンは発表を8月13日に早めるだけでなく、早ければ8月21日から製品を発売することで、iPhoneに対するリードタイムを確保できたといえます。すでに米国では各キャリアが予約受付を開始しており、その他の地域でも続々と登場する予定です。

サムスンが高級路線をあきらめない理由
すでに米国では予約受付が始まっている。米ニューヨークのVerizonの店舗では、Note5とS6 edge+の両方を展示し、8月から始まった新しいポストペイドプランで予約できるようになっていた。

高級・高価格路線を追求するサムスン

 ハイエンドのGalaxyシリーズにおける注目ポイントのひとつが、価格です。3月に発表したGalaxy S6シリーズはかなりの高価格で発売されたものの、その後、世界各地で値下げを余儀なくされたという経緯があるためです。

 Galaxy Note5とGalaxy S6 edge+の価格について、米AT&TではNote5の32GB版が739.99ドル(約9万2100円)、64GB版が839.99ドル(約10万4545円)。S6 edge+の32GB版が814.99ドル(約10万1433円)、64GB版が914.99ドル(約11万3879円)(以上すべて税別)と、いずれもトップクラスの高価格になっています。

サムスンが高級路線をあきらめない理由
Galaxy Note5。ハイエンドスマートフォンとしても決して安い価格ではないものの、S6 edge+より安いことで、ややお買い得に感じるかも。

 特に目立つのは、Galaxy S6 edge+のほうが高いという点です。基本性能がほぼ同じで、Sペンに対応したNote5よりも高く、同容量のiPhone 6 Plusよりも高い(AT&Tの64GB版は849.99ドル)のが特徴です。

 サムスンがハイエンドモデルをなるべく高く売りたい背景として、2015年第2四半期の決算までに、7四半期連続で利益を減らしていることが要因として考えられます。

 そのためにサムスンはGalaxy Note5のデザインをS6シリーズと統一し、ファッション性を前面に出した“Lookbook”にみられるように、高級路線を追求しています。

ただ、そこにライバルとして立ちふさがるのが、スマートフォン市場からの利益をほぼ独り占めしているiPhoneです。iOSを搭載し、独自のポジションを築いているiPhoneに対して、Galaxyは常に他社のAndroidスマホとの価格競争にさらされています。

 最近ではモトローラのMoto X StyleやASUSのZenFone 2など、大画面・高性能なAndroidスマホが、お手頃価格で続々と登場しています。サムスンは世界のスマートフォン市場でトップの座を維持しているとはいえ、他のAndroid端末メーカーと同じ土俵で戦わなければならないという競争環境は、今後も変わりません。

海外市場ではスマホ以外への広がりに期待

 このように、スマホ単体としてのGalaxyを見ていくと、苦しさは否めません。ただ、今後のGalaxyの方向性として、スマホ以外のものと組み合わせていくという戦略は有望です。

 スマートウォッチについて、サムスンにはAndroid Wearベースのスマートウォッチとは別に、TizenをベースにしたGear Sがあります。今回のUnpackedイベントでは、その新機種とみられる『Gear S2』の発表を予告し、サムスン初となる円形ディスプレー搭載スマートウォッチの姿が見えてきました。

サムスンが高級路線をあきらめない理由
次世代スマートウォッチ『Gear S2』をIFAで発表することを予告。ついにサムスンも円形ディスプレーを採用してきた。

 さらにIFAでは、スマート家電やスマートホーム関連の展示において、サムスンは圧倒的な存在感を誇っています。韓国、米国では既存の磁気カードリーダーを利用できる独自のモバイル決済“Samsung Pay”も始まります。

 スマホやタブレットといったガジェットの世界だけでなく、より大きなプラットフォームの中でスマホを活用していくという競争では、他のAndroid端末メーカーはもちろん、アップルにも十分対抗できる力をサムスンは持っています。

 ただ、日本国内においてはこうした海外におけるサムスンの強みが、ほとんど感じられないのが現実です。さらにUnpackedの展示会場では、「Galaxy Note5とGalaxy S6 edge+は日本で発売する予定がないため、物理キーボードの日本語版を開発する予定もない」という、アクセサリー製品担当者のコメントもありました。なお、サムスン電子ジャパンはUnpackedで発表した機種の国内発売について「検討中」としています。

 毎年のように日本で発売されてきたGalaxy Noteシリーズが、果たして今年はどうなるのか。次はキャリアの2015年冬モデルに注目です。

【2015年8月18日11時】画像に1点誤りがありました。お詫びして訂正致します。
【2015年8月18日19時】情報を一部追記致しました。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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