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ソフトバンクグループの第1四半期決算、“主要回線”に注力「キーワードは2.5GHz帯」

2015年08月07日 18時30分更新

 ソフトバンクグループは6日、2015年第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比9.8%増の2兆1390億5800万円、営業利益は同7.6%増の3435億5200万円で増収増益。今回、グループ全体の業績報告では同社のロボット『Pepper』が発表を担当。「新しもの好きのソフトバンクなので、世界初、決算発表をロボットが行なう」と孫正義社長は話し、決算発表のうちの数字の部分をPepperに任せていた。ちなみに、孫社長が決算発表を行わなかったのはこれが“初めて”だという。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループの孫正義社長。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
「3~4日前に思いついた」ということでPepperに決算発表を任せた孫社長。

 そのほかの指標では、EBITDAが同16%増の6590億5600万円、純利益が同175%増の2133億8200万円、設備投資額が同524億95万00円減の2432億4400万円だった。Pepperは「全体的に順調に成長している」とコメントし、好調な業績をアピールした。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
連結業績。

 売上高は国内通信事業での物販売上が増加したこと、米スプリント(Sprint)社の売上が為替の影響で増加したことで成長。EBITDAも同様だが、スプリントは商品原価の改善やサービス費用の削減も奏功した。純利益は投資評価益576億円が大きく寄与したが、それを除いても前年比で2倍程度の成長を果たしている。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
売上高は国内通信事業とスプリント事業が増加。ただし、スプリントは為替差益によるもの。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
EBITDAも同様だが、スプリントは費用削減の効果が出ている。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループ第1四半期決算
営業利益と純利益。

 主力の国内通信事業では、携帯のソフトバンクモバイル、ワイモバイル、固定のソフトバンクBB、ソフトバンクテレコムの4社を合併してソフトバンクとし、成長戦略の強化、経営効率化を推進。成長が鈍化している点、設備投資が一巡した点で、利益確保のフェーズに入っているという認識を持っており、今後はソフトバンクの宮内謙社長に一任し、安定的な収益を確保する。

 また、今回から新たに“主要回線”という指標を設け、スマートフォン、携帯電話、タブレットなどをここに位置づけ、ここに注力する。通信サービスにおける売上の90%以上を占めており、通信モジュールやPHSなどを除く3157万回線を保有している。

 ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は、通信ARPUが同80円減の4140円だが、コンテンツなどのサービスの売上によるサービスARPUが同40円増の520円となり、全体では40円減の4660円となった。このサービスARPUは今後も拡大を目指していく方針で、ヤフーとの連携を強化し、成長領域を開拓することでさらなるARPU拡大を目指す。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
通信サービスの売上。主力の「主要回線」をさらに強化していく。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ARPUは音声とデータの通信ARPUに加え、サービスARPUをさらに拡大する。

 「特に大切なのは解約率」とPepper。前四半期に比べて減少したものの、1.24%と高止まりしており、同期で0.79%だったドコモと比べても大きく差が開いた。「原因を徹底的に分析して、なんとかしてライバルより低くなるように努力していく」(Pepper)考えだ。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
解約率低下に向けた取り組みを実施する。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
国内通信事業の営業利益は順調に拡大しており、さらに収益性を向上させる。

 成長戦略では、モバイル事業ではコスト削減や効率化に加え、スマートフォンユーザーの拡大による収益性の向上を図る。NTT東西の光コラボレーションを利用したSoftBank 光が7月末で54万回線まで拡大。これによって家族内でのモバイル契約者の拡大、解約率の低下が見込まれ、成長のドライバーになっていくことが期待される。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
光回線を使ったSoftBank 光サービスによってモバイルの契約者の拡大、解約率の低下も狙う。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
設備投資は削減し、それに伴ってEBITDAはさらに拡大する見込み。

 ヤフーはモバイル広告が順調で営業利益が拡大。ゲーム事業はスーパーセルとガンホーがアプリ売上ランキングで上位をキープした。また、中国アリババは取扱高が世界最大の小売であるウォルマート(Walmart)に迫る勢いとなっており、今後はEコマース、インドタクシー配車サービスなど、インターネット事業も順調に拡大していくことを宣言。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
ヤフーの営業利益の推移。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
取扱高も拡大している。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ゲームアプリの売り上げランキング。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
アリババの取扱高。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
インドのEコマースであるスナップディール(snapdeal.com)の取扱高も順調に拡大。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
タクシー配車サービスもシェアを拡大した。

 今回、決算発表の一部を担当したPepperは、6月、7月と1000台限定で一般販売しているが、両月とも開始1分で完売。8月は29日に販売する予定だ。

 7月からは、みずほ銀行の店頭にも登場しており、10月からは『Pepper for Biz』として“社会人デビュー”(孫社長)するなど話題に事欠かない。Pepperは月額5万5000円で各企業へと貸し出しも実施しており、それぞれの企業に応じたサービスを提供する。36ヵ月契約で総額198万円となり、満了後、Pepperは返却となる。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
まずはみずほ銀行の店頭に立つPepper。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
10月1日から法人向けにレンタルを開始する。

 今回の決算発表は、数字の部分よりも、スプリント再建に関する孫社長の戦略説明に主眼が置かれていた。孫社長は、スプリント買収にあたって、業界5位のTモバイル(T-Mobile)も買収して合併させることで、米通信業界の第3極とする戦略を描いていたが、米規制当局の承認が下りないと判断。この“根底”の戦略が頓挫してしまい、当時、孫社長は「意気消沈した」そうだ。

 その後、孫社長は新たな戦略を練り直し、日本で培ったビジネスモデルが米国でも通用すると判断。ボーダフォン買収からソフトバンクとして立て直したのと同じ戦略でスプリント再建を図る戦略に移行した。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
ボーダフォン買収以降、ソフトバンクが取り組んできたのは費用の削減と設備投資の効率化。

 まずは営業費用を削減。価格競争などで顧客拡大を図り、3段階目として「ナンバー1のネットワークを作る」という“3段階の改善ステップ”を実施していくという。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクでの取り組みは成功したとする孫社長。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクの成功をスプリントでも実現すると意気込む。
ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループ第1四半期決算
いくつかの指標で「改善の兆しが見えてきた」と孫社長。

 国内では、ドコモ、KDDIに比べても設備投資額は最も少ないが、「最下位から一気に接続率、接続スピードでナンバー1になった」と孫社長は胸を張る。こうして培ってきたノウハウを、スプリントでも展開できると判断した。

 当初、スプリント側のエンジニアが検討したネットワーク改善の提案は高額で完成まで5年程度と時間もかかるものだったという。そこで孫社長が陣頭指揮を執り、自ら「チーフ・ネットワーク・オフィサー」として新たなネットワークの設計を提案。「設備投資額を大幅に減らし、期間を大幅に減らして、それでもなおかつライバル企業を超えるネットワークを作れる設計ができた」と孫社長は自信を見せる。

 このネットワークについて、孫社長は繰り返し「次世代ネットワーク」と表現しており、「キーワードは2.5GHz帯」と話す。スプリントは2.5GHz帯の周波数帯を平均120MHz幅分所有しており、これは他社に比べても多い。電波が飛びづらいという特性も生かして、スモールセルを数多く設置してネットワークを改善する方向性のようで、「料理の仕方によっては非常にネットワークを強力なものにできる」(同)としている。

 孫社長が「世界初」とうたう端末の割賦販売方式でも、割賦債権の流動化によって資金を圧縮したが、スプリントが現在提供する端末のリース販売においても、リースファイナンスで資金需要をまかなうことでコストを圧縮できるする。この設備投資と端末費用の圧縮で、営業費用の削減を図っていく考えだ。

 孫社長は「スプリントの負債も圧縮してみせる」と宣言。そのための戦略は「明確に思いついた」としており、今後その戦略にもとづいてSprint事業を展開していく。

 Tモバイル買収が頓挫したことで、当初はスプリントの売却も覚悟したという孫社長だが、再建への道筋が見えたことで「自信がよみがえってきた」と強調。「心がうきうきして、うれしくてたまらない。スプリントを買ってよかったと、今は正直に思っている」と笑顔を見せる。

ソフトバンクグループ第1四半期決算
ソフトバンクグループ第1四半期決算
トンネルの先の光が見えてきた、として、「必ず改善してみせる」と孫社長は意気込む。

 会見では、国内事業への質問に関しては宮内社長が答えており、スプリントに注力する孫社長。思い描く戦略が実現するかどうか、今後の手腕が注目される。

■関連サイト
ソフトバンクグループ2016年3月期 第1四半期 決算発表

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