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初期生産は即完売!IoT自作モジュール『BlueNinja』は買いだ

2015年07月30日 11時30分更新

 秋葉原の家電ベンチャー、Cerevoが7月28日に発表した新製品は色々な意味で小規模モノづくり文化に一石を投じるかなり面白いモノだった。
 製品の名前は『BlueNinja』。小指ほどの大きさの基板でつくられたIoTデバイスのプロトタイピングキットだ。これは筋が良さそうだと思っていたら、初期ロット300個が火曜日の販売開始から24時間程度で完売。すでに追加生産に入った。

『Blue Ninja』
BlueNinjaのコンセプトを発表するCerevoの岩佐琢磨CEO。
『Blue Ninja』
BlueNinjaの実物。手前から、ブレイクアウトボード、BlueNinja本体、リチウムポリマーバッテリー。Blue Ninja本体は本当に小指程度の大きさしかない。

 BlueNinjaは、小指サイズの基板に、技術適合取得済みのBluetooth4.0を搭載し、9軸センサー(加速度、角速度、地磁気)と珍しいものとして気圧センサーを搭載。低消費電力プロセッサーとしてCortex-M4Fも備えたIoTガジェットのプロトタイピング用モジュールだ。

 価格は、モジュール単体が4890円、デバッガ付きのブレイクアウトボード同梱の開発キットは9990円。リチウムポリマーバッテリーは価格未定。
 初期生産分300個には、ブレイクアウトボード付きキットにバッテリーが同梱される。

 基板サイズに合わせた専用リチウムポリマーバッテリーが用意され、組み合わせるだけで、単体でバッテリー動作する。
 このセンサーとバッテリーなどのパッケージの意味は、つまりアームバンド型の活動量計に必要なハードウェアが、Blue Ninja単体だけで実現できてしまうということになる。
「ハードウェアはもうできている、BlueNinjaにどんな機能を持たせるかは、あなたがつくるアプリ次第」というわけだ。

『Blue Ninja』
BlueNinjaを組み込んだミニ四駆。組み込んだといってもテープで内部に貼り付けただけ。加速度やロール/ピッチを取得するプログラムと組み合わせると、ミニ四駆にF1のようなテレメトリー(挙動分析)システムが搭載できる。まさに大きさの勝利。
『Blue Ninja』
こちらの作例は、ニキシー菅を使ったスマートウォッチ。スマホと同期させて、時計を合わせたり活動量がとれる。Blue Ninjaのサイズ感ならプロトタイピング時点からこの大きさでつくれるし、小ロットならそのまま販売も……というリアルさが伝わる作例。

 この「アプリ次第」という部分は、最近の小さなIoTガジェットの流行をまさにとらえている。
 大規模な家電ショーで、あらゆるメーカーがウォッチ型の活動量計を試作展示している背景には、「要するに使ってるセンサーも、ハードウェア技術も、中を見ればほぼ同じ」ということが少なからずある。
 ただし、中身が似たようなものである=A社とB社の製品体験がほぼ同じ、ということにはならない。A社とB社の差は、アプリのUI設計や何のデータを見せて何を見せないか?というデータ解析と体験のデザインの違いが、そのまま製品の魅力の差になっていくということになる。つまり、ソフトウェアこそが、価値の違いにつながっている。

スタートアップのためのIoTプロトタイピングモジュールの意味

 Cerevoの岩佐CEOによれば、BlueNinjaはスタートアップのプロトタイピングのための開発モジュールを意図してつくられた。そもそも、大手企業のプロトタイピングとスタートアップのプロトタイピングは、そのスタンスがまったく違うと言う。

『Blue Ninja』
同じハードウェアを作っていても、規模の違いから大企業とスタートアップとでは別の話をしているかのような状況がある、と岩佐氏。
『Blue Ninja』
プロトタイピングについても、スタートアップの場合は"量産するとなればプロトをそのまま使いたい"というのがスタートアップだ、と語る。

 大手にとってのプロトタイピングはまさに試作で製品とまったく別なモノ。
 一方、資金的にも人材リソース的にも効率化を追求しなければならないスタートアップ企業にとって、プロトタイピングは「試作とはいえ、小ロットの量産に使える仕様なら、そのまま売りたい」。もちろん、プロトタイプで使ったチップや基板の類も製品版用に再設計するようなことはできればしたくない。

 BlueNinjaには、センサー類は一般的なIoT機器が搭載してそうなものがそのままごっそり入っているし、BLE通信も使えるから、スマホを頭脳にするタイプのIoTガジェットの機能は満たしている。ロット販売にも対応しているので、自作のアプリと筐体をつくれば、本当に製品化もできてしまう。

IoT電子工作キットとしての可能性

 アプリの開発SDKが今後どういうレベルで提供されるかという点は今後の評価になってくるが、ちょっと知識があればIoTで遊べるデバイスという意味で、BlueNinjaはArduinoやRaspberry Pi2に似た電子工作キットとしての可能性も感じる。
 開発環境に関しては、チップ(SoC)の開発元である東芝が提供するもののほか、Cerevoでも簡単に使えるような仕組みの提供を予定しているという。

 小指サイズのIoTモジュールを実現できた背景には、東芝の低消費電力SoC『TZ1001』を採用したことが大きいと岩佐CEOは語る。TZ1001はそれ単体でBLE通信と加速度センサーを内蔵するだけでなく、各種センサーからのアナログ信号を受け取る3系統のADCが24bitであること。このクラスで24bit ADCは「相当マニアック」で高分解能だと言い、市場に出ているウォッチ型ガジェットと比べても中身の性能ではBlue Ninjaの方が実は高性能、という場合もあると自信を見せる。

初めてのメイド・イン・DMM.make AKIBAのモジュール製品

 BlueNinjaの生産は日本国内生産、しかもDMM.make AKIBAの中で行われる。
 DMM.makeにはオープン当初からチップと基板を自動半田付けする生産設備があるが、Cerevo広報によれば「この規模での生産はBlueNinjaが実質的に初」とのこと。
 ちなみに初期生産は300個で、1000-2000個程度まではDMM.makeで生産する予定。それ以上の発注になれば、海外生産を検討する方針だ。

『Blue Ninja』
DMM.makeにある基板にチップを自動的に取り付けていくマシン。一度に10枚が生産でき、チップ類を乗せ終えるまでの時間は7分程度だという。
『Blue Ninja』
目まぐるしい速さで粘性のある半田にチップを植えていく。このあとリフロー炉で加熱して半田付けを完成させる。
『Blue Ninja』

 BlueNinjaは今週末の8月1〜2日に東京ビッグサイトで開催されるメイカーズイベント『Maker Fair Tokyo 2015』にも展示する。

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