週刊アスキー

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100万円は使ったかな?クラウドファンディングで買った商品を確認する会

crowdfunding

 普通の人が”出資”という形でスタートアップの商品を買えるクラウドファンディングサービスは、夢がつまった未来デパート。代表格のKickstarterに魅せられて、100万円近いお金を使ってしまった人がいる。kibidango(きびだんご)の松崎良太社長だ。

「楽天出身なんですが、もともと通販そのものが大好きで。よくわかんないけど面白いものがあるとつい手が出ちゃうんですよね」

 趣味が高じて脱サラ、ついに自分でクラウドファンディングサービスを立ち上げてしまった、まさにミスター・クラウドファンディング。奥さんに白い目をむけられながら買った商品は、かるく100点を超えるという。

 実際Kickstarterで買った商品にはどんなものがあるのか。松崎社長といっしょに振り返ってみたところ、まあ妖怪みたいに変なモンが出るわ出るわ。いざゆかん、夢と希望のクラウドファンディングへの世界へ。

(松:松崎社長、ア:アスキー)

便利なMacBookドック

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LandingZone(出資額159ドル)

ア:これ何ですか、アダプター?

松:便利なんですよ、『LandingZone』っていうんですけど。

(といってMacBookをのせて見せる)

ア:あ、なるほど。MacBookにつなぐと。

松:裏側を見るとわかるんですけど、いろんな端子がついてるんです。LANとかUSBとか。11インチとか13インチとか、サイズごとちゃんと合うタイプが用意されてて。

mac
LAN端子やUSB端子がたくさんついている
写真:Kickstarter

ア:へええー、便利そうですね。普通にアップルストアで売っててほしい。

松:ただこれが届くまでが長くて。

ア:長いっていうと。

松:Kickstarter登場が2011年11月で、翌年1月には目標を超える8万2489ドルを達成してるんですね。さすがに大人気で。で、すぐ発送が始まるはずだったんですが「工場が収めてきたモノがちがう」「資金が足りなくなった」「決定的な問題が明らかになった」とか、たびたび先延ばしになっちゃって。

ア:サギっぽいんですけど大丈夫ですか。

松:まあまあ、期待値をあまり上げずに待っていたから全然いいんですけど。だから「がんばれー!」とか応援してて。で、形になって「届けられます!」と来たのが2012年11月。プロジェクト開始からまるまる1年後でした。

ア:よくあきらめませんでしたねー。

松:おかげで便利に使えてます。届いたあとにRetinaのMacBook Proに買い替えたんですけど、そのときもまた新しいのをゲットして。この前に出たMacBook用のが出たら、MacBookの方を買い替えようかなって。

ア:もう完全に買うことが目的になってる気がするんですけど。

明晰夢が見られるアイマスク

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remee(出資額140ドル)

松:これ面白いんですよ、『remee』

ア:すでに嫌な予感がするんですけど大丈夫ですか。

松:これね、中でLEDが赤く光るんです。

ア:アイマスク光ったらまずいでしょう。

松:それがね、これがレム睡眠とノンレム睡眠が発生する時間を把握するようになっていてですね、夢を見ているときがわかるんです。で、あるじゃないですか、夢の中で自由に動きまわれるやつ。ナントカ夢……あれなんだっけなあ。

ア:明晰夢ですか。

松:そうそう、明晰夢!夢を見てるときにLEDがピカピカーッて光ると、それが合図になって「夢か!」とわかって、夢の中で好きなことができるっていう話なんですよ。

ア:言いたいことはわかるんですけど、明晰夢は見られたんですか。

松:いや、明晰夢っていうか、装着して夢そのものを見た記憶がなくて。

ア:……次いっていいですか。

テオ・ヤンセンじゃないやつ

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The Humble Velocipede(出資額150ドル)

ア:あっ、テオ・ヤンセンじゃないですか!

松:いや、ヤンセンじゃないんです。『The Humble Velocipede』って言う竹のおもちゃなんです。

ア:欲しいですけど、風で動く機械じゃないですかこれ。

松:いやいや違うんですよ。それにこれ、風では動かないんですよ、手で動かすんです。カタカタカターって。動きがいいんです、かわいくて。ちょっとやってみますか。

(松崎社長、テーブルの上で動かす。ぎこちなく前進するおもちゃ)

松:おかしいなあ。もうちょっとスムーズに動くはずなんだけど。

ア:あ、でもかわいいのはわかりましたよ。欲しいですし。

(松崎社長、5分ほどかけて何回か調整する)

松:おかしいなあ……あっわかった、下がもっとデコボコしてるといいんですよ! (広報さんに)ねえ、うちカーペットなかったっけ?

ア:あの、今度で、また今度でいいです。

Androidゲームコンソール

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OUYA(出資額140ドル)

ア:これ見たことあるような気がします。

松:けっこう有名ですね。『OUYA』っていう、Androidベースで開発されているゲームコンソールです。

ア:あーっ、Steamみたいな。

松:そうです、まさに。もともとゲーム業界にいた女性が作ってて。実際にイベントでお会いしたこともあるんですけど、まあパワフルな女性でしてね。動画でもすごくパワフルに話してて。「いままでのゲーム業界をぶち壊すにはすごい根性と勇気が必要だったのよ、とくにわたしは女だからね」

ouya
プロジェクト代表の女性。すごい迫力
写真:Kickstarter

ア:ゲームはどんなのがあったんですかね。

松:いろいろあったんですよ。スクウェア・エニックスが『ファイナルファンタジー』シリーズを出してたり、セガが『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を出してたり。あとはインディーズゲームがほとんどでしたけどね。

ア:ところで社長、これで実際ゲームやったんですか?

松:やりましたよ~、最初は。動きも悪くなくて、よかったですよ。でも忙しくてなってきて時間がとれなくて、つい先日久しぶりにひらいてみたらインディーズゲームばっかりになってましたね。ははは。

パラパラまんが再生機

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FlipBooKit(出資額99ドル)

松:これいいですよ、『FlipBooKit』

(ハンドルを回すと、カタカタカタ、とパラパラまんががめくれる)

ア:おおおおっ、面白い!

松:でしょう~。ちょっと硬めの特殊紙でできていて、パラパラまんがができるっていうしくみなんです。

ア:ちょっとやっていいですか?

松:どうぞどうぞ。

(カタカタカタカタ)

ア:おお~、面白い!

松:面白いのは自分の用意した画像をアップできるようになってて、印刷用のPDFがダウンロードできるんです。専用の用紙に印刷すると、パラパラまんがにできる。

ア:いいですねー!やりましたか?

松:いや、自分ではやってないです。

ア:ですよね。

ウイスキーに香りをつけるチップ

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WhiskyElement(出資額25ドル)

松:これが面白いんですよ~。

ア:何回目ですかそれ。

松:『Whisky Element』って言ってね、燻蒸したオーク材なんです。要はオーク樽と同じ木材で出来ていて、ウイスキーに入れるとオーク樽の素晴らしい香りがするんです。厳選した木材を使っていて。形にもこだわりがあって、何回も試作を重ねてようやく完成したのがこれっていう。

ア:なるほど。あとづけでウイスキーに樽の香りをつけるわけですか。

whisky
ウイスキーに燻蒸香をつけるらしい
写真:Kickstarter

松:そうなんです。これ楽しみだったので、今日初めて開けるんですよ。

ア:おっ、初開封!

松:仕事中なのでウイスキーはないんですけどね、香りだけでも楽しもうかなと思って。じゃあ開けてみますよ~。

(包み紙をはがし、2人で匂いをかぐ)

ア:おっ、これは…………。

松:おっ…………。

ア:……あの、匂いします?

松:木ですね。木の匂い。

ア:そりゃ木ですけど。

松:でも動画だと、これ水に漬けたら色がつくほどだって……。

ア:……これ、もしかして、燻してからずーっと開けずにとっておいて、時間経ったから香りがとんじゃったんじゃないですか。

松:あっ……。

ア:…………。

松:…………。

iPhoneで操作する紙飛行機

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PowerUp 3.0(出資額75ドル)

ア:どう見ても紙飛行機ですね。

松:そうなんです。『PowerUp 3.0』って言って、先端にホラ、センサーつきのモジュールがついているんですね。iPhoneでリモート操作できるわけですよ。

ア:また楽しそうに言いますね。

松:楽しいんですよこれが。iPhoneを傾けると紙飛行機も傾く。仕事の息抜きに公園とかで飛ばしてみるんですけど、意外とちゃんと飛んでくれて。

ア:3.0ってことは第3弾なんですか?

松:いやね、開発者はかなり昔から紙飛行機にモーターで動くプロペラをつけて飛ばしてたんです。で、プロトタイプを友だちに見せたら「コントロールできるのがいいな」って言われた。その後、2年間の研究を経て、57種類のプロトタイプを作って開発したのが『3.0』ってわけです。

ア:めっちゃ熱い!

松:間違って落ちたときもドローンより安全でいいんじゃないかなあ。

本の形をしたデスクトップライト

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Lumio(出資額95ドル)

松:これはですね……よっ。

(本をパカッとひらく)

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ア:おー、かっこいい!

松:でしょ~。『Lumio』っていうんです。充電式のデスクトップランプ。

ア:説明不要の良さってありますね。

松:そうなんです。素材にタイベック紙を使ってて、丈夫なんだけど耐水性で軽いのもいいですよね。もともとプロジェクトをたちあげた方が建築家で、ポータブルハウスの発想から“折りたたみ”のアイデアを思いついたそうなんですよ。だからっていうのもあると思いますけど、コードレスで、家の中でも職場でも持ち運べますし。

ア:思いっきり説明してますけどね。でもかっこいいなあこれ。

どこかで見たキャラがいる浮世絵

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Ukiyo-e Heroes(出資額75ドル)

ア:これ載せて大丈夫かなあ……。

松:まあ見てのとおりですけど、ゲームのキャラクターをベースにして浮世絵をつくろうというプロジェクトなんですね。『Ukiyo-e Heroes』

ア:あっ、ほかのゲームもある。

松:そうなんですよ。今のが『マリオカート』でしょ、『ゼルダの伝説』、『星のカービー』、『ポケモン』……。アメリカはファン・アート(日本でいう同人活動)が盛んで、こういうモノも個人で楽しむ範囲ではいいだろうと。

ア:任天堂好きなのは伝わります。

松:プロジェクトを始めたのがジェド・ヘンリーさんっていうアメリカの方。実際に版画にしてるのが、デービッド・ブルさんっていう、日本に住んでるカナダの浮世絵師さんなんですよ。もともと浮世絵が大好きで日本に来て、最初は弟子入りしようとして追い返されたらしいんですけど、そこから独学で勉強をはじめて。いまでは浮世絵好きのあいだで知らない人はいないくらいの方なんですよ。

ア:うへええ、本物じゃないですか!

松:そうなんですよ~。すごく気に入っちゃって、会社の壁に飾ってるわけです。

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オフィスに飾ってあった

ア:おお~。で、会社のみなさんはこれを見ながら仕事をしていると。

松:まあみんな気づいてなかったですけど。

ア:社長……。

松:いいんです。

ストローをつなげる知育おもちゃ

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JIX(出資額25ドル)

ア:次で最後にしましょうか。

松:じゃあとっておきを。『JIX』です。

ア:またわかりづらそうなモノを持ってきましたね。なんですかこれ。

松:いわゆる知育玩具で、これをストローをつなげて構造体を作れるんです。よっ。

(次々にストローをさしていく)

ア:おっ、おっ、すごい、ピラミッドができていく。

松:けっこう巨大になるんですよ~。

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(どんどん大きくなっていく)

ア:あっ、もうそのくらいで……。

松:ほんとは球状にもできて、それがカッコいいんです(作りながら)。おまけに土に還る再生可能原料でできていて、環境負荷が低くて。ほんとはストローも再生可能だといいんですけどね。

ア:普段は会社に置いてあるんですか。

松:家に置いてあるんですけどね。

ア:邪魔になりそうですけど。

松:ははははは。

kickstarter
最終的にこのくらい大きくなるらしい
写真:Kickstarter

クラウドファンディングには夢がある

matsuzaki
きびだんご松崎良太社長。満面の笑み

ア:いろいろ見てきましたけど、クラウドファンディングってわりと届くもんですね。もっと失敗確率高いものだと思ってました。

松:いや、まだ届いてないものも多いですよ。「中国の工場とトラブルがあって」「資金繰りがちょっとヤバくてごめん」とか報告してくれるのを見ながら待ってます。

ア:生々しくていいですね。

松:ある製品は、第一弾を買ったあと「第二弾はまだ出ないのかな?」と問い合わせたら「申し訳ない、あの事業はもう売却しちゃったんだ」と連絡があったりして。

ア:Kickstarterだけで企業の栄枯盛衰がわかると。

松:けっこうありますよ。いつのまにか他の会社がプロジェクトを回してたり。

ア:奥さんはなんて言ってるんですか。

松:「今日取材があるから、Kickstarterで買ったもの会社に持ってくよ」って言ったら「ああよかった!」って。

ア:思いきり邪魔にされてるじゃないですか。

松:ねえ。本当に。

ア:あと、社長さんが思いきり競合の宣伝してていいのかっていう話ですけど。

松:そういえば、言われてみればそうですね。まったく気づきませんでしたね。

ア:気づきたかったですね。

松:でもまあ、これを通じてクラウドファンディングの楽しさが伝わればいいんじゃないかなあ。いいですよ~、クラウドファンディング。夢があるし、楽しいし、ワクワクするし、つい買っちゃうんですよね~……ダメ?(社員に向かって)

●関連サイト
kibidango(きびだんご)
Kickstarter

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