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今、ドローンにはマイコンブームと似た熱がある

2015年05月20日 08時30分更新

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 15日に開催されたセミナー”ドローンナイト”(ツブヤ大学・角川アスキー総研の共催)。登壇したのは、飛行体を開発するアーティスト、プロユースの空撮関係者、ドローン研究の第一人者。三者三様の作り手が語るドローンの最先端、テクノロジー側から見た今後のドローンについて語られた講演内容の一部をお届けする。

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↑最初に登壇したのは、『風の谷のナウシカ』メーヴェの実機を製作して自ら飛行する”オープンスカイプロジェクト”を手がける発明系アーティストの八谷和彦氏。

 八谷氏は、現在のドローンを取り巻く状況が1970~80年代のマイコンブームと似ているのではないかと指摘。ジャイロセンサーやGPS、加速度などのセンサー類がスマホに入るようになり安価になったこと、それらの子孫としてドローンがあり、アマチュアが手を出すような面白いものが出ているという。さらに民間レベルの先、ビジネス向けのハイスペック領域も含めた盛り上がりもその一因ではないかと語った。

 ドローンはもともと民生用ではなく、ターゲットドローン(標的機)のような軍用無人機が生まれ、さまざまな種類のドローンが戦場や警察機関などでも導入されている。八谷氏は”DRONE SURVIVAL GUIDE(ドローンサバイバルガイド)”というアート活動を紹介。多種多様な軍用ドローンの種類や大きさ、さらにそれらから身を守るためのパンフレットで、紛争地域などで活動を続ける無人攻撃機としてのドローンから身を守るための術が記載されている。

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日本語版PDFも無料公開されている。

「技術は人を殺すことにも使えれば、美しいものを撮ったりすることもできる。オープンスカイプロジェクトのような個人用の飛行機をつくることも実はドローンから生まれている」(八谷氏)

 コンピューターやインターネットと同様に、軍用で生まれたものを民間でいかに楽しいものとして使えるかが大事だとして、発表の最後にドローンだからこそ撮れた映像として『Fireworks filmed with a drone』を紹介した。夜空の中で間近に迫る花火が美しい映像なので、見たことがない人はぜひチェックを。

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↑続いて登壇したのは、カメラ機材の販売(輸入サイト”デジタルホビー”)と空撮を手掛けるジュエの山崎友一朗氏。

 映像制作のための空撮サービスを手掛けている山崎氏は、映像制作会社の発注において求められる下記4つの条件を語った。

1.映像を撮るため揺れてはいけない
2.カメラワークのため正確に飛べる
3.プロ用の多種多様なカメラでも搭載できる
4.安全である(落ちても大丈夫/落下の際にリスクのある場所では飛行しない)

 プロユースの4Kカメラまで搭載すると、重さは15キログラムにもなる。そのようなカメラを飛ばせるマルチコプターは売っていないため、米国製のスタビライザーや、パーツを仕入れて最終的に厳選素材で自作しているという。モーターやフライトコントローラは個別に購入するなどして、機械的な重量に対して素材を選んで組むことが、重量のあるカメラを載せるための仕様だと語った。

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↑機体にかかった費用は200万ほど。実際に飛ばしている機体は、浅草にあるデジタルホビーで確認できるという。


 最後に登壇したのが、千葉大学の野波健蔵氏。1998年からドローン研究、周辺技術である空中ロボット研究を行っている同氏がまず語ったのは、最新の話題である首相官邸への墜落問題。

 墜落から2週間も放置されたままだったという点での首都警備における危機管理の失態を指摘。集団安全保障以前の日常的なセキュリティー構築から考え直さねばならないと語った。現在進んでいる規制法案の準備についても、有識者として前向きなドローン活用に向け、積極的に関係者と意見交換を行っているという。

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↑千葉大学の野波健蔵氏。同氏が2013年に立ち上げた大学発ベンチャーは日本唯一の国産ドローン研究を行っている。20日から始まる第1回国際ドローン展では、レーザーでの外界認識によって人工知能化した完全自律ドローンのデモを予定している。


 野波氏の本題は、ドローンの機構とテクノロジーについて。

 そもそもドローンの飛行は気を付けないといけない部分が非常に多い。「姿勢センサーは地球の中心を見て、そこに対して平行であるかどうかを常に判断しており、機体が傾いた場合に角度補正制御が働く。重力センサーは加速度で計測するが、スピードが出ると重力と加速度での合成ベクトルとなる。そのため、進行方向の推力も含めたときは方位センサーを使って制御を行っている」と野波氏。

 つい最近も電波塔の近くで墜落したドローンの事件があったが、そもそも電波の強い場所でドローンは飛行できない。何も対策をしないまま飛ぶと、山間部の鉄塔でも50万ボルトが流れており、付近では機体が暴走してしまうのだという。

「もっと怖いのは、鉄橋。コンクリートは大丈夫だが、磁性材料だと方位が狂う。あとはケータイの基地局。セキュリティー上位置がわからない」(野波氏)

 ただし、磁性があると飛べないのかといえば、そもそも搭載しているモーター自体が大きな磁場で、機種によっては磁場を補正して飛行しているという。DJI Phantomなどは内蔵機器で補正を行っていおり、チューニングを行って設定された場所と実際に飛ばす場所が大きくズレてしまうと飛行の際に危険となる。地球のどこで飛ばすのかも含めて理解すべきだと、ドローンならではの補正の重要性を語った。

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 質疑応答では会場から「今後ドローンはどうなるのか?」という問いに対して、登壇者からドローンが自動運転や自律システムの臨界点にあるのではという指摘があった。これについては、野波氏が語った言葉で締めたいと思う。

「将来は、(機器内の)フライトコントローラーだけで街中を飛んでいるようになるのではないか。人は行き先を選ぶだけで、本当に安全な場合はパイロットはほとんど何もしないもの。フライトコントロールだけでないオンボードでの判断をする部分、『ガイダンスナビゲーションコントローラー』こそが必要となるだろう。たとえば都市では電線をセンサーで見分けるようなことも必須。人、環境、動物と共存するような、それこそ電線にカラスとマルチコプターがとまるような世界観が理想だ」(野波氏)

写真:ツブヤ大学

■関連サイト
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ツブヤ大学
角川アスキー総合研究所

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