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減収減益から脱却の兆し? 今年は“ドコモ光”や協創がテーマの“+d”サービスを柱に

2015年04月28日 22時30分更新

 ドコモは28日、2015年3月期決算を発表した。連結決算は、営業収益が前年度比1.7%減の4兆3834億円、営業利益が同22%減の6391億円で減収減益。下方修正したあとの数値目標である利益6300億円は達成したが、大幅な減益となった。

 営業数値は改善しており、新料金プランの契約者や端末販売数は増加。コスト削減も進捗し、今期は営業収益が4兆5100億円、営業利益が6800億円の増収増益を見込む。

 同社の加藤薫社長は「中期目標の達成に向けて確かな一歩を踏み出す年にする」と意気込み、目標達成に向けた施策を打ち出していく方針だ。

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↑ドコモの加藤薫社長。

 同期の減益要因は、主力の携帯事業の通信サービス収入が999億円減少し、さらに月々サポートの影響が1170億円に達したことによるもので、これにモバイル向けマルチメディア放送(NOTTV)を担当するmmbiの減損302億円を計上したことなどが利益を圧迫。コンテンツサービスなどによる利益を吹き飛ばした。

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↑決算の概要。
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↑セグメント別の実績。
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↑営業利益の内訳。

 足元の指標は改善しており、純増数は前年度比2.2倍となる349万契約、MNPは70%の改善となる38万減、解約率は16ポイント改善の0.71%となった。ただし、純増数には、内訳非公開ながらスマートメーターやMVNO分も含まれ、MNPは純減である点は変わらないことから、収益改善へのインパクトは未知数だ。

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↑純増数などの数値は改善。

 端末販売数は5%増の2375万台。そのうち新規販売数は12%増の898万台となり、「iPhone 6や冬春モデルが好調だった」と加藤社長。スマートフォン販売数は6%増の1460万台、そのうちタブレット販売数は75%増の173万台に増加。2台目需要が拡大しているという。

 通信単価の高いLTEスマホは、全スマホの92%に拡大し、利用数も18%増の2875万契約まで拡大。それにともない、ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は改善の傾向があり、第4四半期で比べると前年度比70円の減少ながら、音声、パケットいずれも前期比では下げ止まり「底打ちした」との認識だ。

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↑スマホ利用者数は拡大。LTE比率も順調。
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↑ARPUは減少傾向に歯止めがかかった。

 新料金プランは4月5日の段階で1800万契約を突破し、順調に拡大。同プランは特に音声ARPUへのインパクトが強く、当初は減収要因になることが想定されており、同期は予想よりも大きい1070億円の影響となった。しかし、昨年11月を底に状況は改善しており、今後減益幅は小さくなる見込みだ。

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↑新料金プランが順調に拡大し、収支影響も改善傾向に。

 NTT東西の光回線卸である“光コラボレーション”を利用した“ドコモ光”は、3月1日の開始から1ヵ月で23万契約を突破。NTT東西、ドコモ、ISPと3社が関係するサービスのため対応の遅れが目立ち、開通数は半分にも満たないというが、今後改善していくと加藤社長は強調する。

 ドコモ光の割り引きを利用するため、3割の利用者がモバイルの新規契約をするなど、携帯事業への好影響もあったとしている。

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↑ドコモ光利用者のモバイルへの影響。

 コンテンツサービスなどの新領域事業は“スマートライフ領域”に名称を変更し、ケータイ補償サービスやM2M事業などのその他の事業と合わせた売上は7568億円で15%増。スマートライフ領域ではmmbiの減損のため39億円の赤字だったが、その他の事業は黒字化している。

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↑スマートライフ領域の収入は順調に拡大。
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↑dマーケットの取扱高。

 dマーケットは取扱高が32%増の728億円、契約数は1188万契約、ひとりあたりの利用料は35%増の1014円と順調に拡大。dTV(旧dビデオ)、dヒッツ、dアニメストアに続き、dマガジンが好調だった。

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↑dマーケットやその他のd系のサービスも好調。

 通信サービスでは、LTE対応基地局を前年度末の5万5300局から9万7400局まで拡大。下り100Mbps以上の速度に対応した基地局も同3500局から5万7700局まで急拡大しており、ネットワーク環境の改善を継続している。

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↑LTE基地局の推移。

 それにも関わらず、設備投資は効率化などによって前年度7031億円から6618億円に縮小。計画を上回るペースで設備投資額の適正化を図っている。

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↑設備投資は効率化。
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↑全体のコスト削減も進展。

 今年度は、営業収益で1266億円、営業利益で409億円を積みまして増収増益を目指す。月々サポートや端末販売コスト、トラフィック増によるコスト拡大などの減益要因に対して、通信、スマートライフ事業の増益に加えて、1200億円のコスト削減を実施して目標を達成したい考えだ。

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↑今年度の業績予想と各種指標。

 そのために、ドコモ光によるユーザー層の拡大、新料金プランのさらなる利用増により、ARPUの反転、顧客の拡大を目指していく。増益の鍵となるコスト削減では、14年度は1200億円ながら早期にできるものに取り組み、削減に時間がかかるものを今年度に回したことで、2100億円の削減達成は可能という判断。

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↑さらにコスト削減を積み増し、収益を改善する。

 その中でもネットワークの拡張は継続し、現在の下り最大225Mbpsに対して、今年度中に300Mbpsまで増速。2020年度に次世代の5Gを導入する計画で、順次ネットワークの進化を続けていく意向だ。

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↑2020年の5G導入に向けてネットワークを拡張する。

 加藤社長は「結果にこだわる年」と話し、今度の通期計画の達成を確実にしたい考え。14年度は中間決算で業績予想を下方修正した経緯もあって、今期は手堅い数値目標の達成を優先する。

 2017年度に向けた中期経営計画では、通信事業では競争力の強化を図って事業の回復を急ぐとともに、スマートライフ領域では新たな施策を打ち出して拡大を図る。

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↑2017年の中期目標とその取り組み。

 加藤社長は新たなキーワードとして“協創”という言葉で表現しており、さまざまな企業とコラボレーションして、新たな取り組みを実施する考え。IoTや医療、教育、農業といった社会的課題の解決、地方創生、2020といった分野での取り組みを強化していく戦略で、具体的な施策は順次発表していくという。

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↑“協創”をキーワードにさまざまなコラボレーションでサービスを創出する。

 協創のキーワードに合致するサービスに向けて“+d”というブランドを打ち出し、既存サービスでは“ドコモポイント”を“dポイント”、“ドコモプレミアムクラブ”を“dポイントクラブ”、“DCMX”を“dカード”、“docomo ID”を“dアカウント”と名称変更。今後もサービスを拡大する。

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↑新たなブランドとして“+d”を立ち上げ、各種サービスを提供する。
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↑例えば“2020”を見据えたビジネス創出では、TOEIC 800点以上の精度を目指す翻訳サービスなど、先進性の発信と新しいビジネスの創出を推進する。
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↑ドコモのサービスだけでなく他社サービスの“触媒”(加藤社長)としてのサービス創出も手がける。

 加藤社長は「イノベーションが生活の中に当たり前に存在する、そんな日を目指して、イノベーションに積極的に挑み続けていきたい」と話し、通信事業だけでなく、幅広い事業を拡大していきたい考えを示している。

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↑新たなブランドスローガンとして“いつか、あたりまえになることを。”を設けてアピールしていく。
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