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アップルの新しいMacBookにより、ジョブズの方針は幕を下ろす

2015年05月02日 15時00分更新

「デジタルハブ」の死だ。(ReadWrite Japan提供記事)

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2001年、スティーブ・ジョブズはコンピューティングのビジョンを示した。このビジョンは何年にもわたってアップルの方針となるものだった。今は亡きアップルの共同創設者は、マックワールドの聴衆の前で「新たなデジタル機器の爆発的登場によって」パーソナルコンピュータは黄金時代に突入しつつあると語った。ユーザーのデータを囲い込み、その意味を理解するため、あらゆる機器がMacに接続し、Macを頼みの綱とするようになる、と。コンピュータが生活の「デジタルハブ」になるだろうと彼は述べたのだ。

14年後、現在の最高経営責任者(CEO)ティム・クックは、シングルポート一つのみの新しいMacBookを発表し、ジョブズのビジョンに幕を下ろした。

この新しいモデルは構造的な転換を示している。ハブ機能は、われわれが使用する機器や端末でのローカル・コンピューティングからクラウドへと移動したのだ。オンラインサービスが様々な役割を果たしてくれる今、高性能プロセッサや多数のポートは必要ない。インターネットは巧みにわれわれのメディアやその他の個人データを管理している。スマートウォッチや家、車、フィットネス端末や健康管理用トラッカーがわれわれの生活をますますオンライン化しているように、インターネットの可能性が拡大するのは時間の問題だろう。

新しいMacBookはこのような未来に向けて生み出されたものだ。端末の接続は今後必要なくなるということだ。

ハブよさらば

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マックワールド2008でのスティーブ・ジョブズ

iPhoneを導入する6年前、スティーブ・ジョブズは、ユーザーが所有する一連の端末の神経中枢となるのはPCだと考えた。彼は、カメラ、音楽プレーヤー、ビデオカメラやその他の電子機器の中心にコンピュータを据えていた。

われわれはデジタル機器の爆発的登場によって生まれた新しいデジタルライフを送っています。これは大きなことです。PC、もっとはっきり言えば、Macが私たちの新しいデジタルライフスタイルのデジタルハブになるだろうとわれわれは考えています。このような他のデジタル機器に大きな価値を加えることができるためです。デジタルハブ。これがキーワードです。

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2001年、スティーブ・ジョブズのマックワールドでの演説からのスクリーンキャプチャ

そこでアップルはその使命を果たすため、MacやMacBookに多数のポートや光学式ドライブを導入したり撤去したりしてきた。時間が経つにつれ、デジタル・ライフスタイルは変化した。その変化の主な原因は、ジョブズ自身が後に発表した製品によるものだった。

iPod、iPhone、iPad(およびそれらに対応するAndroid製品)は、デジタルカメラ単体や他の付属端末に取って代わった。そして、ワイヤレスのiTunesやiCloudの同期機能だけでなく、オンラインサービスのおかげで、これらのモバイル端末は原始的な同期ケーブルから解放された。ユーザーは物理的に接続することなく、各端末間で同期されたアカウント、サービス、データを簡単に管理できるようになった。

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iPhone 5S

こうして、新しいMacBookのシングルポートは製作に何年も要することとなった。どうやら、アップルはこれを時代を先取るものと見ているようだ。このコンピュータが現在のニーズに合っていない理由はそれで説明できそうである。未来のために設計されているのだから当然だ。このことは「新しいMacBookは未来だ」のレビュアーにとって共通する感覚だ。ウォールストリート・ジャーナルは「タイムマシン」と呼び、CNETは「ラップトップの次なる章」として歓迎している。

彼らは正しい。だが、それは彼らの述べる理由によるものではない。このように騒がれている原因の多くは、単一のUSB-Cポートにある。これはディスプレイケーブル、電源コード、iPhoneケーブルおよびその他のガジェットを接続する次世代の規格だ。

最新のChromebook Pixelはこの新しいUSBをサポートしているが、まだほとんどの端末が未対応だ。アップルはそれを全面的に受け入れて、またもや自社の手で古いテクノロジーに手を下すという、おなじみの物語を生み出している。同社はUSB 1.0やFireWire、光学式ドライブやその他の規格と一緒に、ゴミの山にUSB 2.0を投げ捨てたというだけのことである。それでおしまいだ。

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「新しいMacBook」のUSB-Cポート

しかし、ほとんど誰もが見落としているが、非常に興味深いことが他にある。アップルはついに独自のMagSafe電源コネクタを手放すということだ。つまり、外付けバックアップ用のMacBookバッテリーを提供するメーカーにやっと可能性が開かれるということだ。これまで、このようなメーカーは制限を受けていたり、または奇抜な回避策ハックを余儀なくされていた。

しかし俯瞰すると、アップルがポートとケーブルに将来性がないとしたため、MacBookから独自の充電器を捨てたと言える。すべてがオンラインに接続して実行されれば、ポートやケーブルの重要性は単純に下がるのだ。

MacBookはアップルのChromebookとなった

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Chromebook Pixel

新しいMacBookを本格的なノートPCと見るべきではない。これはより薄くなったChromebook+と考えなければならない。つまり、絶対に必要となる、特定のアプリケーションを実行するものだ(将来的にわれわれの使う端末が全てサポートされるようになるのは明らかだ)。

アップルのクラウド第一の考え方に基づいたため、コンピュータの性能面には低下が見られた。最初に届いたレビューから判断すると、新しいMacBookのプロセッサは(現在の基準からすると)性能が劣り、ファンがついていない。おそらくほとんどの人が自分のマシンで負荷の大きい計算要求を処理する必要がなくなるという認識に基づいているのだろう。つまり、ソフトウェアをインストールせずにMicrosoft WordAdobe Photoshopを使えるような世界が訪れるということだ。

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残念ながらMacBookでは、特にウェブブラウジングのような行為で、パフォーマンスの低下にも悩まされそうだ。これはクラウド指向のラップトップにとって重要な課題である。幸いにも、ソフトウェアのアップデートによって大いに改善されることになりそうではあるが。

プラス面を挙げると、このバージョンは、以前のモデルや現在のMacBook Airよりも軽量で薄くなっており、バッテリー寿命の長さを誇っている。階層型のパワー・セルを積み重ねるという斬新な方法によって9時間の寿命を実現しているため、内部を合理化し、あらゆるポートを取り払って生まれたわずかなスペースをすべて利用することができる。移動しての使用を前提としているため、デスクトップ・モニターで電力を供給することもできない(USB-Cのおかげだ)。

新しいForce Touchトラックパッドは静的なスラブだが、まだタップ操作が難しいと感じるかもしれない。これはApple WatchのForce Touch機能を真似ている。操作は難しいかもしれないが、少なくとも端末間で一貫性のある入力方法を提供することになる。ネタバレ注意:Force Touchはまもなく未来のiPhoneに導入されるだろう。

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モバイル業界の同業者やChromebookというライバルと同じく、新しいMacBookはそれ自体が生産性を向上するツールという印象を与えてはいない。同端末はフラットなキーボードやアップルのいわゆる「Retinaディスプレイ」の高解像度画面を備えている。それらをまとめて、書類を作成するよりも、美しいInstagramの写真を見たり、HDビデオを配信するのにより適したラップトップが手に入るということだ。

前方に広がるのは

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携帯電話やタブレットがユビキタス・コンピューティングをどう生み出したか、コンピュータを含むあらゆる端末に対して、インターネットはそれをどう支えるかを、モバイル市場における遥かな高みから、アップルは見つめていたのだ。

同社はiOSやOS Xプラットフォームの中心にFacebookやTwitterを取り入れ、ポピュラー音楽のストリーミングサービスを行うヘッドフォンメーカー、Beatsを買収した。また、iWorkを含め、アプリケーションの多くをオンラインで提供した。だが、まだ一つの穴はぽっかりと開いたままだ。同社独自のクラウド戦略、あるいはその欠如である。

アップルは、特に昨年からiCloud Driveを展開することによって、その改善に動き始めた。だが、無料で提供されるのはたった5 GBであり、アップグレードは有料となることや、iCloudのセキュリティ問題などから、概して混乱しているように見える。アップルがクラウドに未来があると考えるのであれば、あらゆる問題を見過ごすわけにはいかない。

同社は問題を解決しようとするだろう。クックと彼のチームは、仮想現実装置無人車は言うまでもなく、HealthKit、HomeKit、ResearchKit、CarPlay、Apple Watch、新しく、よりスマートなApple TVなどからなるチームを指揮し、多忙を極めているのかもしれない。しかし、彼らはそのような努力の多くがクラウドで結びつくことを知っている。そうすれば、そのクラウドはもはやただのクラウドではない。アップルは、クラウドをそうやって我が物にしたいと考えている。

14年前、ジョブズはパーソナルコンピュータをデジタルハブと呼んだ。だが、PCはわれわれのデジタルライフの指令センターとしての力を失いつつある。唯一のコンピューティング・デバイスとしてスマートフォンに頼るしかないユーザーがいる一方で、単純にコンピュータよりもモバイル端末に魅力を感じるユーザーもいる。

どちらにしても、PCはわれわれのハブではなくたった。コンピュータはデバイスの一つであり、インターネットに接続する端末にすぎないのだ。インターネットはますます我々の生活に密着している。グーグルはChromebookでこの現実を受け入れた。今度はアップルのMacBookの番だ。

画像提供:
iPhone 5s写真:Kārlis Dambrāns
MacBook写真:Apple
Steve Jobs写真:Dan Farber

Adriana Lee
[原文]


 

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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
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