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連休前にメモ!高級宿に最安値・厳選プランで泊まれる『relux(リラックス)』

2015年04月16日 06時30分更新

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茨城の旅館『里海邸 金波楼本邸』。一泊40,000円から。

「別世界が体験できました。以前近くを訪れたときとは、まったく異なる最高の体験でした。海辺の部屋やテラスで感じる潮騒、一望できる水平線を見ながらの食事や温泉、そしてスタッフの心遣いも最高で、非常にゆっくりできました」(ユーザーの声)

 国宝などの記念物、または広く知れた名勝などの主だった観光資源が近くにない茨城県の旅館が、全国レベルの高級旅館を軒並み押さえて、2014年度の宿トップ10に入った。

「周辺観光も良いが、宿にずっといることで地域を感じるすばらしい体験ができる」と語るのは、厳選された一流旅館・ホテルに最安値で泊まれる宿泊予約サービス『relux』(リラックス)を手掛ける、Loco Partners(ロコパートナーズ)の篠塚孝哉代表取締役CEO。

「例えば、茨城に素晴らしい宿があることを私自身、恥ずかしながら知らなかった。地域に眠れるいい宿は多く、地方の力は改めてすごいと思う。これこそ観光の宝」(篠塚代表)

 リラックスが提供するのは、宿が目的となる旅行だ。

 その土地でしか体験できない美術館や公園などの施設、登山や海のために赴く"手段の旅行"では、特定のエリアに用事があるために泊まることが多いはずだ。だがリラックスの場合は、宿泊する旅館・ホテルが"目的の旅行"だと篠塚代表は語る。「観光リソースがなくても、満足いただけるものをそろえている。場所ではなく、だいたいの地域を決めて探してもらったほうが楽しい体験ができる。エリアに縛られず、宿自体を楽しむ価値観を提供したい」

 利用者のうち、リピーターが3割に上る人気の高さを誇る同サービスのビジネスモデルについて聞いた。なお、ゴールデンウィークの枠はほとんど埋まっているので、夏休みの旅行を考えている人は、お早めに。

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Loco Partners(ロコパートナーズ)の篠塚孝哉代表取締役CEO。


■業界の仕組みをフルに活用して高級品質と最低価格を実現する

 営業マンが”厳選した宿”で、最も適した”1つのプラン”を提供し、さらにそのプランが同サイトだけの”最低保証価格”となっているのがリラックスの特徴だ。高級品質と最安値を両立して提供できるよう、厳選した宿にセールス担当者が直交渉し、独自の特典を入れ込んだオリジナルプランを作っている。

「いい宿を開拓するために、ビッグデータ分析をエンジニアサイドで行っている。宿に関する口コミが集まっているサイトからデータを集め、独自で偏差値をつくっている。全宿をソートして価格軸で切ってアプローチをすると、それなりに精度の高いリストとなる。しかし、ビッグデータだけでは不十分なので、営業マンの経験や視点を取り入れることでより精度を高く厳選させていただいている」

 宿泊体験という点で、そもそも満足度には個人のばらつきがあるという。「例えばリラックスには、1名1泊あたり2万円~10万円程度の宿泊費の施設が点在するが、5万円クラスに泊まり慣れた人が2万円クラスの施設に泊まったことで、がっかりしてしまう声もいただいていた。そのため、宿のランクを現在は星で評価している。星なしのスタンダードでも地域代表クラス。1つで都道府県、2つで関東代表、3つで日本代表、それ以上は世界レベルで段違いの体験ができる"ザミュージアム"という設定がある」

 最低価格の保証面でも、同じサービス内容で他社よりも高かった場合には返金を行う仕組みだ。また会員ユーザーへのポイント還元も5%と高いため、リピート率も3割に上る。「予約をする時点で、多くのサイトから最安値を探すのは(ユーザーにとって)面倒過ぎる。一番オトクという状態を作れれば差別化になるし、手間を軽減できる」

 宿にとって、部屋は飛行機の座席と同様だ。空席・空室の有無に関わらず、コストがかかるのは変わらないので、稼働率は限りなく高いほうがよい。「『じゃらん』や『楽天トラベル』といったOTA(Online travel Agent・ネット旅行代理店)の間口を広げたほうが、宿にはコストもかからないため本来的にはよい。(リラックスのような)新参者を拒否することはない」ため、スタートアップとしても参入しやすかったという。

 しかし、サービスの面でローコストにしているわけでも、空き枠が出そうな人気の少ない日程で回しているわけでもない。『じゃらん』や『楽天トラベル』、『一休』など多くのライバルとの違いは、サイトの圧倒的な使いやすさや、ポイント還元率、そして高満足度の施設・プランの厳選にある。

 リラックスで紹介している宿は、その他のOTAでも掲載されていることがしばしばある。だが高級旅館・ホテルと直接交渉を行い、厳選した格安のオリジナルプランを作るところで営業力が必須となる。ロコパートナーズの創業メンバーである篠塚代表・塩川一樹取締役は、リクルートの『じゃらん』出身。特に塩川取締役は伊豆・箱根の宿を開拓した責任者で、2000~3000社のクライアントをまとめていた経験をもっている。「ほとんどのケースにおいて門前払いをされてしまうところ、過去の経験があったゆえに実現した」(篠塚代表)面もあるという。

 また空き部屋については、リラックスで募集している日程は、開始時と現在とで差は特にないという。ここには、業界が築き上げたシステムがある。

「共通在庫管理システムのようなものが存在し、あるホテルの10月10日に残10室がある場合は、じゃらん、楽天、一休、リラックス全てに『10室』と表示され、どこかのサイトで売れたら、すべてがいっせいに9室になる。全予約サイト一律で出るため、日程にかかわらず、空室があれば表示される」

 業界の仕組みをシステム・営業から活用した戦略で、現在の流通総額は毎月約20%増の伸び率を見せており、閑散期である1月や2月も過去最高の流通額を記録するなど、好調を維持している。

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群馬県の旅館『草津温泉 奈良屋』。一泊30,000円から。


■旅館業界でのイノベーションのジレンマ

 仕組みはそろっているように見えるが、ここまでの苦労も並大抵ではなかったようだ。リラックスのオープンは一昨年の2013年4月だが、起業自体は2011年9月までさかのぼる。

「スタート時は本当に無力。見せられるモノ・仕組みもできてないのに営業をするが、相手は高級旅館。見えないものを売るのは、相当ハードルが高かった」

 震災の年、リクルートにいた篠塚代表は自身がじゃらんに在籍時に担当していた福島の宿がばたばたとつぶれていくのを目の当たりにする。地域のためのパートナー事業がしたいと、ロコパートナーズを立ち上げた。

「当時のプランはゼロ。本当になし。旅館をクライアントに、まずはウェブ製作やコンサルティングなどの受託から始めていた。アプリをつくるなどのスモールスタート」

 リラックス誕生のきっかけになったのは、篠塚氏がじゃらんにいたときの体験だ。「旅行先を選ぶとき、近くに専門家がいると聞いてくる。多くの人はどこに泊まればいいのか、情報が多すぎてわからない。『その条件ならここがいいよ』と3つまでしぼって出していたら、みんな喜んでくれた」

 じゃらんには25000社もの契約宿泊施設があったが、その1つ1つに細かなプランがあるため、ぼう大な選択肢から選べない人もいた。「選択肢よりも、信頼できるソースでのリコメンドがあればいいと気づいたのが原点。満足度が高いところを審査して掲載する。あとは『リラックスを見て』というひと言だけ。それがつくりたかった世界観」

 大手であるじゃらんや他社では、すでに付き合いのあるクライアント25000社との関係をないがしろにはできない。そのため、リラックスのような選別するシステムをそのままマネすることは難しい。「これこそ、旅館業界でのイノベーションのジレンマ。まさにキュレーションが強みを持つ部分となっている」

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ランキングで人気施設をピックアップ。総合ランキングだけではなく、赤ちゃんも安心の宿やバリアフリーの宿などのBEST5も並ぶ。


■宿泊予約のフレームワークは存在しない

 参入障壁となる理由はもう1つあると篠塚代表。「既存の旅館やホテルを束ねる宿泊予約のシステムはそもそも作れる人がいない。素人には見えない指標が多すぎるため難易度が高く、優秀なエンジニアチームを組成しなければならない。宿の予約システムには、シンプルなフレームワークも存在しない。市場規模が大きいのにできないのはそういうこと」

「この開発も相当きつかった。ホテルや旅館は毎日値段が変わる、部屋でも出方が違う、人数でも変わる。さらに子供や赤ちゃんや部屋ごとのオプションも複雑。システムの受け皿を作るたびに開発工数が伸びていく。そしてオーバーブッキングのリスクもある。裏側はものすごい」

 当時、ロコパートナーズは資本金200万でのスタート。篠塚代表、塩川取締役、デザイナー、エンジニアという4人のスタートアップだ。「現在では想像すらつかないが、100万円程度でできた」リラックスの最初のシステムだったが、道のりは「地道につぶしていっただけ。2年もかかったがようやくピシッとそろった」というものだった。

 新機能1つの追加でも、できあがったら必ず1個を削るような引き算でのプロダクト設計を目指す。「言うのは簡単だが、大変難しい。例えば地図からのエリア検索を入れるにしても、わからない人にとってはグーグルマップですらわからない。それだけで複雑化してしまうので、ウチでは導入していない」

 リラックスが狙うカスタマー年齢層は70代までを幅としている。ITリテラシーを社内に合わせず、ユーザビリティを最も重視している。現在トラフィックの7~8割はスマホだが、実際の予約は家からPCで行われることが多いという。集客の流通経路はFacebook、Twitterが8割で、口コミ+Facebookの運用が主だ。

 また現在のリラックスには、日付での検索しか存在しない。「行きたい日から場所を考えずに探せることが価値観。チェックインからチェックアウトまで旅館でいい。そのままローカルな消費になる。地場の旅館の消費が大事」

「究極的には、クライアントの話は聞かないようにしている。売り上げ増加・部屋数増加が優先されてしまう業界習慣のため、予約確保が何よりも優先されている。だがユーザー的に重要なのは、あくまで上質な旅行体験だ。その結果が、クライアントのためにもなる」

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要望に応じて一流旅館・ホテルの滞在プランを提案する『reluxコンシェルジュ』。無料でのテーラーメイド型の旅行提案サービスも実施。


■世界中の旅行者が、タイやバリではなく、石川や茨城の宿に宿泊するようになればいい

 オープンからちょうど2年たった4月現在、契約施設数は600を超え、会員数は13万人となっている。2015年3月27日には、海外からのインバウンドを見越して海外の大手OTA『エクスペディア』と業務提携。同サイトに掲載中の都心部ラグジュアリーホテルを中心とした数百施設が加わった。

 ユーザーから信頼されるキュレーションを追求した結果、宿側からの掲載希望も後を絶たないが、審査が通過しなければ掲載はされない。「残念なことにお断りすることも多い。ご依頼をいただいて掲載できるのは5%以下。ただ、我々が知らないいい宿はまだまだあるはず。もっと載りたい、というクライアントが出てくるとうれしい」

 問題点もないわけではない。「集まりすぎても予約できない。現状でもそれはまだ起きている。ゴールデンウィークで検索してもでてこない。それを変えたい。リラックスは高い満足度が軸にあるが、抽象的だとターゲットがぼけてしてしまうので、まずは高級路線から進めている。価格と満足度の軸で見て、高級路線の次は、高満足×中価格を狙う」と篠塚代表。そのため、施設を増やすのが現時点では第一だという。国内にある40000の宿泊施設のうち、高級旅館は約1500。中価格帯も含めて、将来は4000~5000の施設を回す算段だ。

 訪日外国人向けのインバウンド対応も準備は万端だ。リラックスはすでに10カ国語に対応しており、海外比率はまだ2~3%だが口コミのみで広げている状態だという。さらに、3月には上海・台湾に支社を建て、現地からの訪日旅行展開を推進している。

「中国人は1億人が海外旅行をしている。圧倒的な母数だが、そのうち日本に来ているのはたった2.5%の250万人。5年後には3億人の中国人が出国すると言われているので、規模感・伸びが違う。そのときには訪日でも受け皿が必要となる。特に高級領域では、想像するようなマナーが悪い方は非常に少ない。一部地方旅館は海外の方はちょっと……という意見もあるが、地方の助けにもつながると思う。中国や韓国、タイなどは、日本と連休のタイミングが異なるなど活用できる部分も大きい」

 訪日の次の展開では、国内航空機やレンタカーなどとの交通連動、遠距離旅行の対応を狙う。そして国内がつながったら、次は海外旅行だ。

「海外にも同様のサービスはあるが、”高級旅館”というものはオンリーワン。将来的には世界中の旅行者が、タイやバリではなく、石川や茨城の宿に宿泊するようになればいい。料理やおもてなしで負けるはずがないので、グローバルチャレンジは必然で勝っていくつもり」

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写真:relux、編集部

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