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アップル、ジョブズの戦略と決別し「FoundationDB」を買収へ

2015年04月15日 08時30分更新

アップルが初めて業務用ソフトウェアを買収し、iCloudやiTunesを強化へ(ReadWrite Japan提供記事)

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最新情報:FoundationDBのGitHubリポジトリは既に非公開になっている)

これはもはやスティーブ・ジョブズのアップルではない。

TechCrunchは、アップルが「FoundationDB」を買収したと報道した。FoundationDBは比較的最近NoSQLに参入した企業で、業務用ソフトウェアをアップルが買収するのはこれが初めてだ。この買収はある面で奇妙にも映るが、別の面、すなわち人材獲得という意味ではうなずける。アップルはトップレベルのウェブおよびインフラ技術者を抱えるのに苦戦してきたためだ。

アップルはウェブやインフラにおいて、グーグルやフェイスブックなど、膨大なデータを必要とする企業に太刀打ちしなければならない。そのため、FoundationDBを買収し、優れたデータ関連技術者を獲得するに至ったのだ。

FoundationDBとは何者か

FoundationDBは「NoSQL, YesACID」というモットーを掲げてきたものの、多くの支持を得るには至らなかった。MongoDB、Cassandra、RedisはDB-Enginesの多角的データベース人気ランキングで上位にランクインしているが、FoundationDBは216位中115位という惨憺たる結果だった。

少なくとも市場牽引力という面で、同社は他のデータベースに追いつくのは難しいと見られていた。

しかし、アップルはデータベースそのもので収益を上げようとはしていない。データベース技術者を活用して、iTunesやiCloud、その他データ処理を中心としたサービスのインフラ構築が同社のねらいだ。確かにアップルはMongoDB、Cassandra、CouchbaseのようなNoSQLデータベースを既に利用している(これは機密情報ではない。検索すると、同社にはこのような各データベース関連の求人が多いことがわかる)。だが、技術を外部から買うことと、自社で培われた技術を利用することは、常に異なるものだ。

アップルが社内に本格的なデータベース専門技術を確保したいとするのは当然ことだ。

データベース事業からの脱却

ここで明確にしておきたいのは、FoundationDBの買収によってアップルがデータベース事業へと進出する可能性はほぼありえないということだ。事実、FoundationDBのコミュニティ・サイトによれば、NoSQLのスタートアップ企業である同社は、既にソフトウェアの配布事業から撤退する構えとみられている。

同社のFAQ(現在ウェブサイトからは削除されている)には以下のように記載されている。「弊社はオープンソース・ソフトウェアとしてFoundationDBの言語バインディングやレイヤを今後ともリリースする予定です」。

アップルの傘下に入った今、その予定が実現する可能性は低そうだ。

実際に、FoundationDBはソフトウェアの販売事業から完全に撤退しているようだ。同社のコミュニティサイトには以下のように記載されている。

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FoundationDBより提供

アップルの新時代

もちろん、FoundationDBがオープンソースとして公開してきたコンポーネントは今後もオープンソースのままとなるだろう。それがオープンソースの利点だ。[3月25日付け最新情報:これは事実ではない。FoundationDBの GitHubリポジトリは現在非公開となっている]

だがこの買収によって本当に得をするのはアップル、そして開発者だ。同社に近しい技術者が筆者に語ったところによると、「アップルの開発にどう影響が出るのか楽しみにしています。CloudKitの強化よりも、新たなサービスが生まれることを期待しています」とのことである。

彼の言うとおり、FoundationDBの買収により、アップル製品を支える技術が改善されるのみならず、開発者サービスも向上することになるだろう。たった一つのスタートアップ企業がアップルのエンジニアリング風土を変えることができるか否かは定かでない。しかしアップルのCEO、ティム・クックはスティーブ・ジョブズとは違う方法で、オープンという方向性を既に示している。

いずれにせよ、これはスタートだ。新たなアップルは、データ・インフラ技術の改善に向けて大きな一歩を踏み出したと言えるだろう。

トップ画像提供:Brett Bolkowy

Matt Asay
[原文]


 

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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
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