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freetelのWindows Phoneへの挑戦は、デル時代のリベンジ:MWC 2015

2015年03月06日 07時30分更新

文● 山口健太 編集●太田 良司

 2015年夏までのWindows Phone 8.1端末の発売を予告し、Mobile World Congress 2015にブースを出展したfreetel。果たして同社がWindows Phoneへの参入を決めた経緯はどのようなものか、増田社長に話をうかがいました。

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↑freetelブランドでスマートフォンを展開するプラスワン・マーケティングCEOの増田薫氏(右)と、海外営業グループ アライアンスグループ 取締役の野村晴彦氏(左)

■4人からスタートしたfreetel

 freetelの創業は2012年。当時の社員数はわずか4人だったといいます。「いまでこそ端末開発に20人、サポートに20人など、60人強まで従業員が増えたものの、当時はマンションの一室でスマホを作っていた」と増田氏は振り返ります。

 そしてようやく2015年、会社の規模も大きくなってきたところで、MWCへの出展を果たします。すでにブースへの来場者や商談の数は目標を大幅に上回り、海外市場におけるfreetel端末の発売が続々と決まっているとのこと。

 freetelブースでは日本独自技術を非常にわかりやすい形でアピールしています。その背景には、日本のスマホメーカーがなかなか進出できない海外市場を、本気で目指すという意図があるというのです。

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↑”SAMURAI PROJECT”として、外国人にわかりやすくアピールするfreetelブース。その背景には日本発のメーカーとして世界を目指したいという狙いがあるという。

 「かつてソニーやパナソニックが蓄積した日本ブランドへの期待が、海外市場にはまだ残っている。だが、このままではあと数年で、中国やアジア企業にすべてを持って行かれてしまう。そうなる前に海外へ進出、やがては世界一を目指したい」(増田氏)と展望を語ります。

■Dell Venue Proは国内発売目前だった?

 プラスワン・マーケティングを起業するまで、デルで営業を担当していたという増田氏は、デル創業者のマイケル・デル氏が持っていた『Dell Streak』を見てスマートフォンの可能性を確信。ソフトバンクからの発売を実現させるなど、徐々にスマートフォンに魅せられていったといいます。

 しかしその後、デルはスマートフォン事業から撤退。増田氏はこの頃から、freetelの構想を温めていたようです。「デルには6万人の従業員がいる。その中には、自社の商品や売上に関心を持たない人さえいる。果たしてそれで良いのか、という想いがあった」。そして増田氏は、自らの手でスマホを売るべく、freetelを立ち上げるに至ります。

 当時から増田氏が注目していたOSが、なんとWindows Phoneだというのです。デルの法人営業の現場において増田氏は、法人顧客からのWindows Phoneの需要の高さを身を持って感じていたとのこと。「最近はiOSやAndroidでも企業内システムとの親和性は高まってきた。しかしWindows Phoneは、全然レベルが違う」と断言します。

 そのきっかけは、やはりデルです。2010年、Windows Phone 7の登場時には、デルもまた最初で最後のWindows Phoneとして『Dell Venue Pro』を発売しました。

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↑知る人ぞ知る、デルによるWindows Phone 7端末『Dell Venue Pro』。いまでこそVenueはタブレットのブランドだが、当時のデルはスマートフォン事業も手がけていた。

 元日本マイクロソフトで、現在はfreetelで海外営業を担当する野村氏は、「日本でVenue Proを発売したいと思っていました。技適を通し、50台程度を法人のお客様に配布したこともあります」と当時を振り返ります。

 Windows Phone 7.5のIS12Tが登場する以前、日本マイクロソフトの樋口泰行社長がDell Venue Proを使っている姿が、何度か目撃されていました。もしかして……と思い、尋ねてみると、「はい、あのVenue Proは私が樋口さんにお渡ししたものです」(増田氏)とのこと。

 やがて国内でもKDDIがIS12Tを発売、単独の機種としては一定の台数を販売したものの、その後が続きませんでした。当時、日本マイクロソフトでスマートフォンやタブレット展開の責任者だったという野村氏も、「樋口社長は、なんとか日本でWindows Phoneを発売できないか、相当に苦労されていた」と振り返ります。やがてその野村氏も、freetelへの合流を決断することに。

 まさにfreetelのWindows Phoneとは、WP7の黎明期から関わっていた元デルの増田氏と元日本マイクロソフトの野村氏という、強力なタッグによって実現したものであることが明らかとなりました。

■Windows Phoneもやがては”松竹梅”の3機種に?

では、freetelのWindows Phone 8.1端末とは、いったいどのようなものになるのでしょうか。

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↑ブースにはKAZAM製の展示機もあったが、ODMが変わる可能性もあり、最終的な仕様ではないとみられる。freetelは”日本品質”をうたっているが、現時点では日本だけでは難しい部分も残っているようだ。

 ライバルとみなされるマウスコンピューターのWindows Phone端末については、「正直、他社の端末はあまり気にしていない。むしろ京セラのプロトタイプも含め、Windows Phoneの話題が盛り上がって助かっている」(増田氏)と語ります。

 今後の端末展開については、「どのようなOSの端末も、3つの価格帯の端末を揃えたい」(増田氏)とのヒントも。そしてMWCのブースに出展した5インチの端末は、中間くらいの価格帯で、松竹梅でいえば”竹”レベルを狙ったものとしています。

 このことから、freetelは”次”のWindows Phone端末として、安価な端末と、高価な端末の2モデルをすでに検討しているのではないかと思われます。

 個人的に気になるのは、増田氏が気に入っていたという、Dell Venue Proです。Windows Phoneとして唯一、縦型にスライドする構造を持ち、QWERTYの物理キーボードを備えていました。

 この点を確認してみたところ、さすがの増田氏も「物理キーボードでカチカチと入力する感触は、個人的には好きだが……」と具体的な商品化については言葉を濁しています。

 今日ではAndroidでさえ絶滅の危機にある、QWERTYキーボード付き端末。しかしビジネス需要の高いWindows Phoneでは、一定の需要があるものと筆者はみています。今後、2台目、3台目とWindows Phoneのヒットが続いていけば、可能性が見えてくるのではないでしょうか。

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