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クリエイターに勇気を与える ドリスピがオリジナルタイトルである意義(後編):召喚★アプリ神

2015年03月22日 18時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第10回はバンダイナムコゲームス『ドリフトスピリッツ』の中西俊之さんと門田研照さんを召喚!
→前編はこちら
→中編はこちら
 

 なお、第11回のゲストはアソビズム『城とドラゴン』の森山尋さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『ドリフトスピリッツ』

召喚★アプリ神
召喚★アプリ神
↑バンダイナムコスタジオ中西俊之氏
召喚★アプリ神
↑バンダイナムコゲームス門田研照氏。

■ まだまだ発展するドリスピと“長く続けていく”という使命

安藤:バンダイナムコさんがヒットさせたドリフトスピリッツ、今後の展開はどんなことをお考えですか?

中西:先ほどお話ししたいろいろな作品とのコラボをはじめ、“洗車”のように車に愛情を注げるシステムを入れたいですね。本当はチーム機能も入れたいんですけど、運営をやりながらだとなかなか開発ができないですね。

安藤:両立は大変ですよね。でも5対5ぐらいのバトルで、友だちと一緒になって顔をつきあわせて遊ぶと、ヒリヒリして面白そうですよね。

中西:頭文字Dの世界に通じるものがあって、自分たちのチームをつくってライバルチームに「今週の土曜日に決闘だ。愛車を用意しとけよ」。そういうノリはお客様も求めているところだと思うので、ぜひ実現させたいです。

門田:また違う遊びになると思いますので、楽しみにしていただければと思います。ドリスピはやりきっていないことがたくさんあるので、1年、2年といわずもっと続けていければと思っています。

中西:ただ、レースの部分にはあまり手を入れたくないんです。ネタが不足してくると、どうしてもほかの要素や新しい操作を入れたくなるんですけど、それをやるとドリスピのよかった点がスポイルされてしまう。お客様の経験を無駄にするような要素は避けたいですし、車のパラメーターをただ単純に上げていく方向にも行きたくないですね。

安藤:インフレというやつですね。

中西:いろんな車を育てたくなるとか、横方向にお客様が意識を振ってくれるようにしていかないと、速さばかり追い求めているうちにすぐに車の速度がプレイできなくなるほど速くなってしまい、ゲームそのものが終わってしまう。なるべく長く遊んでいただくためにも、難しいことを入れたりインフレさせたりするのではなく、新しい体験を入れられるようにと意識しながらやっています。

安藤:ちゃんと車の楽しみ方を分かっておられますよね。レースゲームでガンガンにチューニングすると、現実離れした車になってしまうこともある。そうなると、最初は面白くてもすぐに飽きてしまう。今おっしゃったように車の能力を上げていくのではなく、いろんな車に乗るという楽しみ方なら車好きは納得できますし、そこが車のゲームのファンタジーだと思うんです。車って何を買おうかと考えている時がいちばん楽しいじゃないですか。

門田:楽しいですよね。インプレッサとランエボのどっちにしよう、なんて考えているのがいちばん楽しいですし、車のゲームって常にそれがありますよね。

安藤:「この車に乗りたいな」と妄想して、手に入れたら乗り回して愛着がわいて、しばらくこの車に愛情を注ごうという気持ちになる。ゲームとして2年、3年楽しめるデザインですよね。それが中西さんの中ですでにあることに感心しましたし、ドリスピはとても息の長い作品になりそうですね。

中西:ぜひそうしたいです。「もっと速い車を出してよ」と、パラメーターのインフレを求めるお客様もいらっしゃいますし、売り上げを考えるとインフレさせた方が手っ取り早いんですけど、僕としては長く遊んでいただくのがいちばんの使命だと思っているんです。課金していただいている方にも課金をされずに遊ばれる方にも、お金なり時間なり使っていただいているわけですから。オンラインゲームのいちばんの罪は、終わってしまうともう遊べなくなってしまうことだと思うんです。

安藤:そうなんですよね。

中西:ずっと愛していたものが、いきなり明日から、来月から遊べません、というのは悲しいです。もちろんドリスピにも、いつかそういう時は来るんですけど、なるべく長く遊んでいただけるように努力するのが我々の使命だと思っています。

召喚★アプリ神
↑車のトータルの能力を表す“戦闘力”という単語など、初めてレースゲームを遊ぶ人にも解りやすいように、表現の調整も行なわれた。

■ スピリッツがこもったオリジナルタイトルが未来をつくる

安藤:今日も面白いなあ。大発明のことや、昔からのゲームファンに刺さるお話もありましたし、オリジナルタイトルで勝負したのがやはりいいですよね。リッジが世に出てちょうど20年というのもタイムリーで、それだけ時間が経っていると今の高校生や大学生はリッジを知らない可能性もありますね。

中西:そうですね、知らないと思いますよ。

安藤:スクエニで言うと、『クロノトリガー』が20年なんです。いちばん衝撃的なのは、あと2年経つと『FF VII』が登場して20年になるんです。

門田:そうでしたか、ついこないだのような気がします。

安藤:リッジやFFのような作品は今も脈々と続いていますが、新しいものでもスピリッツを見せていかないといけないと思います。答えのひとつはやっぱりオリジナルですよね。オリジナルタイトルに会社の歴史やスピリッツを入れ込む。ヒットする確率は低くなりますが、当たった時の可能性の広がりや、納得度も高い。ドリスピはそれをやってのけたのがすごくいいし、リッジやクロノアといったそれまでのも歴史が詰め込まれているところも最高です。

中西:ありがとうございます。

安藤:今から10年くらい経つと、ドリスピが好きでバンダイナムコゲームスに入社したいとか、『ミリオンアーサー』や『ケイオスリングス』シリーズが好きでスクエニに入りたいという若者が現れると思うんです。それはオリジナルタイトルだから新しく出てくるのでしょうし、これもゲームの未来をつくることだと思うんです。
  今回もゲーム市場の未来をつくる方法として、文字通り未来研究所が「オリジナルでやっていく」という答え提示して、やってのけたわけですね。

門田:弊社やスクウェアエニックスさん、セガさんもそうだと思うんですけど、レジェンド的なタイトルをずっと続けていかないといけない一方で、ここ10年で新しいものがいくつ出たか、という話にもなりますよね。今、ハイエンド機ではなかなかオリジナルでの勝負ができないですし。

安藤:厳しいですね。僕が1998年にこの業界に入ってからは、オリジナルタイトルに大きなチャンスがめぐってきた時代は2010年にはじまったソーシャルゲームバブルまで一度もなかった気がします。

中西:一方で、スマホには勝負できる土壌がある。そういう意味で、弊社にはドリスピがヒットして喜んでくれている人が多いんですよ。売り上げではなく、リッジレーサーナントカのようなタイトルでもなく、ドリフトスピリッツというタイトルが新しく生まれて、しかもそれが結果を残しましたから。それに関しては本当によかったですし、嬉しく思っています。

安藤:今はあまり実感がないかもしれませんが、後で振り返ると「このゲームはすごかった!」という通過点に絶対になっている。セガさんの『チェインクロニクル』もオリジナルでしたし、コロプラさんの『白猫プロジェクト』もそうでした。ここ5年くらいで出てきたIPは、10年20年続く可能性を秘めていると僕は思うんです。
 今はスマホゲームが全盛期で、ライバルも史上空前の多さの、最高に面白い市場です。だからこそ似たものをつくらずに、IPものはファンサービスとして出しながらも、そうではないものも打ち出していく。そうしないと先ほども言ったように、ずっと先輩たちがつくった作品に、大型IPにご飯を食べさせてもらうことになる。ドリフトスピリッツのいちばんすごいところはそうしなかったところで、オリジナルタイトルの出現が未来をつくる起点になったと思うし、ゲームをちゃんとつくれる人たちが今後スマホでどういうものをつくるべきかという模範にもなったと思います。勇気をいただけるお話でした。本当にありがとうございました!

召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

※この対談は2015年2月に行なわれたものです。

■関連サイト
ドリフトスピリッツ公式サイト

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