2015年02月20日07時00分

通信料金0円、スマホがつながらなくても会話できる AirTalkは常識を破壊しながら成長する

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 通信料金をまったく払っていなくても、Bluetooth 4.0さえあれば、メッセージが送れる。届く。

 新機軸のコミュニケーションアプリ『AirTalk』を開発しているのは目黒のスタートアップ企業オフライン(OFF Line)。会社は2013年10月設立。AirTalkは昨年10月にリリースしたばかりだが、とても大きな可能性を持っている。

 データ通信をオフにしていても、Bluetooth 4.0またはWi-Fiを使って直径200メートル以内の利用者同士が通信できる。つまり近くにいる人とチャットができる。位置情報をもとに、人がそこにいた証として「場所」に投稿を残すこともできる。

 「LINEやカカオトークのように電話帳を使うのではなく、位置情報をもとにチャットができる。チャットアプリとしてはLINEに並ぶか、超えるところまで増やそうというところで頑張っている」(オフライン石塚孝一代表)

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AirTalk。Bluetooth 4.0だけで会話できる

 建物の地下のように電波が通じない場所、あるいは地震や台風など自然災害による電波障害が発生して携帯電話がつながらなくなってしまったときでも、近くにいる人にメッセージを発信できる。災害インフラとしても役立つ仕組みだ。

 投稿したメッセージが表示されるまでの速度は1秒以内、競合『FireChat』よりも高速だ。FireChat開発元のオープンガーデンが投資会社から1080万ドル(およそ12億8000万円)を調達しているわけだから、AirTalkの価値もおのずと分かる。

 実は2年前に原型はできていたと石塚代表。しかしプロジェクトが始まったときはコミュニケーションツールなんて作るつもりはなかったという。どういうことか。

プロトコル設計からアプリを開発

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AirTalk開発中の模様。iPhoneを並べて近距離無線のテストをした

 オフラインの前身は、GH9というコンテンツ制作会社。

 AirTalk開発者の松山剛士CTO、経営戦略を考える盛川英典CSOは、共にGH9出身だ。クライアントの依頼をもとに、たとえばBluetoothを使ったコントローラーで映像を操作するゲームのようなコンテンツを作っていた。

 GH9在籍時の松山氏がBluetoothを使い、何かを作れないかと考えたのは2011年。最新版のBluetooth 4.0がiPhoneに搭載されるという話を知り、最初はBluetoothで相互につながる機械を作れないかと研究を始めた。

 だが、ハードウェアベンチャーはシリコンバレーを見れば山ほどいる。自分たちがやるのはソフトではないかと、路線を改めたのが2012年のことだ。

 当時クライアントからの依頼で開発したスマホアプリが「ディスコ」(DISKO)。携帯電話がつながらないクラブでも使えるコミュニケーションアプリだったが、チャットのようにスムーズに通信させるのはまだ難しかった。

 アップルが提供しているライブラリを普通に使っているだけでは技術的な限界がある。そう考え、松山氏はプロトコルから設計をやりなおすことにした。iPhoneに入っているBluetoothモジュールの動かし方そのものを変えるようにしたのだ。

アップルにハードと勘違いされた完成度

 通常、省電力版Bluetoothでソフトを動かすと「スタンバイモード」と「アドバタイズモード」の2種類を切り替える時間がかかる。しかしデータを「うまくやりくり」(松山氏)させることで、通常から10倍の高速化に成功した。

 ゼロから設計をやりなおしたことでもう1つの強みも作れた。セキュリティーだ。どのスマートフォンがつながっているのかをハードウェアレベルで把握する仕組みのため、「なりすまし」のような詐欺行為が発生しづらい構造になっている。

 原型ができたのは2013年末。2014年初頭にリリースしようと考えていたが、アップルの審査だけで2ヵ月以上が必要だった。

 「最初は『まずはデバイスを送って』と言われた。Bluetoothヘッドセットを作ったものと勘違いされた」と石塚代表は苦笑する。

 おかげで競合に出遅れてはいるが、技術はまったく劣らないと自信を見せる。苦節4年。おかげでBluetooth、Wi-Fi、場合によってはインターネット回線を使って、スムーズにチャットできるアプリが完成した。

 技術は優れているようだが、事業としてはどうか。石塚代表はLINEを意識しているようだが、「LINEは競合ではない」と話す。

LINEとTwitterを位置情報でつなぐ

 LINEは売上の大半をゲーム課金で稼ぐが、AirTalkは利用者の位置にもとづいてコンテンツを配信するプラットホーム型のビジネスモデルを採用していく計画だ。

 「位置ベースの広告サーバーを作ろうと」(石塚代表)

 近くの利用者同士でチャットをしながら、近くのショップやレストランの案内が見られる。想定の1つはライブ会場。ライブ終了後にファン同士でチャットをして、近くの店を見つけて席をとり、ファン同士の交流会ができる。

 「LINEと同じようなチャットツールはすぐに出来る。大事なことは、TwitterみたいなみんながやっているSNSの方向と(LINEのように友だち同士でつながっているツールを)横断的につなげることだ」(石塚代表)

 位置情報を中心としたビジネスモデルゆえ、LINEは敵対関係にない。むしろ近くにいるLINEユーザーを探せるようにするなど、他のサービスと利用者を送り合うような機能も追加していきたいと展望を話す。

 現在オフラインでは700万人の会員を持つ写真投稿サイト「フォト蔵」を抱えており、フォト蔵の利用者がAirTalkを通じて「近くにいる投稿者」を見つけられる機能を備えるようになるという。

 位置情報をもとにしたコミュニケーションは新しい。だが、最も革命的なのはオフラインの目指す将来そのものにある。AirTalkが普及した世界においては、現在のメール、そしてインターネットさえ脇役になるのだ。

メッシュネットワークの世界が訪れる

 人が通信に欲しているのはあくまでコミュニケーション手段だ。コミュニケーションに必要な情報があるときはインターネットから取ってくればいいが、普段のささいなコミュニケーションに世界中とつながる通信網を使う必要はない。

 現在インターネットで発信されている情報のほとんどは、情報が伝わるときの波紋のようなリンクの群れだ。AirTalkは、自分がいる場所を名前どおり「アドレス」として、近くにいる人に情報を伝えられる。スマートフォンからスマートフォンに情報がリレーされればTwitterのようなコミュニケーションも取れるようになる。

 スマートフォン同士がつながって作られる分散型のネットワークはメッシュネットワークと言われている。オフラインはメッシュネットワークに最適化されたコミュニケーションツールを普及させ、時代の主役になろうとしているわけだ。

 メッシュネットワークでは従来のように情報通信の一元管理ができないため、テロリストのような犯罪者によって悪意ある使われ方をされる懸念がある。だが、同じことは善意にも働かせられるのではないかと石塚代表は考えている。

 「例えば旅館にノートが置いてあるが、悪いことを書きこむ人はあまりいない。遠くにいるからこそ文句が書ける。本当に足を運んだ人同士がコミュニティーを作りあげ、悪い方向に進ませない。そちらの方向を目指したい」(石塚代表)

 グーグルのエリック・シュミット会長がダボス会議で「インターネットは消える運命にある」と発言するなど、現在のインターネット(ワールド・ワイド・ウェブ)は過渡期にある。ハイテク大手の意図もあってかモノのインターネットが話題だが、もう1つのムーブメントはオフライン環境で静かに育ちはじめている。


AirTalk
作者:OFF Line
バージョン:0.9.2
対応OS:iOS 7.0 以上
App Store価格:無料
(バージョンと価格、対応OSは記事掲載時のものです)

AppStore アプリをダウンロード

画像:OFF Line

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OFF Line

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