2015年02月10日15時00分

常識を塗り替える精度! 光造形3Dプリンター『ノーベル1.0』最速レビュー

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 XYZプリンティングは2月10日、光造型方式の3Dプリンター『ノーベル 1.0』を発表した。光造型方式の3Dプリンターと言えば、低価格をウリにしている3Dシステムズの『Projet1200』ですら50万円前後、さらに上位のものとなると400万円前後と、現在民生用に広く売られている熱溶解積層方式のものと比べると桁違いの価格だった。

 しかし『ダヴィンチ 1.0』に始まり、従来と同等以上の性能で価格破壊の低価格を実現したXYZプリンティングがまたもややってくれた。なんと、『ノーベル 1.0』は税込み22万9800円と、従来の光造型式3Dプリンターの価格を大きく下回る価格を実現した。もちろん価格だけではない。その性能や使い勝手も素晴らしいものだった。本製品の試作機をお借りできたので、レビューしていく。

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 光造型方式とは、その名の通り光(紫外線)を使って造型物をつくる方式。材料に紫外線硬化樹脂(UVレジン)を使用し、紫外線硬化樹脂で満たされたプールに局所的に紫外線を当て、硬化させた薄い層を何千と重ねることで立体をつくっていく。熱溶解積層方式は、熱で溶かした材料を台の上に薄く積み上げて形をつくっていくが、光造型方式では紫外線硬化樹脂のプールに下から紫外線を当て、台にぶら下げるように造型物を形づくる。

 このため、プールの中から立体が浮き上がってできてくる。上に積み上げるか、下から浮き上がらせるかという違いはあるが、薄い層を積み重ねるという点では熱溶解積層方式と光造型方式は同じである。

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 ただし、家庭用の熱溶解積層方式の3Dプリンターでは、積層ピッチ(1層の厚さ)が最小で0.1ミリだったのに対し、『ノーベル 1.0』では最小で0.025ミリと4倍も細かい。積層ピッチが細かいということは、それだけ細かいディテールをつくり込んだり、物体の曲面が滑らかになる。今まで熱溶解積層方式の3Dプリンターでは等高線のように段々畑になっていた物体も、市販品のような滑らかなものができるというわけだ。

 さっそく『ノーベル 1.0』の細部を見てみよう。本体は280(W)×345(D)×594(H)ミリとデスクトップPCのような大きさだ。このため、デスクの上にもラクラク載せられる。熱溶解積層方式では、小型冷蔵庫ほどの大きさの製品が多かったので、本体のサイズだけをみるとやや小型な印象。

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 本体の構造はいたってシンプル。全面の液晶と操作パネルのほかは、背面のACアダプターとUSBポート(PC/USBメモリー用)と主電源があるだけだ。さらに、オレンジ色のカバーを開けると、UVレジンを入れるプールとUVレジンが入ったボトル、そして材料を引き上げる台(プラットフォーム)といった構造だ。

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 さらに、初期セッティングもシンプルでカンタン。UVレジン用のプール容器をセットし、UVレジンが入ったボトルに充填用のチューブを2本接続し、プラットフォームの水平を調整してレジンのプールの充填作業を行なうだけ。ものの10分ぐらいで全てのセッティングが済んだ。

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 しかも、熱溶解積層方式ではうまくいかないとそれだけで1時間近くかかるプラットフォームの調整がわずか1分足らずでできる。具体的には、4本の固定ネジを一度ゆるめて、ユーティリティーから“水平構成”を選ぶと、プラットフォームが降りてプールの底に密着する。この状態で4本の固定ネジを再度絞めれば完了。熱溶解積層方式ではあれだけ苦労したのに、拍子抜けするほどだ。

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 そして、本体の操作パネルからレジンタンクの充填を選択すると、プールの規定量までレジンタンクが充填され、これでプリント準備が完了する。なお、レジンの入るプールはタンクから自動的に充填されるため、めんどうなレジンの定期的な補充などは必要ない。

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 プリントはUSBメモリーにSTLデータを入れたものを読み込むか、PCとUSB経由で本体接続し、プリントソフトウェアから造型する2つの方式がある。プリントソフトは熱溶解積層方式『ダヴィンチ 1.0』からお馴染みの『xyz ware』。基本的な使い勝手は同じだが、新たに造型可能な範囲に対して読み込んだデータの物体のサイズが大きすぎると、自動的に可能領域にまで縮小する機能が搭載された。

 造型は従来と同じように汎用3Dプリンター用のファイル“STL”形式を読み込める。あとは、サポート材(造型の形を安定させる補助構造材)と積層ピッチを選んで“印刷”ボタンを押せば、後は自動的に造型される。

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 実際に造型したものがこちら。

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 128×80×40ミリサイズのフィギュアの造型を0.025ミリピッチで造型したところ、10時間31秒かかった。同じデータを熱溶解積層方式の『ダヴィンチ 1.0 AiO』で170×100×60ミリサイズで造型した場合は12時間1分。

『ノーベル 1.0』の方が最大造型サイズ128×128×200ミリと小さいため、サイズダウンするしかなく、厳密な比較はできないものの、造型時間は熱溶解積層方式の『ダヴィンチ 1.0 AiO』とだいたい同じぐらいの印象だ。『ダヴィンチ 1.0 AiO』は積層ピッチが0.1ミリという点で比べると、実質の速度は『ダヴィンチ 1.0 AiO』の4倍にものぼる。

 もちろん精度は熱溶解積層方式としては高精度な『ダヴィンチ 1.0 AiO』と比べて段違い。熱溶解積層方式で気になる玉になったゴミや底面の乱れはなく、滑らかな曲面でまるで市販品のフィギュアキットを買ってきたような仕上がりとなった。ただ、造型後にしばらく外出して放置していたため、底面の一部の層が剥がれてクラックになってしまった。完成したら、即座にプラットフォームから剥がすようにするのがオススメだ。

 熱溶解積層方式と比べて圧倒的に簡単で高精度な『ノーベル 1.0』だが、弱点がないわけではない。ひとつはUVレジンの臭いだ。揮発性の溶剤が入っているためか、やや有機溶剤のような臭いが絶えずする。このため部屋の定期的な換気は必須だ。また、造型した物体はプラットフォームから取り外したあとに、エタノールなどアルコールで洗浄する必要がある。

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 そうしないと、UVレジンが付着したままでヌルヌルとする。また、造型後にしばらく使わないときは、プールの材料を捨て、同じくアルコールでプールを洗浄する必要がある。ここら辺は光造型方式ならでの面倒さだ。また、材料の値段も高価。『ノーベル 1.0』の材料ボトル(500g入り×2)の値段は実売価格で1万5800円前後と、熱溶解積層方式と比べると3倍以上。頻繁に使うにはややためらう値段だ。

 とはいえ、このような弱点を加味しても、造型できる物体の精度は素晴らしく、本気でフィギュアなどのホビー用に自分のオリジナル作品をつくりたいという場合は、熱溶解積層方式ではなし得なかった期待通りの精度が出て満足できるだろう。

 今までは高精度に造型したい場合は外部の業者に3Dプリントに出していたが、自分の家で造型できるという点では時間短縮になり、試作と調整を繰り返しながら作品がつくれるというのは非常に魅力的なメリットだ。日用品をちょっと作るという用途では不向きだが、高精度を利用したホビーユースでは爆発的に広がりそうな予感がする。少なくとも筆者は鉄道模型をつくるのにぜひ活用したいと考えている。

ノーベル 1.0
・価格:22万9800円(税込み)
・発売日:3月上旬予定
・サイズ/重量:280(W)×337(D)×590(H)mm/9.6kg(専用レジン500gを含む)
・印刷方式:光造形(SLA)方式
・レーザー:405nmクラス1 UV(紫外線)レーザー
・樹脂材質:光硬化レジン
・積層ピッチ:0.025、0.5、0.1mm
・最大造形サイズ:128(W)×128(D)×200(H)mm
・インターフェース:USB2.0
・対応データフォーマット:STL、XYZ Format
・対応OS:Windows7以上、MacOS X 10.8以上

■関連サイト
XYZプリンティングジャパン

(2月10日16:20追記)専用レジンの単位と本体重量を修正しました。

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