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ネットゲーム遍歴から最新VR論まで。『ソードアート・オンライン』の作者・川原礫氏スペシャル・インタビュー!

2015年02月09日 10時00分更新

「これはゲームであっても遊びではない」
 ネットワークゲームを舞台にした壮大な物語『ソードアート・オンライン(以下SAO)』。小説に始まり、現在はマンガ、アニメ、ゲームと幅広く展開し、読者を魅了し続けています。
 ご本人もディープなゲーマーであるという作者の川原礫(かわはられき)先生に、今回は自身のネットワークゲーム体験から、『Oculus Rift』や『Project Morpheus』の見せる可能性、さらには次回作の構想まで、たっぷり聞いてみました!

SAO川原礫先生インタビュー
↑SAOの最新刊は、『ソードアート・オンライン プログレッシブ3』(電撃文庫)


■ネットワークゲームのきっかけはチャットからだった

――これまでハマったネットワークゲームは?

川原 本気でやったといえるのは、『Ultima Online(以下UO)』、『Ragnarok Online』、ドリームキャスト版の『ファンタシースターオンライン』、その後は『World of Warcraft(以下WoW)』ですね。それからRTS(リアルタイムストラテジー)ですが、『スタークラフト』を相当やりました。

――初めて遊んだネットワークゲームは何でしたか?

川原 『UO』です。ネットゲームを始める前に私がインターネットを始めたのは、チャットをやりたかったからなんですね。『IRC』というチャットのサービスがあり、それがすごく好きで、今もやっています。
 そのIRCのチャットルームで「UOをみんなでやろう」という話になりまして、友人たちで始めました。やっぱり、リアルでの知り合いとやると楽しいんですよね、遠慮がいらないので。なので、最初の「ゲーム内で知り合いをつくる」というハードルなしで始めてしまったので、ハマりましたね。

SAO川原礫先生インタビュー
↑『Ultima Online』。1997年にサービス開始した、MMO RPGの元祖。2014年3月に日本における運営とサポートは終了したが、現在もプレー可能。


■「PKに少し憧れていました」

――その当時だと、ダンジョンに行くとPK(Player Killer)がいるという感じでしたか?

川原 私がやっていた頃は、UOがトラメルとフェルッカという、PKがいない世界といる世界にちょうど分かれる直前だったんですよ。分かれてからはPKがいる世界にはついぞ近づかないようにしていました(笑)。
 まあ、でも当時のUOでは、PKが悪ではなかったんですよね。PKができる世界もあるんだから、PKはしてもいいという。で、PKに殺されれば、殺されるほうが油断していたり、未熟だったりということ。当時はそういう価値観だったんですよね。なので、私の書く物語にも「PKそのものが悪いことじゃない」という価値観がちょっとあります。主人公のキリトくんもほかのプレイヤーに攻撃することには、あまり抵抗はないんですよね。

――SAOのPKギルドの名前って、すごくしゃれていますよね。“ラフィンコフィン(笑う棺桶)”とか。

川原 UOにはむかつくPKもたくさんいたんですけど、カッコイイPKもいたんですよね。「アイテムを奪いたい」じゃなくて、ロールプレイとして悪人をやっている。そういう人もけっこういました。
 私はPKされまくっていたんですけど、PKされると相手に自分の持っているアイテムを全部見られて奪われてしまうんですね。でもロクなものを持ってないと知ると、逆にPKが強い武器をくれたりしましたからね(笑)。そういうカッコイイPKへの憧れもありました。でも、実際にPKをやるとなると多大なデメリットがあったので、それを乗り越えてPKを貫いていくには、すごい技術が必要なんです。そういうテクニックを持っているPKを書きたいなというのもあって、ラフィンコフィンというギルドを出したんです。

――PKは嫌な思い出だけではなくて、そういう印象的なプレイヤーもいたということですね。

川原 はい、憧れもちょっとあるという感じです。



■キリトはハンマー持ちになっていたかもしれない

――ネットゲームでご自分のキャラクターを作るときはどんなキャラクターを?

川原 ほとんど女性だったかな(笑)。最初にプレーしたUOはアメリカのゲームだったので、男キャラがいかにもアメリカーンなマッチョな……ちょっとこれでゲームやりたくないってキャラだったんです。で、多少なりともかわいさを演出できる女性キャラでやることにして、それがずっと続いた感じですね。キャラの名前も持ち越して、メインは、ひとりの女の子キャラでずっとやっていました。

――外見にこだわるほうですか? それとも性能やスペックにこだわる?

川原 どちらかといえば外見ですね。たとえば、『ファイナルファンタジー11』もちょっとやったんですけれど、どんなに強くてもガルカはちょっとやる気にならなかったですね(笑)。私はミスラでした。かわいい!

――SAOの中ではいろいろな武器が出てきて、技もかっこいいのですが、先生もプレーしているときに特定のこだわりがあったのでしょうか。

川原 いや、武器まではこだわりなかったですね。手に入った強いものを使っていました。逆に、こだわりがないから、キリトくんはいかにも主人公らしいロングソードだし、アスナはヒロインらしいレイピアを使っているということですね。こだわりがあったら、キリトはハンマー使いになっていたかもしれない(笑)。

SAO川原礫先生インタビュー
↑もし、キリトがハンマーもちだったら、タイトルも『ハンマーアート・オンライン』に!?


■1日20時間ゲームしていたことも……!

――もともとゲーム好きだったんですか。

川原 小学校のころからファミコンで遊んでいました。スーファミを買い、PSを買い、PS2を買い……。サターン、ドリームキャストもPC-FXも買いました。ゲームは相当やったほうじゃないかなと。

――『スタークラフト』などの韓国などのプロゲーマーの超人的なプレーをご覧になったことはありますか?

川原 ええ、eスポーツというんですよね。韓国の大会の動画はすごく見ましたし、日本代表との対戦も見ました。韓国のプレイヤーは強いんですよね。日本よりブロードバンドの普及が早かったからじゃないかと。子供のときから常時接続だと、そりゃあもう……ネットゲームするよなぁと(笑)。
 私がUOをやっていたころは、まだADSLもなくて、テレホーダイの時代だったので。だから夜11時すぎにゲームを始めて、朝の8時には終了と。それから2時間ほど寝て大学に行くという……(笑)。そんな生活をしていました。でも、そのおかげで完全な廃人にはならなかったのかな。当時ブロードバンドがあったらやばかったです。

――比較的最近のWoWはいかがでしたか。

川原 おそらく、いちばん始めたら帰ってこなかったのはWoWでした。ひどいときは1日20時間ぐらい……。作家デビューしてからもやってました(笑)。
 WoWは自由度というか、コンテンツの量がとんでもない。やることがすごく多くて。私が始めた段階でクエストが1万何千とかあって、もう何をやってもやっても終わらないという。全マップにすら行けませんでした。すごいゲームでしたね。

SAO川原礫先生インタビュー
↑『World of Warcraft』は、『Diablo』や『スタークラフト』などを生み出したゲームメーカー、ブリザードのMMO RPG。ゲームの完成度が高く、登録ユーザーは1000万超。


――1日20時間もやると、キリトじゃないですけれど、ログアウトしてからもどっちの世界にいるかわからないような気分になりませんか?

川原 それはUOの時点でもう体験しましたね。ゲームしたあとで街を歩いていて、どこかでモンスターの鳴き声とか聞こえましたから(笑)。
 あとはアイテム欄を開こうとするんですよ、持ち物を探すのに。でもそれはゲームだけではなくて、たとえばアナログ作業をしていて失敗して“Ctrl”+“Z”キーを探したりするのと同じだと思います。

――習慣というか、日常に溶け込んでいるんですね。

川原 そうですね。早く実際にできるようになってほしいですね。


■VRで広がる世界――SAOも夢じゃない!?

――『Oculus Rift』を体験されたそうですが、いかがでしたか。

川原 すごく未来が広がる、可能性がものすごくあるデバイスだと思いました。私が体験した時点ではDK1だったので視覚と音だけだったのですが、それでももう没入感がものすごくて。ジェットコースターのデモでは加速のGを感じるぐらいでした。まあ、惜しむらくは画素がまだ粗くて、目の近くまでくると画素が荒くてドットが見えるんですよね。今の倍ぐらいいけば、結構いい感じじゃないかな。

――DK2では、モーショントラッキングが付いていて、自動的に体の位置で反応してくれます。

川原 あとはデータグローブとロコモーション・インターフェースさえあれば、SAOができると思いましたね。ただ疲れるでしょうけど。
 ソニーの『Project Morpheus』はコントローラーを振れば、剣が振れるんですかね。それができれば、かなりSAOっぽいものは遊べるんじゃないかな。

SAO川原礫先生インタビュー
↑『Oculus Rift』。頭部に装着して使う、ヘッドマウントディスプレー。昨年(2014年)11月に開催されたイベント『週アスLIVE』では、SAOの画像を使ったデモも行なわれた。


――日本は部屋が狭いんで、そこが一番の問題かもしれません(笑)。

川原 PlayStationなら、六畳間あたりでも対応してくれるんじゃないかと期待してます。あとは、歩けるセンサーや走れるセンサーを作っていただいて、そのうえで頑張って動く。
 Oculusは、PCだけではなく、ぜひコンシューマーと契約してほしいですね。なんかサムスンと契約してスマホと……というのも聞いたので、ちょっと期待しているんです。それができれば、つけたまま歩いたりできるかも。でも危ないですが(笑)。
 Oculusがあれば、『Ingress』のスゴい版ができそうですよね(笑)。地形は現実だけど見た目がまったく違う世界で走り回って……。まあ、交通事故にあいそうですが。でも、ヘッドギアが半透明になれば……なんとかならないことはないのかな。

――広場とか決まった場所ならできるかもしれないですね。

川原 たとえば東京ドームを貸し切って、そこでカラダを動かして遊ぶのなら楽しそうです。床にグリッドを書いてちゃんとマーキングをすれば、なんかファンタジックな地形をそこに表示できるかな?

SAO川原礫先生インタビュー
↑『Ingress』は、Googleが開発したリアル陣取りゲーム。スマホのGPS機能を使い、2つの勢力に分かれ“ポータル”と呼ばれるランドマークを取り合う。


――アメリカのアニメExpoでもOclulus Riftを体験されたとか。

川原 はい、アニメExpoでは2種類のデモがあって、ひとつはボスモンスターと戦っているアスナを見守るデモ。もうひとつは昼寝しているアスナを見守る(笑)。アスナ添い寝版の方は、皆さん触ろうとしてましたね。触れないんですけど。

――そっちの方向に走りがちという。

川原 それはもう。Morpheusの『サマーレッスン』を見たら、「やっぱりこっちの方向だよね」って思いました(笑)。


■熱くなるのでギャンブルは絶対やらない

――ゲームでは熱くなるタイプですか?

川原 ゲームというか、ガチャはダメですね。ガチャは結構発狂するタイプです。SAOのスマホ用ゲーム『エンドワールド』で10万円以上課金したので、今度の『コード・レジスタ』は課金しません!! 完全に無課金を貫こうと……。
 完全にもうダメな思考なんですよ。パチンコで負けてATMで借金する思考です。なので、私はリアルのギャンブルは絶対やらないと心に誓っています。でも、お台場にカジノができたら1回は行ってみたいですけどね(笑)、仕事で。

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↑2014年12月からiOS/Android版でスタートしたスマホ用ゲーム『ソードアート・オンライン コード・レジスタ』。キリトやアスナをはじめ、SAOでおなじみのキャラクターも多数登場するRPG。


――仕事ですか?

川原 はい、取材です(笑)。バカラのカードを絞っている人を1回リアルで見てみたいです、映画などで、この世の終わりかというような勢いで、「ヒエエエエエ」ってやってるじゃないですか。あれを生で見てみたいです。で、ギャンブルものを書きたいです。


■締切が熱すぎてゲームの時間がなくなった

――のめりこんで熱くなったあとはどうなりますか?

川原 最近はあまり熱くなることが少ないんですよね。なぜなら、もう小説の締切が常にアッツアツなんで、それ以外のものに熱くなれないんですよね。
 最近まともにやったゲームは『ソードアート・オンライン ホロウ・フラグメント』ぐらいですかね。仕事半分というのもありますし。

――『ホロウ・フラグメント』はどのぐらいやったんですか。

川原 150時間ぐらいですね。

――かなりやってますね。

川原 でも、全然ストーリーは進んでないんです。“秘匿領域”という、ひたすら潜るだけのダンジョンがあるんですが、それを100階まで行くぞというのをやってまして、毎回90階台で死んでます(笑)。
 なので、まだアインクラッドの攻略が80層ぐらいなのに、そろそろレベルが200にいっちゃいそう。安全マージンとりすぎぐらいの状態になっていて、階層ボスが3分ぐらいで倒せるという、よろしくない状態になってます(笑)。
 あと『ソードアート・オンライン -ロスト・ソング-』が出たら、それはちゃんとやりたいですね。私は空を飛べるゲームがすごく好きなので、バンダイナムコゲームスの開発プロデューサー二見鷹介さんに「飛びたいです!」と昔からずーっと言っていて。
 空を飛べるMMO RPGって結構あるんですけれど、完全に移動手段ってだけで、アクション性がまったくない飛行が多いんですが、『ロスト・ソング』は飛びながら戦えるらしいので、それが楽しみです。

SAO川原礫先生インタビュー
↑『ソードアート・オンライン −ロスト・ソング−』。SAOのコンシューマー用ゲームの第3弾。2015年3月26日発売予定、PS3/PS Vita。


■佳境のSAOを着地させたい

――今後の刊行予定はいかがてすか?

川原 2月に『絶対ナル孤独者≪アイソレータ≫ 』の2巻が決定で、そのあとはどうしようかなと。

――3シリーズを順番に執筆していく感じですか?

川原 いや、『絶対ナル孤独者≪アイソレータ≫ 』はしばらく年に1回になりそうです。『アクセル・ワールド』も『ソードアート・オンライン』も佳境なので、この2つを早いところ、着地させるところに着地させたいです。

――そういえば『アクセル・ワールド』では声優もやっていらっしゃいましたね。またチャレンジされることはあるのでしょうか。

川原 いやもう『アクセル・ワールド』で力尽きました……。(笑) 一応、後々声優さんものラノベを書くときのためにやってみました。やってみてわかるのは声優さんの技術はスゴいなっていうことです。コンテを撮影した絵が出てきて、そこにピタッと合わせるのがスゴいなと。

――じゃ、今後は声優モノラノベも予定されているんでしょうか。

川原 遠い遠い遠い未来に……できれば書きたいなと。

――ギャンブルモノも?

川原 遠い未来に書きたいなと。(笑)

SAO川原礫先生インタビュー
↑川原礫先生。声優モノラノベ、楽しみにしています!


©川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
©BANDAI NAMCO Game Inc.


 

川原先生最新刊『絶対ナル孤独者≪アイソレータ≫2 -発火者 The Igniter-』が、2月10日に電撃文庫より発売!

SAO川原礫先生インタビュー

あらすじ:謎の地球外有機生命体に寄生された少年・空木ミノル。彼は自身の能力≪孤独≫を武器に、人類の敵≪ルビーアイ≫にからくも勝利する。次なる敵は、最も危険で狡猾な相手、≪酸素≫を操る≪発火者(イグナイター)≫。絶対的な≪孤独≫を抱く少年による、闘争の日々が幕を開ける――!

 


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