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乖離性MA:イラストに声優、音楽…岩野Pのこだわりとは?(中編):召喚★アプリ神

2015年03月01日 14時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第8回は『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー岩野弘明さんを召喚!(前編中編後編

 なお、第9回のゲストはサムザップの『戦国炎舞 -KIZNA-』の代表取締役 桑田栄顕さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『乖離性ミリオンアーサー』

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス岩野弘明氏。

■乖離性におけるプロデュースの妙味-キャラクター編-

安藤:岩野の特徴として、キャラクターの描き方のクオリティーが非常に高いですよね。乖離性も本当によくキャラクターが立っている。今回キャラクター面で気をつけたことや、狙ったことはありますか?

岩野:乖離性は4人のアーサーさんが1組になって一本のストーリーを進みます。シナリオをお願いしている鎌池和馬さんが苦労された部分でもあるんですが、突っ込み役やボケ役といった4人の立ち位置をはっきりさせるためにキャラクター性を強く出さないといけないなと。

安藤:かなりメリハリをつけないといけないよね。

岩野:イラストレーターさんとも相談して、絵的にも役割が直感的にわかるようにしたんです。盗賊とか歌姫とかカワイイ系のキャラになると、こうしてほしいという僕のリクエストも混じりましたけど(笑)。

安藤:岩野の好みと思い入れが、バリバリに入っていますもんね。盗賊なんか特に。金髪ショートカット好きだよね(笑)。

岩野:シナリオとイラストがうまく重なって、4人がしっかり生きた感じです。

安藤:ここはうまくいったぞ、という部分があったら教えて欲しいですね。

岩野:完全に個人的な好みなんですけど、盗賊アーサーはかなり思い入れがありまして。以前から好きだったイラストレーターの牛木義隆さんにお願いして、1発目に上がってきたのがすごくよかったんです。3本の触覚とかは牛木さんのアイデアなんですよ。あとは盗賊という役割をもっているので、ダークな面と女の子らしいキャピキャピしたところを両立させるところでちょっと悩みましたね。

安藤:泥棒ですからね。

岩野:最初は身軽な服装で、シュッとした線の細い感じだったんですよ。もうひとアクセント欲しいなというところで、シッポをつけていただいて今のバランスがあるんです。

安藤:盗賊のシッポのバランスは、岩野のキャラクター造形の真骨頂だと思うね。ニムエにアホ毛がついていたりするのもそうですよね。

岩野:一方で歌姫はすごくドレッシーじゃないですか。最初はもっとその度合いが強かったんですけど、refeiaさんに「ちょいエロ感を出したい」というお話をしたら、前開きのあの衣装が出てきたんです。さすがですよね。

安藤:イラストレーターの先生方は、いつも無茶なオーダーに応えてくれますよね。

岩野:男子キャラもいろいろ応えていただいて、富豪はかなり生みの苦しみがあったんですよ。

安藤:富豪は女子受けがよさそうだよね。スクエニ全体のキャラを見ても、久々にインテリっぽいキャラクターが立ったなと思います。ああいうキャラクターって色気を出すのが難しいですよね。

岩野:色気もあるしさめた部分もあるし、一方で熱い部分もあって、富豪という役割からにじみ出させるのにすごく苦労しました。実は富豪は最初スーツだったんです。ビジネスマンだけど戦う姿勢や、デザイン的な厚みも欲しいというところで、BUNBUNさんのアイディアで金の甲冑を取り入れました。それをよりゴージャスにしていくところのせめぎ合いで結構時間がかかりましたが、すごくいいものができあがりました。

安藤:ミリオンアーサーシリーズの特徴として、キャラクターをいろんな角度から立ていくことを意識的にやっているんです。拡散性でやった4コマ漫画とか、実写で実在性をやるといった動きは今後も広げていきたい。いつか自分の手がけた作品で”ジバニャン”に勝ちたいんです。2014年における国内の大ヒット作、”アナと雪の女王”と”妖怪ウォッチ”の、オラフとジバニャンに勝つ。

 スマホゲームの業界はどうしても売り上げ的な規模が注目されがちだし、関係者も閉じたフィールドで盛り上がっている。でも一般のお客様は、それとは全く関係ないところにいる。そして気づけばみんなが”ようかい体操”を踊っている。これぞエンターテインメントですよね。ミリオンアーサーもまだニムエがキャラとしてやや立った位ですが、僕はどこかでできると思っているんです。エヴァンゲリオンなどマニアックな立ち位置から国民的なものになったものもありますしね。可能性があるなら広げていかないといけないし、スマートフォンゲームを本物のエンタメへと突破させるのはジバニャンのようなキャラクターだと思うんです。

岩野:キャラクターはコンテンツをつくるうえで非常に重要だと前から思っていて、そういう意味ではルパン三世だったりドラえもんだったりジバニャンだったり、みんなが知っていて愛されるものを最終目標としてやっていかなければいけないとと思います。今いるキャラもそうだし、新しく出すキャラもそういう位置にもっていきたいなと思っています。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑4人全員が本作の主人公だ。魔法役、回復役などデッキ構築の面白さがあり、自由に入 れ替えて戦える。

■乖離性におけるプロデュースの妙味-声優編-

安藤:今回もCVの方々は豪華だけど、声優のキャスティングには狙いやコンセプトはありましたか?

岩野:4人のアーサーそれぞれのキャラクター性がまずあるわけですが、声優さんをキャスティングをする際にイメージとなる別のキャラクターもいるわけです。うまいこと声優さんの魅力を引き出しつつも、両者のイメージが重なりすぎないようにするのが非常に難しかったですね。

安藤:確かに、そうかもね。

岩野:たとえば乖離性にスカアハという女教官がいますよね。そのもとになっているのは、僕の好きな『化物語』の押野忍というキャラなんです。スカアハとは年齢も違うんですけど、坂本真綾さんがロリキャラを演じる時の”いいんだけど違和感がある感じ”、あれがすごくいいなと思っていたんです。あの感じが女教官に入るとどうなるのかなと、収録しながら僕も楽しみつつやっていました。結果出てきたものは、すごくいいものでしたね。

安藤:楽しみと実益を兼ねている(笑)。坂本真綾さんは『ファイナルファンタジー XIII』の主人公・ライトニングの声も演じられているし、スカアハと比べると演技の幅が広くて面白い。実力がある声優さんの本当のすごさを出すためには、「あなたが過去演じたあの作品のあれっぽいやつ」というオーダーがいちばんしょうもない。どうやったらその人の意外なところが引き出せるかを意識しながらやったのがスカアハだね。

岩野:そうですね。

安藤:ベースとなるものもきちんと意識していくところがミリオンアーサーのいいところだよね。鎌池和馬さんが関わっているので『とある科学の超電磁砲』や『とある魔術の禁書目録(以下、インデックス)』の雰囲気も出していきたいと思うし、インデックスの主要キャラではアクセラレーターを演じた岡本信彦さんとようやくお仕事ができましたよね。

岩野:それでいうと阿部さんもです。インデックスの主役・上条当麻を演じた阿部敦さんと岡本さんはやっぱりセットで登場していただきたかったので、拡散性の時はあえてお願いせずに、次できっと出そうと。しかも乖離性では同じチームで協力しあう関係であり、同時にその中でお互いが切磋琢磨するライバルの関係でもあるんですね。

安藤:ベースを活かしながら、それをどんどん発展させていったわけですね。

岩野:阿部さんの傭兵キャラはインデックスの当麻に近いものがあったので、インデックスが好きなお客様には「あれって当麻ぽいよな」と思うと思います。でも岡本さんの演じる富豪キャラは、全然アクセラレータとは違うんですよ。

安藤:アクセラレータはイカれているからね。でもキャラとしてはすごく立っているし、アクセラレーターを主人公にしたいという声もたくさん聞きますよね。

岩野:でもそれをそのままやってしまうと芸がないので、富豪のような立ち位置のキャラに岡本さんが声を当てたらどうなるんだろうと。いろいろ想像しつつも、実際にやっていただいて初めて腑に落ちる落ちる部分もありました。

安藤:主人公とか、男前でさわやかな好青年を演じながらも、どこか狂気の部分を持っているところが岡本さんの演技の魅力だと思うけど、富豪に据えることで、実は内面に隠し持った何かがあるんじゃないかとか、別の顔があるんじゃないかとか思わせられますよね。

岩野:そうなんです。岡本さんの富豪は冷静というか落ち着いた感じの声色なんですけど、そのベースがありながらも意外なリアクションを取ったり、おっちょこちょいなところがギャップになっているんです。男子キャラなのにかわいいと思ったり、普段はクールでかっこいいけどかわいい印象になるのが、岡本さんのいいところですね。それが合わさって、富豪がすごくいいキャラクターになっていると思います。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑シナリオは前作と同様に『とある魔術の禁書目録』などの鎌池和馬氏。独特の世界観の中で分厚い物語が展開。

■乖離性におけるプロデュースの妙味-音楽編-

安藤:乖離性では音楽も仕掛けていますよね。前作のヒャダインさんに加えて伊藤賢治(以下、イトケン)さんが入って、主題歌を水樹奈々ちゃんが歌うという豪華な顔ぶれです。

岩野:乖離性へとパワーアップするにあたって、各ジャンルのナンバーワンを持ってきたかったんです。ヒャダインさんは拡散性の曲をつくられていて評判が良い。一方ゲームのバトル音楽といえばイトケンさんがいる。実は僕が初めて携わったゲームの制作でイトケンさんとお話させていただく機会があって、「僕のつくるゲームでいつか戦闘の曲を書いてください」とお願いしたことがあったんです。

安藤:いいですね、それが実現したんだね。イトケンさんにも昔、奈々ちゃんに曲を書いたけどお蔵入りになってしまったエピソードがありましたね。

岩野:そのお話もあったので、今回リベンジしましょうと。イトケンさんとヒャダインさんも、以前他のメディアで対談されていて、2人が組んだら面白そうだと思っていました。

安藤:ヒャダインさんも、イトケンさんから影響を受けているって公言していますものね。できあがった曲を聴くと、お互いになじんでいて全く違和感がない。拡散性の時よりもバトルシーンがドラマチックになった。

岩野:ヒャダインさんは新しい要素ガンガン入れていく人なので、拡散性っぽさを残しながらも前作とは全然違う曲なんです。それがイトケンさんの曲となじむところがまたすごいなと。

安藤:岩野もヒャダインさんも若いけど、イトケンさんや宮路さんのような先輩方とすんなりなじんでしまう。そこがすごくいいし、いろんな時代のパワーが融合した最先端のゲームなんだなと思います。

岩野:経験豊富な方はグッとくる“味”を出せますし、若い世代は今っぽい切り口で切り込んでいく。乖離性では、そこがうまく融合してくれた気がします。

※このインタビューは2014年12月に収録したものです。

乖離性ミリオンアーサー:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

■関連サイト
乖離性ミリオンアーサー 公式サイト
スクウェア・エニックスマーケット

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