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“ついに来た”ソフトバンク合併でワイモバイルの運命は?(石川温氏寄稿)

2015年01月23日 15時31分更新

 ソフトバンクは23日、傘下のソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルを合併すると発表した。継続会社はソフトバンクモバイルとなる。なお、ワイモバイルのブランド並びに店舗は継続する見込みだ。

 

ソフトバンク

 

 ソフトバンクモバイルの孫社長は会長となり、社長には現在、副社長の宮内謙氏が就任する。
 このリリースを受け取ったとき、「ついに来たか」というのが率直な感想だ。
 ソフトバンクは、経営不振に陥ったウィルコムを救済したのち、iPhoneのための周波数が欲しくて、2012年にイー・モバイルを買収。日本国内で着々と周波数をかき集めてきた。
 高速通信サービスを安定的に提供するには、周波数帯をできるだけ確保するのが望ましい。孫社長としては、新たな周波数割り当てがあった際には、ソフトバンクとイー・モバイルという2つの会社を持っておくことで、それぞれの会社として、免許を申請して、周波数を確保しようとしていた。
 そうすることで、NTTドコモやKDDIに比べて圧倒的に有利にネットワーク戦略を進められると思っていたのだろう。
 そのため、イー・モバイルがソフトバンク傘下であると、総務省や世間からの風当たりが強いため、2014年にはあえて、グループ会社のヤフーにイー・モバイルを売却するという“裏技”も使おうとしていた。
 しかし、2014年7月に事態は大きく一変する。
 総務省が“周波数割り当ての際には、グループ会社は一体として見なす”という判断をしたことから、イー・モバイルがソフトバンク傘下にあろうとヤフーにあろうとどちらでも“グループ”として判断されるため、別会社という扱いにならなくなったのだ。
 結果、イー・モバイルはヤフーに売却されることなく、ワイモバイルという会社としてスタートすることになった。
 「もはや、別会社にしておく意味はない」と孫社長は判断したのだろう。今回、ソフトバンクモバイルを継続会社として、BB、テレコム、ワイモバイルを一緒にするという決断をしたようだ。


 実はこのタイミングでワイモバイルを合併してしまうというのには技術的、政策的にも大きな意味を持つ。
 LTE-Advanced技術のひとつである“キャリアアグリゲーション”は周波数帯を束ねて高速化、安定化を図るものであるが、別会社間で周波数帯を束ねるということは今のところ認められていない。
 現在、ソフトバンクのiPhoneは、ソフトバンクの2GHz帯とワイモバイルの1.7GHzをどちらかを使っているが、キャリアアグリゲーションとして束ねて使うということはできていない。これらでキャリアアグリゲーションをやろうと思ったら、まずは“会社を束ねる”ところから始める必要があるのだ。
 ソフトバンクとしては本来、プラチナバンドである900MHz帯を持っていることもあり、2GHz帯と900MHz帯でやれればいいのだが、900MHz帯のLTE化が大幅に遅れている。現在、TD-LTEでキャリアアグリゲーションができているが、iPhoneでは使えないという状況にある。
 主力であるiPhoneでCAを提供するには、ワイモバイルを一緒にしておいた方がいいという判断があったのだろう。

 今回の4社合併に関するリリースでは“ワイモバイルはブランド、店舗とも継続する”とあるが、実際のところ“どこまで継続するのか”というのは判断つきにくい。
 ソフトバンクとして“ソフトバンクモバイルはiPhone、ワイモバイルはAndorid”という棲み分けをするのであればわかりやすいが、店舗やプロモーションなどが全く別になっている必要はないだろう。
 将来的にはワイモバイルショップはソフトバンクショップとなり、そのなかでワイモバイルの製品やサービスがひっそり売られるという可能性もあるだろう。
 別会社であれば“iPhoneを扱うプレミアムなソフトバンクモバイル”と“格安スマホに対抗するLCCなワイモバイル”という棲み分けもできたであろう。しかし、会社が合併されるのであれば、むしろ、ワイモバイルの低ARPUユーザーを、ソフトバンクモバイルの高ARPUユーザーにしていったほうが経営的にもメリットが大きいはずだ。いずれ、ワイモバイルユーザーに対して、iPhoneへの移行を促すプロモーションが行われてもおかしくない。
 
 かつてのイー・モバイルから周波数と契約者をうまく吸い上げることができたソフトバンク。もしかすると、ワイモバイルというブランドも早晩、姿を消す可能性もありそうだ。

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