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GALAXYの発売はソフトバンクとサムスンの“手打ち”なのか(石川温氏寄稿)

2014年12月08日 18時00分更新

 ソフトバンクモバイルとサムスン電子は、2014年12月19日より、7インチのタブレット『GALAXY Tab4』を発売する。
 GALAXY Tab4は、ソフトバンクとしては初のGALAXYブランド商品となる。また、ソフトバンクとしての初の一般向けAndroidタブレットの取り扱いにもなる(法人向けとしてはファーウェイ・MediaPadを提供済み)。

GALAXY Tab4

 長らく業界を見ていた筆者とすれば、今回のソフトバンクによるGALAXYブランドの取り扱いは“歴史的な和解”に感じる。
 プレスリリースには“ソフトバンク初のGALAXY”という表記があるのだが、だからといって“サムスン電子がソフトバンクに初参入”というわけではない。かつて、サムスン電子はボーダフォンのころから、フィーチャーフォンを提供し続けており、今回のGALAXY Tab4は“ソフトバンクへの再参入”という扱いになる。
 サムスン電子は日本での携帯電話事業を手がける上で、そのきっかけを当時のボーダフォンに求めた。薄型のフィーチャーフォンや、ボーダフォンがソフトバンクに買収されてからはタッチパネル式のデバイスとなる『OMNIA』などを続々と投入。サムスン電子としては日本におけるブランド認知などのキャンペーンも手がけていたが、泣かず飛ばすの状況であった。

2008年iPhoneの登場

 なかなかヒットに恵まれない中、2008年6月に登場したのがアップル・iPhone 3Gだった。当時、ホワイトプランという低料金プランで他社を攻めていたソフトバンクにとってiPhoneは“独占的に扱える魅力的な商品”ということで、次第にiPhoneばかりに注力して、販売戦略を練るようになる。結果、『OMNIA』は新製品を出してもさらに売れず、サムスン電子は窮地に追い込まれることになったのだった。アップルばかりを売りまくるソフトバンクに対し、サムスン電子は次第に不信感を募らせるようになる。

2010年ドコモからGALAXY Sを発売

 しかし、2010年、サムスン電子に救いの手をさしのべたのが、NTTドコモだった。当時、スマートフォンブームの到来を全く予想できておらず、国内メーカーにフィーチャーフォンばかりを作らせていたNTTドコモは、iPhoneのヒットによって急遽、スマートフォンの調達をせざるを得ない状況になった。そこで、グローバルでGALAXYを手がけていたサムスン電子に『GALAXY S』をNTTドコモから発売できるように話をまとめたのだった。
 サムスン電子にとっても、ソフトバンク向けモデルで苦汁をなめ続けており、活路を見いだそうと必死であったため、NTTドコモに救いを求めたのだった。
 結果として“iPhoneを買うためにソフトバンクにMNPしたくはないNTTドコモユーザー”が、GALAXY Sに群がり、サムスン電子のGALAXYブランドは、日本でもようやく認知されるようになったのだ。

これからの両社の関係は?

 サムスン電子関係者の多くは、iPhoneの一件もあり、これまでの数年間はソフトバンクのことはあまり良い印象は持っていなかった。
 実際に「ソフトバンクからGALAXYは出るのか?」と関係者に聞くと「私の目が黒いうちはあり得ない」(サムスン電子関係者)というほどであった。

 しかし、いまになって、両社がGALAXY Tab4を発売するに至ったということは、もしかすると両社の間で“手打ち”があったのかも知れない。

 実際のところ、数年前に比べて市場の環境が大きく変わったことが、両社の考えを改めさせたのは間違いないだろう。
 iPhoneをKDDIに続き、NTTドコモが発売したことで、“iPhoneを欲しいならソフトバンク”という選び方が通用しなくなった。
 ソフトバンクは、ソニー・Xperia Z3を扱い始めたように、他社と主力のラインナップを揃えることで、何とか顧客の流出を抑えようと必死の状況だ。

 一方のサムスン電子側も、NTTドコモがiPhoneを扱い始めたことで、GALAXYシリーズの売れ行きは思ったほど伸びていない。KDDIでもフラグシップモデルを揃えたが、やはり目標に及ばないことから、3キャリア目であるソフトバンクへの展開に踏み切ったのだろう。今回は、いずれ、GALAXYのハイエンドスマホを納入する準備と言えそうだ。
 サムスン電子は、世界的に厳しい状況が続いていると言われている。場合によっては、今回のソフトバンクへの納入を皮切りに、MVNO向けの格安GALAXYを販売するという可能性が出てきそうだ。
 サムスン電子は、日本市場においてテレビなどの一般向け家電製品の流通が不得意であったため、なかなか、SIMフリー市場向け製品の投入が難しい状況であった。しかし、今年になって、家電量販店内にGALAXYブランドを訴求するスペースを積極的に展開するなど、自社で家電量販店で販売できるノウハウを蓄積しつつある。
 MVNO市場では、富士通やシャープといった日本メーカーでさえ、続々と本格展開をしているなか、サムスン電子としても、参入は“既定路線”になっていると言える。

 数年前まで“ドコモだけのGALAXY”であったが、NTTドコモのiPhone投入によって、サムスン電子としても、過去の遺恨など関係なく、なりふり構っていられない状況になっている。
 今回のGALAXY Tab4によって、サムスン電子のマルチキャリア展開はますます加速していくだろう。

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