2014年12月05日20時00分

ワンセグ全番組録画機でテレビ視聴が変わる ガラポン保田歩代表インタビュー

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■テレビ視聴スタイルを変化させる録画機
『ガラポンTV』は、8チャンネルぶんのワンセグ放送を24時間×2週間まるごと録画できるレコーダー。録画番組はスマホやタブレット、PCからネット経由で視聴が可能。2010年9月発売の“初号機”以来、着実に進化を続けてきた。今年8月に発売された“四号機”は、“CEATECAWARD 2014”でライフスタイル・イノベーション部門の準グランプリを獲得している。ガラポンTVの開発背景には、どのような意図があったのか?

 週刊アスキー12/16号 No1007(12月2日発売)掲載の創刊1000号記念連続対談企画“インサイド・スタートアップ”、第8回はワンセグ全番組録画機を開発、発売するガラポンの保田歩代表取締役に、週刊アスキー伊藤有編集長代理が直撃。

ガラポン

↑最新モデル『ガラポンTV四号機』。CDケースを4つ重ねたくらいのサイズの筐体に、8つのワンセグチューナーと500GBのHDDを内蔵。直販価格は3万9420円。内蔵HDDなしモデルもあり、直販価格2万6784円。

■テレビ視聴の制約を取り払って、検索とソーシャルの機能を加えた製品を目指した

伊藤 “CEATEC AWARD 2014”のライフスタイル・イノベーション部門での準グランプリ、おめでとうございます。CEATECの賞をとんがったスタートアップ企業が獲得するというのは、これまでになかったことですよね。時代の変わり目なのかもしれませんね。

保田 ありがとうございます。我々もそう感じたんですよ。

伊藤 今回の受賞は『ガラポンTV四号機』が対象ですが、最初の製品である『ガラポンTV初号機』の発売は2010年9月ですよね。ここに至るまでの経緯を教えてください。

保田 私の前職はヤフーでの新規事業企画で、動画サービスやテレビ向けの検索サービスなどの立ち上げに携わりました。動画サービスは、吉本興業さんと組んでウェブオリジナルの動画を制作したんですが、そのなかで痛感させられたのは「テレビ番組はやっぱりおもしろいし、ウェブは太刀打ちできないな」ということだったんです。

伊藤 テレビ番組のコンテンツとしての強さを再確認させられた。それ以前は、テレビ番組をよく観ていたんですか?

保田 いや、ほとんど観ていなかったんです。だから、よけいにインパクトがありました。テレビは、スポーツ番組とか報道番組とか、ウェブにはないものがつくれているじゃないですか。「これは追いつけないな」と思いましたね。

伊藤 なるほど。テレビ向けの検索サービスというのは?

保田 シャープや東芝、ソニーといった国内大手メーカーのテレビで使う“ヤフー検索”を開発していました。スマートテレビのはしりですよね。ところが、つくってはみたものの、誰も使ってくれないんです。

伊藤 どうしてですか?

保田 画面の半分で番組を映し、もう半分で検索をするんですが、操作性が悪いんです。リモコンで文字を入力するのが、おそろしく効率が悪い。

伊藤 うん、そうでしょうね。

保田 結局、テレビ用検索で出てくる情報は、PCやケータイで検索した結果と変わらないんです。だとしたらPCやケータイでやるだろう、と。テレビ画面でやる意味があるとすれば、たとえばドラマの過去放映分や俳優別の出演番組など、いま観ている番組に関連した情報が出てこないといけない。しかも、そのままネット上に飛んで、すぐにそういった映像を観られるようにする必要もあります。

伊藤 ユーザー視点で「便利だ」というのは、そちらですね。

保田 ところが、テレビメーカーにはその発想がないんです。テレビ局には、インターネット上にテレビ番組をのせましょうと持ちかけたんですが、「それはできません」と。

伊藤 テレビ局としては、視聴率をベースにした自分たちのビジネスモデルが壊れますからね。

保田 そうなんです。テレビ番組は絶対におもしろい、ユーザーとしては過去番組を検索したいということがわかっていても、業界的にそれはNGだった。ネット企業には何もできないというのを感じましたね。

伊藤 当時のテレビ業界にはネットに対するアレルギー的な反応もあったかもしれません。

保田 それと、テレビというメディアの不自由さにも気づきました。テレビ視聴には時間と場所の制約があります。放映時間にテレビの前にいないといけないし、録画したとしてもテレビの前にいる必要があるんです。

伊藤 確かに、そうですね。

■レビュー閲覧からそのまま視聴体験につながるのがガラポンTVの強みになっている

保田 というわけで、この制約から逃れられ、さらに検索とソーシャルの機能を加えた製品が実現できないかと考えた結果、たどりついたのが全番組を録画して外出先からでもスマホやタブレットで観られるガラポンTVだったわけです。

伊藤 それで2010年3月に会社を設立し、9月に初号機を発売された、と。ソーシャルの部分というのは、どんな機能で実現しているのでしょう?

ガラポン ガラポン

↑ユーザーが自発的に書き込むレビューは、制作サイドからの番組情報とは異なる価値をもつ。おもしろいレビューを見つけたら、スグに観られるのは全録ならでは。

保田 ユーザーさんどうしで番組の感想や評価をシェアできる仕組みを用意しています。感想や評価は、ガラポンTVのコミュニティー内でユーザーさんが自発的に投稿してくれるものなんですよ。

伊藤 投稿は専用アプリから?

保田 はい、そうです。アプリを立ち上げると、ユーザーコミュニティーが表示されるんですね。そこから投稿ができますし、ほかのユーザーの投稿を見ることもできます。つくり手による情報だけでなく、観る側のレビューでもおもしろい番組を探せるのが、ガラポンTVの特長のひとつです。

伊藤 レビューを参考にすることで、おもしろい番組だけを効率的に観ることが可能になる。コミュニティーはアプリの外側からも見られます?

保田 評価は見られますが、それだと番組は観られませんので体験は空虚ですね。全録とセットなのです。我々は、ガラポンTVを“テレビ番組の食べログ”にしたいと考えています。番組表には限界がある。番組表でおもしろい番組を探すというのは、タウンページでおいしいお店を探すようなものですよね。

伊藤 それはどう考えても無理がありますね(笑)。

保田 自分のガラポンTVに録画してある番組については、レビューのページからすぐにその番組を観られます。レビュー閲覧からそのまま視聴体験につながるのも、ガラポンTVの強みなんです。

伊藤 なるほど。食べログの場合でも、料理のレビューを見て魅力的だったら「すぐに食べに行こう」となるわけで、体験とセットでないと意味がない。

保田 そうなんですよ。

伊藤 納得の仕組みですね。ところで、ガラポンTVで録画するのはワンセグ放送です。ワンセグを選んだのは、スマホ視聴と全録のための容量を考慮して、データ量が小さいことを優先したからですか?

保田 そのとおりです。それともうひとつあって、会社の設立当時、PC用のワンセグチューナーを製造しているメーカーが30~40社あったんですね。だから、これからハードウェアをイチからつくるのが大変だとしても、チューナーそのものはどこかに発注できるだろうという読みもありました。

伊藤 ああ、それは納得。その意味でワンセグというのは、いわば“枯れた”技術だったわけですね。2010年当時はハードウェアで起業するのはまだ難しい時代。大変だったのでは?

保田 私は“放送と通信の融合”の最適解をつくろうとしています。ワンセグ全録機はハードウェア的な実現難易度は高くありませんが、“放送”をソーシャルや検索といったネット技術で格段に便利にすることで他の事業者とは完全に差別化できるはずと考えましたね。

伊藤 大手メーカーは4Kや3Dといった性能の部分で勝負しようとしていて、それはそれであり得る。けれど、スタートアップはその部分で勝負しても戦えないから、別の手を考えないといけない。

保田 そうなんですよ。

伊藤 ガラポンTVは初号機からバージョンアップを繰り返して、現在は四号機まで進化しました。弐号機と参号機の間は約2年開いていますが、どういった理由からですか?

保田 実は、弐号機までは市販パーツを組み合わせてつくっていたんですが、参号機では基板を設計するところからやっています。弐号機までというのは、いってみれば自作PCの制作代行みたいな形だったんですよ。

伊藤 どうしてもパーツの原価が高止まりしてしまうから、販売価格を下げにくいですね。

保田 そうなんです。参号機では、量産に向けて基板をイチからつくることに着手したんです。低価格化して、量販店でも販売できるようになりました。

伊藤 ガラポンTVは、開発者向けにAPIを公開していますね。これを活用したサービスはいくつくらいあるんですか?

保田 現在は10個ほどです。ただ、API公開については、我々としてもまだ模索している部分があるんですね。

伊藤 というと?

保田 APIを公開する意義というのは、「AとBを組み合わせたら新しいCが生まれる」というようなことだと思うんですね。ところが、ガラポンTVの場合、ゴールはやっぱりテレビ番組の視聴なわけですから、誰もが驚くような新しい体験をつくるのは難しいんです。

伊藤 うーん、そうですか。それなりに便利なサービスはできそうですけど。

保田 もちろんです。けれど、たとえば四号機では“8チャンネル同時ライブ視聴”が可能になったんですが、これはチューナーの部分を変えたからこそ実現したことです。

伊藤 つまり、ハードウェアレベルで仕様変更したことで、新しい機能が生まれている。

保田 そうです。なので、APIの活用はこれからも取り組んでいくべき課題ですね。

■ガラポンTVはテレビを観なくなっていた人がまた観るようになる製品なんです

伊藤 なるほど。現在のユーザーは、どのデバイスで視聴している人が多いんですか?

保田 割合としては、iPhoneが3~4割で、アンドロイド端末が2~3割。タブレットは2割程度あり、PCも2割くらいですね。視聴場所も、家の中と外出先が半々です。

伊藤 キレイに割れるものですね。意外とiPhoneが多いという気がします。

保田 iPhone用アプリを優先して開発していることも、影響しているかもしれません。アンドロイドは動画再生エンジンに端末ごとのクセがあって、若干やりづらいんですね。

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↑家の中でも外出先でも録画番組を視聴。ガラポンTVの設置場所には、地デジ受信環境とLAN環境が必要になる。LANとの接続は、有線接続のみ対応。外出先から録画番組を視聴する際には、3G回線程度の帯域でも問題ない。

伊藤 なるほど、では最後に、今後についてお聞きします。

保田 我々としては、ガラポンTVがユーザーにとっても、社会にとっても有益な製品とサービスだという自信がありますし、もっと多くの人に使って欲しいです。あとはテレビ局ともっと仲良くしたいなと。ガラポンTVは、テレビを観なくなっていた人がまた観るようになる製品なんです。「テレビ局にとってもトクになる製品なんですよ」と理解してもらいたいですね。

伊藤 日本テレビが“Hulu”とのシナジーで、視聴者を取り戻しているという話もあります。いつかテレビ局の番組が“ガラポン・クラウド”に蓄積される日が実現するかもしれないですね。

保田 はい、ガラポン・クラウド実現のため準備しています。今は夜明け前ですね。

ガラポン

ガラポン株式会社 代表取締役
保田歩
1978年生まれ。2001年4月にシステム開発会社に入社してウェブシステムのSEとして勤務。2004年9月にヤフーに入社し、多数の新規事業をプロデュース。2010年3月にガラポンを設立。

■関連サイト
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