週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

はやぶさ2は深宇宙の旅へ、H―IIAロケット26号機打ち上げ成功

2014年12月04日 07時30分更新

 JAXA 宇宙航空研究開発機構は2014年12月3日午後1時22分04秒、小惑星探査機『はやぶさ2』を搭載したH-IIAロケット26号機の打ち上げに成功。二度にわたって打ち上げが延期されたが、12月3日の種子島宇宙センターは、晴れ間も見える安定した天気に恵まれた。

はやぶさ2
(C)JAXA
はやぶさ2
↑はやぶさ2を載せたH-IIAロケット26号機は、無事、種子島宇宙センターからの打ち上げに成功した。
(C)JAXA

 打ち上げ後、H-IIAロケットで地球を一周回し、1時間39分26秒後から第二段エンジンを燃焼させるといった初の工程も滞りなく進行し、予定通り1時間47分21秒後(速報値)には惑星探査機『はやぶさ2』を分離。続いて、相乗り小型副ペイロード『しんえん2』、『ARTSAT2-DESPATCH』、『PROCYON』も無事に分離に成功した。

はやぶさ2
↑1時間47分後、地球をぐるりと1周したH-IIAロケットから、はやぶさ2を分離。エアボーン(宇宙デビュー)の瞬間だ。
(C)JAXA
しんえん
↑続いて切り離された『しんえん2』、『ARTSAT2-DESPATCH』、『PROCYON』も無事、成功。写真は『しんえん2』のもの。
(C)JAXA

 『はやぶさ2』と地球をつなぐ通信は、長野・臼田局をはじめとする日本のアンテナに加え、NASAの深宇宙ネットワーク(DSN)も協力する。同日15時37分ごろ、DSNのアンテナの通信状態を確認する専用サイトで『HYB2(HAYABUSA2)』の略号が付けられたアンテナと探査機が通信している状態を確認。

 國中均プロジェクトマネージャーによれば、H-IIAロケット26号機から『はやぶさ2』を切り離す映像が、太平洋上のクリスマス局のアンテナ経由で送られ、その後、NASAのゴールドストーン局のアンテナと『はやぶさ2』との交信がスタート。『はやぶさ2』が太陽電池パドルを広げ、太陽の方向を向いて発電を開始したことが確認されている。続いて『はやぶさ2』は鹿児島県の内之浦局と長野県・臼田局とつながり、宇宙デビュー後、初の通信が実現した。

はやぶさ2
↑ロケットからの切り離し直後、NASAのアンテナとはやぶさ2の通信が確立! 探査機が無事に宇宙デビューを果たしたことを示している。

 打ち上げ後の記者会見で、JAXA國中均プロジェクトマネージャーは「天候が安定してウインドウの真ん中で打ち上げができたおかげで、軌道変換マヌーバ(宇宙船の軌道を変えるために使われる推進システム)は低く抑えられた」とし、イオンエンジンの推進剤に余裕を残した状態で打ち上げできたことは、これから何が待ち受けるかわからない6年のミッションにとって、幸先のいいスタートとなったと喜んだ。

はやぶさ2
↑探査機分離時の様子。
(C)JAXA

 発電を開始した『はやぶさ2』は、今後2日にわたり、ゆっくりと回転しながら姿勢を安定させ、小惑星表面のサンプルを採取するための長く突き出した装置“サンプラーホーン”を展開する。続いて、コマのような回転機構で探査機の姿勢を安定させる“リアクションホイール”を起動し、自身の力で姿勢を保てるようにするとのこと。ここまでが打ち上げ後の最も初期のクリティカルフェーズと呼ばれる段階となり、運用チームは12月5日(金)まで、緊張感が続く。

 その後3ヵ月間は、搭載機器の健康状態をひとつひとつ確認していく作業に入り、探査機の内部に残った揮発性物質(ガス)を追い出すとともに、小惑星への往復飛行を実現するキー技術のひとつ、“イオンエンジン”を起動するフェーズへと移行する。イオンエンジンを起動したら、約1年かけて地球~太陽の距離の約5分の1ほどを航行した後、地球の近くへと戻り、地球の重力を利用して加速する“スイングバイ”を実施。すべての試験が無事に終了してから、いよいよ目的地の小惑星『1999 JU3』へと向かう軌道へと入ることになる。小惑星到着は2018年の6~7月ごろで、2020年に地球へと帰還する予定だ。

 種子島宇宙センターでの記者会見には、はやぶさ2に搭載された欧州の小型着陸機『MASCOT(マスコット)』(※はやぶさ2本体から切り離されて着陸する機体)のプロジェクトマネージャー、ドゥルーズ氏が出席。マスコットが小惑星1999 JU3に着陸して観測した結果を、はやぶさ2の着陸地点決定に生かすことになると話す。

 それを受け、はやぶさ2 プロジェクトサイエンティストの名古屋大学 渡邊誠一郎教授は「『はやぶさ2』からの小惑星の観測と、マスコットによるクローズアップ観測を組み合わせることで観測の幅が広がる」とコメント。今年11月に史上初の彗星着陸を実現した『フィラエ』着陸機(『ロゼッタ』探査機に搭載)と兄弟のような関係にあるマスコットは、“(はやぶさ2が)降りたいところへ降りる”ために活躍すると述べた。

 また、はやぶさ2と共に打ち上げられた3機のペイロードも、内之浦局と順次通信がつながり、健康状態の確認を済ませた。今後、『しんえん2』、『ARTSAT2-DESPATCH』は、短いミッション期間をいっぱいに活用して、月より遠くからの通信などに挑む予定。『PROCYON』は超小型探査機用のイオンスラスタ実証に挑み、大型の探査機のような1年以上の長いミッションを進めることなる。

 打ち上げのもようは、ニコ生の『小惑星探査機「はやぶさ2」/H-IIAロケット26号機 打ち上げ生中継』でもチェックできます。

■関連サイト
「はやぶさ2」特設サイト
小惑星探査機「はやぶさ2」(月・惑星探査プログラムグループ)

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう