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空飛ぶ自動車、クラウド縫製職 TOKYO STARTUP GATEWAY 2014で飛び出した新規事業アイデア10

 東京都主催のビジネスプランコンテスト“TOKYO STARTUP GATEWAY 2014”が2014年11月16日に開催された。448人から10人の若いファイナリストが選出され事業案を競い合った。新規事業、プロジェクト、企画担当者の参考になるビジネスアイデアの中から、優れた2例を紹介したい。

TOKYO STARTUP GATEWAY 2014

 なお最優秀賞に選ばれたのは“置き薬”システムでアフリカを支援する事業を提案した女性起業家、町井恵理さん。偽薬、病院までのインフラ未舗装といったアフリカが抱える医療問題を、日本やヨーロッパからの薬を必要なだけ販売する“置き薬”で解決する。その模様は大江戸スタートアップ(アスキークラウド)の記事“東京都ビジネスコンテスト、アフリカ救う「富山の置き薬」に最優秀賞:TOKYO STARTUP GATEWAY 2014”にて紹介している。

■空飛ぶクルマ“SkyDrive”
 学生時代レーシングカーをつくるサークルに所属、自動車メーカーに就職した中村翼氏のアイデア。次世代に向けてクルマの新しい価値を提供したいと考え、メーカー勤務の傍らコンセプトカーの企画開発にも携わっている。

TOKYO STARTUP GATEWAY 2014

 現在の自動車は高速移動や悪路には強いが、砂漠や水上で使えず、いまだラクダのような動物が交通手段。中東やアフリカに空飛ぶクルマを提案したいと考えた。すでに米国、オランダのベンチャーが羽つきの自動車を実現している。

 実現には、サイズが大きく着陸時の場所に制約がある、公道からは離陸できない、操縦が難しいといった難点があった。解決策に1~2人乗りのミニカーにマルチコプターを組み合わせ、セグウェイのように体重移動で操縦できる機体を考えた。

TOKYO STARTUP GATEWAY 2014

 車両四隅にプロペラを配置し、飛行時の最高時速は100キロ。5分の1サイズの試作機が飛行に成功しており、理論上は1分の1サイズでも飛行可能という。来年には試作機を作り、2020年の東京オリンピックでデビューしたいと話す。

 大手メーカーはニーズを見極めるための研究段階というレベルがほとんどで、中村氏自身も役員や企画部に相談してきたが「1年半で話が進まなかった」。

 インフラや法整備が固まって動きが取りづらい先進国ではなく新興国がチャンスと見る。「砂漠地帯のように、何も下にないところで実績をつくりたい」


■CtoC縫製クラウドソーシング“nutte”
 縫製業界10年間の経験がある伊藤悠平氏によるアイデア。日本の縫製産業は技術こそ高いもの危機に瀕していると訴える伊藤氏。収入は平均年収の半分以下で、年々業界は厳しくなるばかり。あと10年で日本の縫製工場はなくなるとさえ言われており、縫製業の再生につとめたいと発起した。

 縫製に絞ったクラウドソーシングサービスを試験的に開始してみたところ家庭でミシンを踏んでいる縫製職人100人がわずか1週間で集まった。「数ヵ月で1000人、1万人でも集められるはず」と伊藤氏は自信を見せる。

TOKYO STARTUP GATEWAY 2014

 1万人の職人で狙うのは、一点からのオリジナル商品を作りたいと考える個人ネットショップオーナーの需要だ。スマートフォンの登場を受けて伸びたCtoC(個人間取引)のネットショップ(フリーマーケットサービス)がターゲットとなる。

 CtoC市場はファッションだけで4000億円規模、成長率10%といわれている。市場に売り手が増えたとき競合と差別化するための独自商品を作りたいというニーズに応えるため、クラウドソーシングのシステムを活用する。

 デザインが出来なくても少量から発注できる仕組みで、写真を送ったりどんな服を作ったりしたいか伝えるだけで、誰でも職人にオリジナルの服を格安でつくってもらえる仕組みを売りにする。ビジネスとしての収益は、縫製職人からの手数料収入を予定する。

 職人を請負から独立させ、若者が縫製職人を目指せるようになる好循環を生み出したいと伊藤氏。来年1月にβ版サービスを開始し、翌年までに営業利益1億円を目指す。日本で成長させたあとは各国語のサイトを開発する計画という。「日本の縫製業を世界に向けて発信し、新しい市場をつくっていきたい」(伊藤氏)


■そのほか登場したビジネスアイデア一覧

ラントリップ:「いい道を走るために旅をする」をコンセプトに、道と宿泊先など拠点を予約するランナー向け“じゃらん”のようなサービス。グッズ販売で数百~数千億円規模程度のスポーツ市場ではなく2兆円規模の旅行市場を狙った。

フィリピン流通革命:大手小売の寡占で商品の小口流通コストがかさみ、収入層ほど物価が高いというフィリピンの社会問題を解決する。極小ストア“サリサリストア”を束ねて、商品の共同購入チャネルにすることで売価を下げる。

新電力のマッチングサービス:家庭からスマートメーターのデータを収集し、最適な新電力の企業を割り当てる。契約をスイッチするアルゴリズムが強みで、技術は国際学会で発表予定。巨大な顧客基盤を持つ警備会社などとの提携を狙う。

電動アシスト手押し車:国内年間10万台市場の手押し車を電動化するキットを開発し、低価格で販売する。ジャイロセンサーで左右のバランスを調整する機能もつけた。一輪車は規格が世界統一されているため海外展開が容易と見る。

ITエンジニアの課題解決Q&Aプラットホーム:ITエンジニアが技術面の悩みを相談、解決できる月額1000円のプラットホーム。アドバイザーは相談料の7割を得られる。就業規則により収入を得られないアドバイザーはNPOへの寄付も可能。

パルミー:マンガ、イラストの描き方を基本無料で学ぶ教育動画サービス。顧客を増やし有料動画を配信する。日本の漫画市場はアジア圏にも進出している。日本でサービスを開始したあと中国語圏、英語圏へ海外展開を狙う。

台風発電機:垂直軸風力発電機に野球のカーブボールに使われるマグナス効果を応用、台風を電力に変えられる構造を持つ“垂直軸型マグナス風力発電機”の実現を目指す。大手も未到達の技術領域。小型モデルは完成し、実験は成功した。

■関連サイト
TOKYO STARTUP GATEWAY 2014

大江戸スタートアップ 大江戸スタートアップ
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