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ゲームのカク付きがなくなる『G-SYNC』対応液晶の驚くべき新技術

2014年10月24日 23時45分更新

 快適なPCゲーム環境を揃えたければCPUよりも高性能なグラボ(GPU)を確保すべし、というのは常識。しかしGPUが高性能でも液晶ディスプレーが悪いと画面がカクついたり、ガクガクとした描画になることがある。

 PCの液晶はピンからキリまで様々なものがあるが、ゲーマーを自認するならNVIDIAの『G-SYNC』対応ディスプレーに注目すべきだ。

G-SYNC

普通の液晶の何が問題なのか?

 まず今までの液晶ディスプレーの何が悪いのか? を整理してみたい。ディスプレーに何か映像を送ると一瞬で画面が表示されるように見えるが、超短時間のスケールで見れば画面の左上から右下に向けて順々に描かれていく。これを人間の眼では追いきれない速度で処理しているため、ディスプレー上では滑らかに動いているように見える訳だ。

 この画面を上から描いていく作業のタイミングは、これまでディスプレーが決めていた。一般的な液晶の場合60分の1秒ごと、ゲーマー用の高速液晶だと144分の1秒ごとに画面がリフレッシュされる。

 こうした書き換え頻度のことを『リフレッシュレート』と呼ぶ。リフレッシュレート60Hzなら、PC(GPU)は60分の1秒ごとにディスプレーへ映像を送出し、次の60分の1秒が来るまでに次の画面を計算するのだ。リフレッシュレート60Hzなら約16.7ミリ秒という短いサイクルとなる。

G-SYNC
↑16.67ミリ秒ごとに発生する画面のリフレッシュに合わせてGPUが処理を完遂できるのが保証されていれば、何の問題も起こらない。

 常にリフレッシュレートに合わせてGPUが画面を計算して出力できれば何も問題ないが、実際のゲームでは様々な理由でGPUの描画処理時間が長くなってしまうことがある。しかしディスプレーは基本的に自分のタイミングでしか画面をリフレッシュしない。すると画面上ではどうなるかと言うと、画面のリフレッシュは1回飛ばされ、一瞬止まったように見える。これが“カクつき”、専門的には『スタッタリング(stuttering)』と言う。

G-SYNC
↑1フレームの処理に16.67ミリ秒以上かかると、その映像が表示されるのは1フレーム後にズレ込んでしまう。プレイヤーの眼には1フレーム前の映像が出るので、その分操作も遅れてしまう。

 スタッタリングが頻発すると画面表示とプレイヤーの操作にもラグが発生するため、ゲーマーでなくともゲームの操作に違和感を感じるようになる。リフレッシュレートを無視してGPUが計算したそばからディスプレーに出力させる設定(垂直同期無効)にすればスタッタリングは起きない。

 しかし、今度は液晶がリフレッシュ作業中に次の画面の情報が入ってきてしまい、その結果画面が横に割れたように表示される。これが『ティアリング(tearing)』と呼ばれる現象だ。画面と操作のラグは解消されるが、今度は画面が見苦しくなる。

G-SYNC
↑垂直同期無効にすると、リフレッシュの途中で次の映像信号がディスプレーに飛び込んでくる。これがティアリングの発生する原因だ。

 この対策としては、画面のリフレッシュタイミング(60Hzなら16.67ミリ秒)の間にどんな処理も行なえるハイパワーPC環境を用意し、GPUがリフレッシュレートに合わせて画面を送出する(垂直同期有効)。こうすればスタッタリングもティアリングも起こらないが、最新ゲームでこの域に達するPCにするには高価なマルチGPU環境が必要になる。

リフレッシュのタイミングをGPUに同期させる

 こうしたジレンマをディスプレー側の処理で改善するのがNVIDIAの開発したディスプレー技術『G-SYNC』だ。G-SYNCではディスプレー側に専用のコントローラーを組み込むことで、GPUの信号送出に合わせて画面のリフレッシュを行なう。これまでとは主従が逆転した技術なのだ。

 こうすることで、描画処理が重くなってフレームレートが変動しても、GPUの信号送出に合わせて画面がリフレッシュされて、スタッタリングが発生しないため、操作のラグも発生しない。ディスプレーが画面のリフレッシュを行う途中で次の信号が割り込まないので、ティアリングも発生しない。

 ミドルクラスのGPUと重量級ゲームの組み合わせだと、フレームレートが30~70fpsの間でフラフラすることが多いが、こうした状況でも滑らかさを確保できるのがG-SYNCなのだ。

 ただしG-SYNCを使うには、DisplayPortを備えたKepler世代以降のGeForce(GeForce GTX 650Ti以上)と、G-SYNC対応液晶が必要になる。裏を返せば、今どきのGeForce搭載グラボを持っていれば、G-SYNC対応液晶を追加するだけで、ゲーム環境がワンランク上になるのだ。

G-SYNC

 現在のG-SYNCはDisplayPort入力しか受け付けない。G-SYNC液晶導入時は、自分のグラボがDisplayPort出力を持っていることを確かめてからにしよう。

G-SYNC対応ディスプレーが出回り始めた

 G-SYNC対応液晶はまだ出まわり始めたばかりで製品数が少ないが、今日本国内で手軽に購入できるゲーミング液晶を2製品紹介しよう。

R.O.G Swift PG278Q
●ASUS
実売価格 9万円9100円前後

G-SYNC

 日本で始めて市場に投入されたG-SYNC対応液晶。27インチ2560×1440ドット(WQHD)、リフレッシュレート144Hz対応、応答速度1ミリ秒など、G-SYNC対応以外でもかなりのハイスペック。ワンプッシュでリフレッシュレートを60Hz、120Hz、144Hzに切り替えるボタンを備えているのがおもしろい。


 また上下動&90度回転対応の高性能スタンドを備えるため、ユーザーの姿勢に合わせて自在な設置が可能だ。解像度が高いためゲーム以外の作業、特にオフィス系や動画編集等解像度が命の作業が多い人にもオススメできる。

G-SYNC

 PG278Qのスタンドは首振りにも対応するが、基部の赤い部分は通電時に淡く光る。ゲーマーの気分を盛り上げるギミックだ。

XB270HAbprz
●日本エイサー
実売価格 6万円前後

G-SYNC

 これも27インチのG-SYNC対応液晶だが、上のPG278Qより解像度がやや低い1920×1080ドットのパネルを採用している。画面の精細さは若干劣るが、フルHDならGPUがミドルクラスでもパワー不足になりにくい。価格も6万円前後と安いのが魅力だ。

 今回はG-SYNC座学ということでここまで。次回は実際のゲームにおいてG-SYNC対応液晶はどう使えるのかをチェックしてみたい。

●関連サイト
NVIDIA G-Sync紹介ページ

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