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Windows情報局ななふぉ出張所

iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか

2014年09月24日 17時00分更新

 iPhone6/6 Plus発売後、3日間の販売台数が新記録となる1000万台超を樹立したと話題となりました。この日ドイツのケルンに滞在していた筆者は、徹夜での行列には参加しなかったものの、発売日の朝に現地のアップルストアを訪れてみました。

iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか
↑ケルンのアップルストアがある、郊外のショッピングモール“Rhein Center”。
iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか
↑iPhone 6発売日の朝を迎えたアップルストア。さすがにこの日は入手困難で、すぐに売り切れとなった。

 その後、ミュンヘンのアップルストアを訪れたところ、偶然にもiPhone 6 Plusの在庫を発見、入手することができました。

iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか
↑9月22日、ミュンヘンのアップルストアにてiPhone 6 Plusを購入。その翌日も少量の入荷があったようだ。

 新型iPhoneの発売にあたって話題となったのが、日本のアップルストアに並んだ行列客の間で起きた混乱です。一部の店舗では警察が介入する騒ぎが起きたことなどが報じられました。

■発売時期の関係で中国需要が日本に押し寄せた?

 このような騒ぎが起きた背景として、iPhone 6の発売日と発売地域の関係が指摘されています。9月19日に発売されるのは、アジアでは日本と香港のみ。その後、第2弾として9月26日に発売となる22の国や地域が追加されたものの、アジアでは台湾の追加にとどまりました。問題は、巨大市場である中国での発売時期が未定であることです。

 従来であれば、中国本土のバイヤーはSIMフリー版のiPhone 6が発売される香港に殺到していたはずです。しかしiPhone 6では、SIMフリー版が日本においてもキャリアモデルと同日の9月19日に発売されることになり、日本にも中国本土の需要が押し寄せたものと考えられます。

iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか
↑ドイツ版のiPhone 6 Plusも、日本と同じA1524。今回のiPhoneはアジア・欧州が共通のモデルとなり、幅広い周波数対応やiOSの多言語対応も相まって、日本のSIMフリー版も世界市場に流通する可能性がある。

 ここ最近、日本ではMVNOの人気が高まっており、低価格機を中心にSIMフリー端末の本格的な流通が始まっているという点で、日本は“グローバル化”しつつあります。そしてiPhoneの行列についても、同じように“グローバル化”してしまったというわけです。

 中国で買えないiPhone 6が日本で購入でき、かつそれがSIMフリーで周波数的にも対応しているものならば、日本から中国へ端末が流れる動きが発生することは、市場が正常に機能している証拠といえます。

■絵的におもしろい、iPhone行列

 iPhoneの行列を巡るもうひとつの議論は、アップル自身も行列をうまく利用していたのではないか、という指摘です。

 iPhone発売直前の行列は、毎年恒例の風物詩となりつつあります。深夜の行列や、発売開始の瞬間、最初に購入した来店客へのインタビューなどは、テレビでも取り上げられるほどです。

 アップルとしては、iPhoneを入手するためには徹夜での行列もいとわない人が大量にいることを、メディアを通して無料で宣伝することができます。メディアにとっても展開が読みやすく、同じフォーマットで取材できるため、扱いやすいネタといえます。

 ここで誰もが疑問に感じるのは、iPhoneを購入するために、なぜ徹夜で並ばなければならないのかという点でしょう。たしかに今回も、オンラインでSIMフリー版を予約購入し、発売日以降に宅配してもらうという選択肢がありました。

 ただ、オンラインで予約した客が三々五々に商品を受け取りに来たり、当日指定の宅配便で各家庭に届くといった販売方法では、絵的に何のおもしろみも、盛り上がりもありません。発売日には長い行列を作り、出迎えた店員とハイタッチをしながら入店する。そういうお祭りが起きることを、アップルは一定の度合いで期待しているものと解釈して良いでしょう。

■アップルストアに起きてはならない混乱

 問題は、マーケティング的な“効果”があるとみられるiPhone行列において、トラブルが発生してしまっては「逆効果」になるという点です。今回のように、アップルストアの前で客と店員が押し問答になり、警官が割って入るなどの騒ぎとなり、その様子を撮影した通行人がSNSなどで拡散する。まさに最悪の展開といえます。

 本来、アップルストアが提供するべきものは、iPhoneやiPad、MacBookといった魅力的な商品が整然と並び、プロフェッショナルかつフレンドリーな店員から、気持ちよく買い物したりサポートを受けられる、一般の家電量販店などでは得られない、“魔法のような”体験です。

 しかし実際にiPhone 6の発売ではこれらを台無しにするようなことが起きてしまったことになります。もちろんその原因の一部は、騒ぎを起こした客にあるかもしれません。そしてアップル側にも、混乱を防ぐ努力が求められるところです。たとえば海外では行列を柵で囲うことで割り込みを防ぎ、店頭では多数の警備員が行列を管理していました。

iPhone行列を“健全化”する仕組みはあるか
↑ケルンのアップルストアではセキュリティが行列を管理、割り込もうとする客を排除していた。iPhone 6購入以外の目的で店舗を訪れた一般客にも検問で対応するなど、厳戒態勢となった。

■iPhone行列を“健全化”する仕組みは可能か

 今後、iPhoneの販売に変化はみられるでしょうか。ひとつの方向性は、前述のような“逆効果”を防ぐべく、完全予約制にすることで行列は廃止するという方向性です。他にも長い行列が風物詩となっている年末年始の福袋の販売などでも、販売形態が大きく変わる可能性があります。あるいは長期的にはiPhoneの人気が低下し、自然に行列もできなくなる、といった可能性もあります。

 別の方向性として、行列自体はしっかりと維持しつつ、本来のユーザーだけが並ぶような仕組み作りをする、というのはどうでしょうか。もちろん、行列客の外見や国籍などの属性をもって購入可否を判断するような、野蛮な方法を採ることはできません。

 この仕組みは、iPhoneを普通に利用するユーザーにとっては影響がないものの、転売目的の客であれば「並んで買っても損するだけだ」と判断するような制約である必要があります。

 たとえばサムスンの場合、賛否両論ではあるものの、リージョンロックと呼ばれる制限の入った端末があります。これは最初のアクティベーションを、端末を購入した国や地域で行う必要があるというシステムです。

 これを適用すると、日本で販売するSIMフリー版のiPhoneは、日本のキャリアのSIMカードでアクティベートしなければならない、といった制限がかかることになります。これは購入したiPhoneを日本で使いたいと考えている人にとって大きな制限ではないものの、海外への転売を狙う人にとっては高いハードルとなります。

 毎年恒例のiPhoneの発売を今後も楽しんでいくためにも、アップルの次の一手に期待したいところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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