週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

とってもサイバーな将棋電王戦タッグマッチ2014のAブロックは森下九段&ツツカナタッグが優勝

2014年09月21日 18時00分更新

メガネ型ウェアラブルとタブレットを駆使して戦う新たな将棋

電王戦タッグマッチ

 ニコファーレで行なわれていたプロ棋士とコンピューター将棋ソフトとのタッグ『電王戦タッグマッチ2014』は、森下九段&ツツカナタッグが優勝しFinalRoundへ進出した。去年行なわれたときは、開発者が横にいて、操作をプロ棋士がお願いし、そのやりとりもちょっとした見どころだったのだが、今回の電王戦タッグマッチは、将棋ソフトの操作もプロ棋士が行なう形式。タブレットを操作したり、メガネ型端末を見ながら黙々と対局する姿は近未来的。人間の知性とコンピューターの冷静な読みが組み合わさったときに、最強の棋譜が残せるのではないかという試みなのである。

電王戦タッグマッチ
今回解説の藤井猛九段と三浦弘行九段、聞き手は貞升南女流初段(写真)、山口恵梨子女流初段、室谷由紀女流初段、中村桃子女流初段。
電王戦タッグマッチ
会場のニコファーレはこんな感じ。正面上段で対局、下段で大判解説。手前は観客席。対局者は大判解説でのやりとりや観客の歓声を聞きながらやるので、かなりの集中力が必要。
電王戦タッグマッチ
新システムの導入には不具合がつきもので開始がちょっと遅れた。壇上で対局は照明でちょっと暑いらしい。

 第1局は、▲中村六段&習甦 vs. △加藤九段&やねうら王。ひふみんの愛称で親しまれている加藤一二三九段の登場ということで、かなり注目された。結果は、中村六段&習甦タッグの勝利。加藤九段は、やはりというか今回のサイバーなアイテムの使い方がよくわかっていなかった様子。なのでおそらく、ほとんど自分の考えで指していたようだ。対する中村六段は若いだけあり、タブレットの使い方もスムーズで、前半は自分の考えで指していき、後半は習甦の手を参考にして、上手くリードを広げ139手までで中村六段&習甦タッグが勝利した。

電王戦タッグマッチ
ひふみんの人気は絶大。私も小さいころ憧れた棋士だが、まさかこのようにアイドル化されるとは(笑)。
電王戦タッグマッチ
中村六段は電王戦で代指しの経験もあり、コンピューターの指し手は研究しているはず。若いからタブレットの扱いも慣れた手つきだった。
電王戦タッグマッチ
電王戦タッグマッチ

会場の両サイドには表情のアップと脳波の測定結果が表示されている。

電王戦タッグマッチ
電王戦タッグマッチ

終局後の感想戦では、ひふみん節が炸裂し、中村六段が語る余地があまりなかった……。

 第2局は▲屋敷九段&ponanza vs. △森下九段&ツツカナ。屋敷九段のほうが勝つかと思いきや、意外や意外(失礼!!)森下九段&ツツカナのタッグが106手で勝利した。対局後の感想戦で森下九段は「後半はツツカナを信じて戦った」と言うように、前半こそ自分で指したものの後半は、ほとんどツツカナの考えを取り入れて指していったようだ。対する屋敷九段は、自分の考えも入れつつ指していたようで、ponanzaの良い手を見過ごしていたようだ。タッグマッチのキモは、コンピューターの言うことをいかに参考にするか。すべて参考にしたら、それはプロ棋士としてのプライドも許さないだろうし、おもしろくない。取捨選択し、ほかの指し手の読みをコンピューターにやらせて自分の読みが正しいのか判断する、という塩梅が重要になってくる。

電王戦タッグマッチ
森下九段はツツカナと電王戦で戦っただけに、ツツカナに関してはよく知っているようだ。
電王戦タッグマッチ
屋敷九段は、ponanzaの読み手を活かしきれていなかったようで、このあたりがタッグマッチの難しいところかも。
電王戦タッグマッチ
森下九段はタブレットもしっかり使いこなしているみたい。タッグマッチでは重要だ。
電王戦タッグマッチ
森下九段が感想戦でツツカナを信じて終盤は進んでいったと語った。

 第3局は▲中村六段&習甦 vs. △高橋九段&YSS。こちらは、習甦をうまく活用した中村六段&習甦タッグが99手で勝利。高橋九段は、YSSの判断をうまく活用できなかったようで、終始中村六段がリードし、そのまま押し切った戦いだった。中村六段は終局後の感想戦で「(55手目)最初▲8二角打ちを推奨してきてそれは平凡だと思っていたが、その次に▲8三角打ちを押してて。ぱっと見は効きも良くないしなんでだろうと思ったら、そのあと▲7三歩△同歩▲5三桂打ちの読みを示してくれたので、このとき習甦を信じようと思った」というように、コンピューター将棋と信頼関係を早く築けるかが勝負の分かれ目になるのかもしれない。

電王戦タッグマッチ
高橋九段は、終始評価値が劣勢でちょっとやりづらかったようだ。今回最短の99手で終局。

 第4局は▲中村六段&習甦 vs. △森下九段&ツツカナ。三浦九段と藤井九段のダブル解説が、ちょっと暴走気味でおもしろかった。対局の方は序盤淡々と進んでいくが、中村六段&習甦タッグは中盤に持ち時間をかなり使っていた。ほぼ互角で進んでいき、森下九段&ツツカナタッグも時間をかけて指したため、先に1時間を使い切り30秒将棋に。実に68手目からである。中村六段&習甦タッグも81手目から30秒将棋で100手以上お互い30秒将棋を続けた。110手目ぐらいから、森下九段&ツツカナタッグが猛攻し、評価値がうなぎのぼりに。120手目で画面上の評価値は振りきれ、いわゆる詰みが見つかった状態だったのだが、ここでまさかの森下九段の判断ミス。評価値が大逆転しさらに対局が続く事態に。感想戦で森下九段は「4000を超えてツツカナが暴走したのかと思い、違う手を指した」とのこと。ツツカナを信じきれなかったため、まさかの大熱戦になってしまった。一時、中村六段&習甦タッグが息を吹き返したのだが、攻め手をかき森下九段&ツツカナタッグが196手までで勝った。最後は両者のコンピューターが読み手を表示してくれないトラブルにみまわれ、結局自分の力で戦うことに。

 切れ負けではなく30秒将棋があると、戦い方も違うし見ていてもおもしろかった。また、森下九段も中村六段も30秒将棋の中でもタブレットを操作して別の読み手を確認しているのはすごい。このタッグマッチは、タブレットを使いこなせるかも勝負の分かれ目になりそうだ。

電王戦タッグマッチ
終盤の30秒定規でも、お互いタブレットを操作しながら対局していた。このくらいできないとタッグマッチでは勝てないのか?
電王戦タッグマッチ
電王戦タッグマッチ

解説は藤井猛九段と三浦弘行九段のダブル解説だったが、長くなってしまったので急遽バトンタッチ。高橋九段と屋敷九段が解説することに。

 今回のトーナメントに合わせて、メガネ型ウェアラブル端末を導入し、メガネに読み筋を表示することで、盤面を注視しつつ考えられるようにした。ほかの読み筋を調べたいときはタブレットを操作して自分で確認も可能。その読み筋もメガネに表示することができる。また脳波を測定でき、リラックスしているのか集中しているのか可視化された。通信はブルートゥースを利用していて、この通信の不具合のためか、きちんとメガネに表示されず、対局中に何度か中断があった。このあたりは、Bブロックまでには改善してほしいところだ。

 電王手くんといい、ドワンゴの今回の試みもおもしろいし、近未来的で将棋の新たな競技として確立させていくには十分なインパクトもある。ただ、前回のプロ棋士と開発者とのやりとりも、見ていて結構楽しかったので、人と人とのやりとりも演出として重要なのかも。さらに、タッグマッチは電王戦と違って公開対局。コンピューター将棋が何を考えているのかも随時確認できると(ニコ生では別アングルで見られるが)、プロ棋士がどう判断したのかもわかっておもしろいかも。今後、電王戦のあとを担う大会になるので、いろんな演出やルールをじっくり考えてほしい。

電王戦タッグマッチ
最後にAブロック優勝ということで、森下九段は盾を授与された。
電王戦タッグマッチ
解説陣はこのように5台のディスプレーを見ながら話いてる。各ソフトの読み手も見られるが、各棋士がタブレットで操作している内容はわからない。

 さて、次は23日のBブロック。出場者は、佐藤六段&やねうら王、菅井五段&習甦、西尾六段&ponanza、船江五段&ツツカナ、阿部四段&YSSの5組。今回と同じ10時半放送スタートだ。
 なお、もし会場で観戦する人は、対局者が照明の近くで暑いため、冷房をかなり低めに設定している。なので会場全体が寒いので厚着をしていこう

電王戦タッグマッチ

※9/23 2:45、13:40 一部キャプションで中村六段が「電王戦を戦ったことがある」と表現していましたが、正しくは「電王戦で代指し(ボンクラーズの指し手係)の経験もあり」でした。お詫びし、訂正いたします。

●関連サイト
電王戦タッグマッチ2014特設ページ
将棋電王戦FINAL特設ページ
日本将棋連盟

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう