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海外と日本の橋渡しとなる、グローバル教育の基礎は「多様性を受容する」こと

2014年09月21日 08時00分更新

 昨今注目を集める、"グローバル人材"という言葉。海外の人となめらかに交流できる人材の育成に力を入れる小松俊明さんに、グローバル教育について、また海外から見た日本についてうかがいました。

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東京海洋大学 特任教授
小松俊明

東京海洋大学特任教授(グローバル教育)。産業界出身の大学教員。慶応義塾大学を卒業後、日本の総合商社及び外資系企業に勤務。国内外の起業を経験した異色の経歴。現在は組織のグローバル化推進に注力し、年間100日以上をアジアに滞在する。ソフトバンクが運営する通信制大学、サイバー大学客員教授として"セルフマネジメント論"及び"キャリアデザイン"を担当。社会人と学生の交流を促進するためにグローバルキャリア研究会を主宰。そのほか、グローバル企業の中途採用事情に詳しく、厚生労働省が実施する職業紹介責任者講習の講師を務める。著書に『デキる上司は定時に帰る』など。

速水:現在は大学で教えているお仕事の割合が大きいんですか。

小松:そうですね。僕はもともと人材育成というひとつの柱を自分のキャリアのテーマとしてやってきてはいたんですけれども。社会からの強い要請もあり、高等教育の現場ではいま、グローバル人材育成への期待が高まっているんですよ。

速水:たしかにここ数年グローバル人材という言葉をよく聞くんですが、なぜなんですか。

小松:たぶん、そこがいちばん日本人にとって苦手分野であるのにもかかわらず、今後の日本人ひとりひとりが行き詰まったときに打開していくためのひとつのキーワードにもなるのではないかと。そういう思いが、おそらくいろいろな分野の人たちにあるからなんじゃないかと思います。

速水:なるほど。

小松:もちろん以前から国際競争にさらされているとか製造拠点を海外に出してコストダウンをしただとか、そういったことはビジネスとしてやってきましたよね。そんな意味ではグローバル人材という考えかたそのものが新しいわけではなくて。ただやっぱり、日本人にはちょっと他人事というか、特別な人がやってるものみたいな感覚があるようなんです。だけどもはや最近では、そういったことを専門家とか特殊な人だけにやらせるだけでは回らなくなってきたので。

速水:ただどうしてもエリートの人たちの話じゃないのって気もしてしまいますが。

小松:そこが、日本人の大きな誤解を生んじゃったところだと思うんです。海外の人々は、海外に出ることがエリートだとは誰も思っていないですよ。なぜか日本人は海外というもの、文化の壁というものを非常に大きくとらえすぎているんだと思います。

速水:具体的にはなにをやることがグローバル教育なんですか。

小松:柱はいっぱいあると思いますが、まずはひとことで全体を総括した言いかたをすると「多様性を受容する」ということです。ようは自分が好きなことも嫌いなことも苦手なことも、そして肌の色や言葉や習慣や考えかたが違う人が身近にいても気にしないというか、逆にそういう人と仲よくできるようにさせるんです。

速水:ふむ。「英語を勉強しよう」ってことより、それ以前の段階か。

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人と人のベースにあるのはコミュニケーションです

小松:海外に行きもしないでああだこうだ言う人は、一度とにかく海外に行ってみたらいいんですよ。言葉なんかできなくたってしゃべってみたらいい。そうしたら世界が変わるから。僕はいままで英語しか使ってこなかったけど、ここ1年くらい、タイ語を勉強しているんですね。僕はタイも好きだし、タイ人も好き。それでタイ語をしゃべり始めたんですが、そうしたら、いままで自分が何十年も英語だけでやってきたことが、全然変わりました。たかが言葉なんですけど、やっぱりとても大事ですし。

速水:うんうん。いま、自分を変えたいと思っている人、でも変わらないだろうと思っている人も、実は語学みたいなものがいいブレイクスルーのきっかけになるかもしれない。

小松:というのはなぜならコミュニケーションが人と人のベースにあるからです。コミュニケーションが人間関係の出会いとか信頼関係のすべてのパイプになっている。とすれば、語学なんてとバカにしないで、もしくはあきらめないほうがいい。短い時間でもいいので、ただゼロじゃなく、一日30分でもいいから継続してみる。僕もタイ語は10年かけてマスターしようと思っています。

速水:なるほど、すぐ仕事につなげるのではなく、楽しんでやろうというわけですね。

小松:まったく、そうです。

速水:ふむ。そして今日のテーマは、つまるところ“コミュニケーション”だったと思うのですが。自分たちは日本語圏内でしか伝わらないと思っていて、それがかなり自分たちの足かせになっていたところがあって。

小松:日本にはまだまだいいものが多くあって、日本人のきめのこまかさ、丁寧なデザインとかが非常に評価されていて。とはいえ、日本人がただもっと海外に行けばいいと言っているわけではないんです。みんながもっと、別になんとも思わずに海外に行ったり、外国人と気軽に話をしたり、していけたらと思っているだけ。それがアジアの人たちの普通の姿なんですから。

速水:そうですね。

小松:とくにシンガポールや香港とかの人たちのあの感覚に僕らが早く近づけばいい。そうなると日本のよさはいまより三乗くらいの感じで伝わるのでは、と思うんですよ。

今回の聞き手
速水健朗(はやみずけんろう)
'73年11月9日生まれ、石川県出身。編集者・ライター。著書に『ラーメンと愛国』(講談社刊)、『自分探しが止まらない』(ソフトバンク刊)ほか。
http://www.hayamiz.jp/

■関連サイト
小松研究室

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