2014年07月03日21時30分

東京国際ブックフェアで見つけた電子書籍の新しい売り方

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 7月2日~5日まで、東京国際展示場にて『第21回 東京国際ブックフェア』が開催されている。同会場では、電子出版EXPO(こちらは7月4日まで)も同時開催されており、全国の出版社や、電子書籍に関連するメーカーが多数展示などの活動を行なっている。

『第21回 東京国際ブックフェア』

●セルフパブリッシングがさらに加速!?

 今回のブックフェアおよび電子出版EXPOでは、目新しい画期的な端末などなかったものの、電子書籍の新しい可能性を感じた。それが、電子版の自己出版“セルフパブリッシング”だ。

 すでに、AmazonのKDP(Kindleダイレクト・パブリッシング)では多くのユーザーがセルフパブリッシングを行ない、2013年の日本SF大賞にノミネートされた藤井太洋氏をはじめとした人気作家が登場している。

 今回新たにセルフパブリッシングのサービスを発表したのは、電子書籍ストアBinBを迂遠にするボイジャーだ。

 ボイジャーは元々は1993年に電子出版用の『エキスパンドブック』を開発し、フロッピーディスクを用いたセルフパブリッシングを20年以上前から実現させていた老舗のメーカーである。そのボイジャーが試行錯誤を重ね、ついに完成させたのが、今回の『Romancer』だ。

『第21回 東京国際ブックフェア』

 『Romancer』では、ウェブでの執筆、EPUB3への変換、公開などを無料で行なえるサービス。最大の特徴はブラウザーがリーダー代わりとなるため、読むための端末やアプリは問わないことだ。製作した作品は、Kindleなどほかの電子書籍ストアで販売することも可能。さらに今後は有料で、販売・編集・校正などのサポートや、データ保存量の追加などの機能も使えるようになる。

 すでに、Romancerで製作した作品も公開されており、作家 池澤夏樹氏の作品などが7月1日から同社のストア『BinB』で販売されている。

『Romancer』での制作画面
『第21回 東京国際ブックフェア』
↑ブラウザー上で、カンタンにEPUB3フォーマットの作品がつくれる。

 ボイジャー代表取締役である萩野正昭氏に会場で話をうかがった際、「22年間、電子出版のツールをつくり続けたが、紙の本に代わるような満足できるものがつくれなかった。しかし、ようやく『Romancer』というツールにたどりついた」と語っていた。

 ボイジャーでは、今後Romancerを使う作家を支援し、ボイジャーでの出版なども行なっていくとしている。

Romancerで作成された電子書籍
『第21回 東京国際ブックフェア』
↑表紙が本の形になっているのが印象的。「平面のものをあえて、本らしいデザインにした」(萩野氏)とのこと。
プレビュー画面
『第21回 東京国際ブックフェア』

●楽天Koboもセルフパブリッシング開始

『第21回 東京国際ブックフェア』

 また、会場では楽天Koboのセルフパブリッシング『ライティングライフ』も発表された。これまでも海外版での出版は可能だったが、今回新たに日本での正式サポートが始まるということで、国内でのセルフパブリッシングは加速していきそうだ。『ライティングライフ』のサービス開始は年内を予定している。

●10円で買える! ほしい記事だけコンテンツを買う

 セルフパブリッシングとは別に、電子書籍のサービスは新たなステージへと向かい、“売り方”が変わりつつある。

 電子書店や電子貸本を手掛けるパピレスが6月から開始した『パピレスプラス』は、本1冊ではなく、章や記事ごとに販売するストアだ。ビジネス書を中心に、自分がほしい内容の記事だけを安価に購入できるのが特徴。まさに、電子書籍の特徴を生かした新しいサービスといえる。

『第21回 東京国際ブックフェア』

 すでに、Androidアプリを使った雑誌の記事単位の販売などは他社でも始まっており、今後もこのようなコンテンツの切り売りは増えていくと予想される。たとえば、旅行ガイドのなかの一部地域の情報、短編集の内の1話など、データ量も小さく読みやすいため、スマホユースに適した販売方法とも言える。

好きな記事だけ買える
『第21回 東京国際ブックフェア』
↑『パピレスプラス』。ストアで記事の冒頭を読むことができ、気に入ったら即購入するというシステム。

●端末ではなく“コンテンツを売る”『honto pocket』

 コンテンツを売る方法としてはもうひとつ、端末ごと販売するというサービスも登場した。昨年のブックフェアでも展示され話題になっていた、hontoの電子書籍端末『honto pocket』だ。名前のとおり、ポケットに入りそうな手のひらサイズの小型端末で、あらかじめ決められた書籍がインストールされており、書店などで本を買うように端末ごと購入できる。

片手でもって読めるコンパクトサイズ
『第21回 東京国際ブックフェア』
↑軽量コンパクトサイズだが、昨年の試作版よりは少し重くなった印象。使用電池が単4から単3に変更になっている。
操作も機能もシンプル
『第21回 東京国際ブックフェア』
↑画面は800×600の5インチ。単3電池2本で約4000ページ使用可能とのこと。しおり機能や、文字の大きさなど、最低限の機能が搭載されている。本体下部にあるホームボタンと、ページ送りなどができる左右2つのボタンで操作する。

 『honto pocket』の売りは、「端末のスペックではなく、どんなコンテンツを入れるかが重要」ということで、ここでもコンテンツ次第で様々な可能性が広がっていく。

 今回の展示では『LIFE BEST』というセットを紹介。救急箱をイメージした缶タイプのケースに、ブックコーディネーター江口宏志氏がセレクトした書籍を収録。ケースには、包帯や薬などを入れ、非常時に持ち出すといった使い方も可能だ。

●ネットがなくても本が読める

『第21回 東京国際ブックフェア』
↑参考展示の『LIFE BEST』。非常時に役立つための本がセレクトされている。

 今後は、過去の賞の受賞作品をまとめたセットや、プロのセレクトによるセットなど、さまざまなコンテンツを提案していくという。

 価格は収録されるコンテンツなどによって異なるが、紙の本を買うよりは安く、書店に並んでいても違和感のない価格をめざすとのこと。発売は2014年内を予定、今後のラインナップが期待される。

『第21回 東京国際ブックフェア』

 ブックフェアでは恒例の出版社による本の販売も行なわれており、一部の書籍は定価の2割引きなどお得な価格で購入できる。電子書籍だけでなく、さまざまな紙の本にも触れ合える、活字好きにはたまらない一大イベントだ。7月5日までセミナーやサイン会なども開催されているので、ぜひ足を運んでみてほしい。

●関連サイト
東京国際ブックフェア
国際電子出版EXPO

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