6月30日、電子書籍サイト大手のBookLiveと、TSUTAYAの経営などで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が、“新たな書籍サービス”に関する共同記者発表会を都内で開催した。
筆者は発表会の通知が届いたとき、「Tポイントの連携だろう……」と予想していたのだが、発表会では新しいサービス、リアル書店と電子書籍を便利に利用できる“新しい試み”が提示された、いい意味で裏切られた結果となった。
↑業界大手の2社がガッツリ組んでの新サービス。共通インフラとしてTポイントサービスを活用する。 |
今回発表された、新サービスは以下のとおり。
●BookLiveとCCCが提供する新サービス
1. Tポイントの連携
『BookLive!』で電子書籍を購入した際、Tポイントがたまる(要紐づけ)。
2. 紙の本を買うと電子書籍が付いてくる『AirBook』
TSUTAYAでTカードを提示し紙の本を購入すると、購入後、即BookLive!で電子書籍版が無料もしくは割り引き価格で読める。
↑TSUTAYAで紙の本を購入、Tカードを提示する。 |
↑購入後、電子書籍版がダウンロードできるようになっている。 |
↑自分の読みたいシーンに合わせて、紙と電子版を選んで楽しめる。 |
3. 紙の本が届くまで電子版をサービス『FastRead』
TSUTAYAで本を注文した際、届くまでの期間は電子書籍版が無料で読める。ちなみに、本が届くと電子書籍版は無効になる。
↑一刻も早く読みたい人には重宝しそうな機能。 |
4. TSUTAYA店内限定WiFi『BookLive! SPOT』
カフェ併設のTSUTAYAで限定のWiFiスポットを提供し、BookLive!の書籍が楽しめる。会員登録やアプリのダウンロードは不要。
↑短時間で手軽に利用できる。BookLive!への会員登録は必要ない。 |
5. アニメやゲームなどにおまけが付く『TSUTAYA360』
TSUTAYAでアニメのDVDやCD、あるいはゲームなどをレンタル・購入すると、関連の電子書籍が無料もしくは割り引き価格で読める。『360』は“サンロクマル”と読む。
6. リアル書店と電子書籍の連携
TSUTAYAの店頭でも、BookLive!の電子書籍が購入できる。また、TSUTAYA、BookLive!でそれぞれ購入した書籍は、共通本棚でまとめて管理可能。
↑紙も電子もまとめて管理するので買い逃しや重複買いも避けられそう。 |
いずれのサービスも詳細や開始時期は未定とされているが、年内に順次開始していくとのこと。
また、これらのサービスは、BookLiveとTSUTAYA間だけでなく、“電子書籍とリアル書店をつなぐ新しいプラットフォーム”としてほかの書店や電子書籍ストアにも提供していく。今後は、賛同してくれる出版社、書店、ストアなどを幅広く募集し、“いつでも、どこでも、だれにでも”使いやすい市場を目指すとしている。
↑今日時点では、ほかの書店との連携は“まったくの白紙”。今回の発表をきっかけに幅広く呼び掛けたいとのこと。 |
●まずは“電子書籍の市場”を広げること
質疑応答で、「BookLiveとしての利点が薄いのでは?」という質問に対し、BookLive代表取締役の淡野正氏は「本の市場は紙の方がまだ圧倒的に大きい。AirBookなどのサービスはすべて無料というわけではなく、有料のサービスも予定している。まずは、ふだん書店に足を運んでいる(BookLiveの)会員になってもらうことが大きなメリット」と答えている。
また、CCC TSUTAYAカンパニー副社長の中西一雄氏は、「我々書店としての課題は、雑誌や本を並べるだけで、これまで魅力的な書店作りができなかった。そこでTSUTAYAでは、カフェや図書館など、ライフスタイル型のさまざまな試みを行ってきた。こうした課題があったから、今回のBookLiveとの提携にいたった」と語った。
2社の提携が持ち上がったのは、つい3ヵ月前とのこと。そのためかサービス開始時期だけでなく、開始時に提供されるコンテンツ数や具体的なサービス内容については一切未定でほとんど明らかにされなかった。今週開催されるブックフェアに向けて、とりあえず提携にまで至ったという発表を行なったようだ。
↑堅い握手を交わす、BookLive代表取締役の淡野正氏(写真左)と、CCC TSUTAYAカンパニー副社長の中西一雄氏。 |
●気になる個人情報の問題は?
Tポイントの連携によって気になるのが個人情報の扱いだ。現状、BookLive!は電子書籍の購入履歴とメールアドレスなどを保有。一方で、CCCはメールアドレスやTカードを基にしたさまざまな購入履歴、住所や電話番号などを多岐にわたる個人情報をもつ。BookLive広報部によると、「“共通本棚”が始まればCCCと電子と紙の書籍の購入履歴を共有することになるが、住所や電話番号などそのほかの情報は共有しない」としている。
また、CCCでは自社のネットサービス『TSUTAYA.com』において『TSUTAYA.com eBOOKs』という電子書籍サービスを行なっているが、こちらはあくまで総合サービスのひとつとして提携後も現存していくとのこと。
電子書籍ストア大手のBookLive!と、4878万人ものTカード会員を有するCCCが提携した新しい紙と電子のサービスは、ユーザーにとって本当に便利なものになることを期待したい。
なお、7月2日より開催される『第21回 東京国際ブックフェア』のBookLive!コーナーにおいて、今回発表した一部のサービスを展示し、『AirBook』などが体験できる。
●関連サイト
・電子書籍ストア BookLive!
・TSUTAYAオンライン
・第21回 東京国際ブックフェア
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