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【私のハマった3冊】 象牙の塔に秘められた真実を暴露する3つの“告白”

2014年05月24日 18時00分更新

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シークレット・レース
著 タイラー・ハミルトン、ダニエル・コイル
小学館文庫
957円

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
著 カレン・フェラン
大和書房
1728円

読んでいない本について堂々と語る方法
著 ピエール・バイヤール
筑摩書房
2052円

 

“現代のベートーベン”ともてはやされた佐村河内守の作品は、実は自分が作曲したもので、しかも“マーラーの真似”だったという新垣隆氏の“告白”は、日本の音楽業界の威信を揺るがす事件となった。クラシック音楽のように権威を与えられ世間から隔絶された世界では、一般の常識からかけ離れた独自の価値観がときに暴走する。

 そんな象牙の塔に暮らす人々を支える虚構を暴いた3つの“告白”を紹介したい。『シークレット・レース』は、アテネ五輪の金メダリストであるタイラー・ハミルトンが、自転車レース業界に蔓延したドーピングの実態を詳細に明かした力作だ。

 同時に彼の同僚でありツール・ド・フランス7連覇の偉業を成した英雄ランス・アームストロングの実像も赤裸々に描かれている。ランスの世界的なベストセラー自伝『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』を先に読んでおくと、おもしろさが倍増するとともに、その虚構の根深さに愕然とさせられる。

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』は、現代社会の寵児であるビジネスコンサルタントの手法は実は間違いだらけだと、大手コンサルティングファームを渡り歩いた著者が明かした本。人間は数値で管理することもお金で釣ることもできないと断言し、戦略を立てたり、業績を細かく数値で管理したり、社員をランク分けすることは、かえって企業に悪影響を与える。本当に大切なのは環境を理解し、コミュニケーションを改善することだと説く。ビジネスマンなら読んでおいて損はない。

 最後に『読んでない本について堂々と語る方法』はフランス文学の教授である著者が、本を読まずに書評をする方法を堂々と解説した本。そもそも本を語るのに読む必要があるのか? と茶目っ気たっぷりに疑問を投げかけ、読まなくても何の問題もないと証明してみせる。

 さて、今回のこの記事も、本当に読んで書いたと思いますか?
 

根岸智幸
電子書籍ミニッツブック (外部サイト) やってます。

※本記事は週刊アスキー6/3号(5月20日発売)の記事を転載したものです。

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