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今どき、「ホ」女子に聞くスマホ事情~文月悠光さん(part2)~

2014年05月22日 17時30分更新

今回のホ女子 文月悠光

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文月悠光 Fuzuki Yumi
詩人。'91年北海道生まれ、東京在住。'10年高校3年の時、第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で中原中也賞を最年少受賞。同年、丸山豊記念現代詩賞を受賞。'13年、第2詩集『屋根よりも深々と』刊行。毎週月曜日の朝6時40分よりJ-WAVEで詩を朗読中。NHK・Eテレ『青山ワンセグ開発』6月期に出演予定。講談社ミスiD2014柚木麻子賞受賞。

オフィシャルサイト
http://www.fuzukiyumi.com/
Twitter
https://twitter.com/luna_yumi
うつくしい詩(ナナロク社ホームページでの詩の連載)
http://www.nanarokusha.com/entameartist/huzu

──スマホを仕事で使っていますか?
 Gmailの確認に使っています。TwitterやFacebookをチェックしたりもします。あとは思いついた言葉をメモ帳や、メールに下書き保存したりしています。それをまた手書きノートに写すんですけど(笑)。友だちの歌人は短歌の制作に携帯を活用している人が多いですね。短歌は31音と短いので、携帯でも打つことができます。botを作って、作品をそのままTwitterのタイムラインに流している人もいますね。


──ただ、すべてデジタルでやるのは抵抗がある、という人もいそうですよね。
 私は基本、詩はすべて手書きでやっていますが、デジタルがダメというわけではないです。でも、手書きじゃないといけないっていう人もいます。
 中高生のときに、地元の新聞の文芸賞などに応募していましたが、「なぜワープロの原稿で応募してきたのか」という批判をされることが多かったんです。手書きじゃないというだけでマイナスポイントをつけられてしまうらしいんです。いま思うと随分堅苦しい気がしますが、そういう価値観の人もいるんだなと思いました。いまはスマホで詩を書いていても、そんなに非難されるという印象はないですね。詩人の谷川俊太郎さんはMacを使って詩を書いていますし、電子書籍やアプリも出していたりします。

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──どういう感じで手書きのノートに書いているのでしょうか?
 こちらが下書きノートなんですけど……。


──すごいですね!
 思いついたことをその場で書いていって、あとで使いたいところに蛍光ペンで印をつけています。そして、どこかの詩で使ったものはチェックを入れてわかるようにしていますね。ただこれは何でも書くメモ用のノートで、仕事ごとにノートを分けて使っています。

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──どういう流れで詩はできあがっていくのでしょうか?
 この下書きノートはメモ程度です。こういう詩を書こうという意識をあえて取り外して書いていることのほうが多くて、意識の外から書いています。自分自身の意識があると、全部同じような言葉になってしまうんです。意識の外だから、書いた瞬間に内容は忘れてしまいます。
 もちろん、書いているときは全部必要だと思って書いてはいるんですけど、ひと晩たって読み返してみると必要のないものもあるんです。だから、あとで見返して使いたいものを見つける感じです。実際に詩を作るときはクライアントからテーマを指定されることが多いので、それに合った言葉(文章)をこの下書きノートから見つけてきます。例えばナナロク社のホームページでの連載詩「うつくしい詩」では、恋愛をモチーフに詩を書いています。遠距離恋愛の話だったら「こういう感じの女性がいいよね」みたいな打ち合わせがあり、その女性の恋愛観に近い言葉を下書きから引っ張ってきてから、実際に書く順番を決めていくわけです。同じことを書いていても、唐突にその1行が出てくるのと、それまでの流れを踏まえての1行というのは全然響き方が違うんですよ。だから、下書きから使える1行を見つけても、その使い方を間違えてしまうと伝わらないものになってしまいます。
 いまは、この詩にこういう言葉を置いてみたいっていうものを多めにワーッと並べてから、流れで順番を組み替えていくのがいいかなと思っていますね。そうして構成したものを、いらない紙の裏に書いていきます。中学生のころから詩を投稿しているので、このやり方を変えられないんですよ(笑)。原稿用紙に書くと緊張するから、いらない紙に書いています。そして読み返してみて修正しながら、紙の裏に何度も書き写して完成になります。

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──すべてデジタルでやったら、並べ替えも修正も早いですよね。
 そうなんですけど、手で書き写すことによって、自分の中でひとつひとつ確認できるんです。まったく直さないときでも、いちおう書き写して「これでよし」っていう作業もあります。書き写すときに頭の中でまた再生しながら、これくらいの解像度でいいのだろうか? ということを考えています。検証しながら書いている感じです。
 なぜパソコンで詩を書かないのかという理由のひとつに、書いた瞬間に活字で出てきてしまうので格好がついてしまうという点があります。それに甘えちゃうんじゃないかなって思うんです。だから手書きにこだわりたいですね。
 最近は、こういう下書きノートを見せることに抵抗感がなくなってきました。字は汚いし、こんなの見せて何になるんだ? って思ったんですけど、ミスiD(講談社主催のアイドルオーディション)の選考期間中に、「詩人がどうやって詩を書いているのかわからない」という声があって、手書きのプロットなどをスマホで写真に撮ってアップしたら「面白い」って言ってくれる人が多かったんです。


──まったく触れられない世界なので、そのアプローチを見られるだけでも面白いですよね。僕もとても驚きました。
 そうなんですね。私からすると、例えば仕事のメモ書きと変わらない感覚なんですけど(笑)。日記もノートにビッシリ、ページを埋めるように書いていますね。基本的にメモ魔なんですよ。とにかく思いついたことはすべて書いています。記憶力がないので(笑)。でも、忘れちゃうというよりは、忘れちゃうかもしれないっていう恐怖心で書いているほうが強いですね。
 こういうノートが家にはたくさんあって、日記用とか思いついたものを書く用とか、夢日記用とか人の言葉でいいなと思ったものを書く用とか、読書感想用とか書評用とか……いろいろと分かれています。ただ、作品にする用の下書きノートは見返しますけど、ほかのノートはあとで見返すかというと微妙で、自分の気持ちを沈めるために書いている感じです。仕事も書くことなんですけど、いちばんのストレス解消も書くことだったりするんです(笑)。

新作の詩を朗読してもらいました!

 今回、このインタビューコーナー用に、文月さんに詩を制作していただき、朗読してもらいました。『まぶたのはじまり』という作品です。撮影中のメイキング映像に載せて、文月さんの朗読を楽しんでください。

まぶたのはじまり

うっすらとした空の水色が憎かった。
果てしない平らかさに怒りを打ち上げた。
わたしは死んでいくのに
世界にはいつも続きがあった。
見つめていなければ、
大抵のものは損なわれていく。
この目はただ二つ。
胸の奥に眠るのはいくつ?
忘れずに揺り起こすのだ。
されば、赤子のまぶたへ切れ目を入れる
神のかがやくナイフも見える。

見つめ合うことを許さない太陽はずるい。
そのまぶしいずるさによって、
わたしという光景を焼きつけていく。
つかまえておけるのは目の前のものだけ。
なのに遠くを見るふしぎ。

視線の流れる先々で
わたしは続きに出会えるはずだ。
雲へ背を伸ばし、うたうように耳打ちしたい。
お腹の中での記憶のこと、
拍を刻んだつま先のこと、
指紋つきのセロテープのこと、
夜に射す夢の明るさのこと――
ことづけて。

開かれたまぶたへ
新たに光はおしよせる。
ふたたびこの世を生きのびていく。
世界はいつもはじまっていた。

文月悠光のスマホ事情

最後に、スマホに関するアンケートに答えてもらいました。今どき女子の、スマホ事情がわかります!!

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