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【私のハマった3冊】人はなぜ料理をするのか 好奇心と食欲を満足させる3冊

2014年05月17日 14時00分更新

980book

人間は料理をする 上・下
著 マイケル・ポーラン
NTT出版
各2808円

火の賜物
著 リチャード・ランガム
NTT出版
2592円

食品偽装の歴史
著 ビー・ウィルソン
白水社
3240円

 料理のいいところは、料理以外の一切を考えずに済むところ。下ごしらえの順序、コンロと電子レンジの有効活用、スキマ時間は洗い物……常に没頭していられるから、悩み事は消えている。だけど、カレーを煮込む間や、イースト菌の発酵を待つひととき、好奇心が湧いてくる。発酵は普遍的なのに、その食材は文化によるのはなぜだろう。麦芽の色とまるで違う、チョークのように白い小麦粉は変だ。そして、究極の疑問“なぜ、人は料理をするのだろう”に行きあたる。キッチンからの好奇心を満足させる三冊を選んでみた。

『人間は料理をする』は、キッチンから見た文明論。火・水・空気・土に因んだ料理に挑戦しながら、加工食品と健康のパラドックスを嘆き、人類が農耕を始めたのは酒のためと語り、細菌を含んだ超個体としての人の本質に迫るスゴ本なり。ただし、料理をナチュラル至高(誤字ではない)のDIYみたく扱うのが鼻につく。食事は毎日するものだから、料理も毎日するものなのに、たまにしか包丁を握らないフード左翼の典型ですな。

『火の賜物』は、キッチンから見た人類史。ヒトは料理した食物に適応したと主張する。つまり、料理によって、延々と咀嚼しつづける生活から開放され、時間とエネルギーを他の目的に使えるようになったというのだ。体格に比べて小さい歯や顎、コンパクトな消化器官、生態、結婚という慣習は、料理によって条件づけられてきたという論旨は、説得力を持つ。なぜ人は料理をするのかではなく、料理をするからヒトになったんだね。

『食品偽装の歴史』は、キッチンから見た黒歴史。混ぜ物、偽装、保存料・添加物、遺伝子操作など、食品をめぐるダークサイドを徹底的に暴いた一冊。これは、食品の大量生産の歴史であり、詐欺と詐欺を証明する科学史であり、より美味しく食べたい欲望を満たす食品加工の技術史なのだ。好奇心と食欲を満足させる三作、ご堪能あれ。
 

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー5/27号(5月13日発売)の記事を転載したものです。

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