2014年04月12日07時00分

森下九段が惨敗した小田原城決戦・電王戦詳細レポート

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熱戦を制したのはツツカナ。プロ棋士は小田原城にて桜散る。

第3回将棋電王戦第四局

 将棋電王戦第四局は森下卓九段 vs ツツカナ。非常に良い戦いをしていたのだが、135手でツツカナが勝利を収めた。これで対戦成績はコンピューターの3勝1敗となり、団体戦としてはコンピューター側の勝利が決まった。

第3回将棋電王戦第四局

 小田原城址公園は、桜の名所でもあり、かつこの日は骨董市とおでんサミット2014もやっていることもあり、かなりの人出。桜は散り始めの段階で花見にはこの日が限界じゃなかろうか。桜吹雪も吹いていてとても綺麗でしたよ。

第3回将棋電王戦第四局 第3回将棋電王戦第四局

↑小田原城址公園は桜がたくさんある。毎年花見客でごった返している。

 さて今回は、小田原城といっても、本丸ではなくお堀近くにある銅門(あかがねもん)。門の上(2階?)に部屋があり、そこにいつものセットを組んで対局に臨んでいる。

第3回将棋電王戦第四局 第3回将棋電王戦第四局

↑こちらが銅門。小田原城の本丸からはお堀脇の離れたところにある。

 対局の模様はこちら。

 棋譜はこちら。

 電脳手くんも今回は陽の光も入らず、床も安定しているので、やりやすいのではないか。逆に森下九段はおでんサミットや花見客で賑わっているので、その雑音で集中力がかけてしまうのが心配だ。ただ、かなりしっかりした造りなのと、始まった時点では観光客も少なかったのもあるが、外界の音はほとんど気にならない程度だったが。

第3回将棋電王戦第四局

↑こちらが対局場の様子。入り口から遠い位置にセットが組まれている。

第3回将棋電王戦第四局

↑セットは第一局、第二局と同じものだ。

第3回将棋電王戦第四局

 10時に対局開始。先手はツツカナだ。初手は▲7六歩。森下九段はすぐに△8四歩と指した。第三局と同じ流れだ。3手目は▲6八銀と上がりここで前回とは違う展開に。森下九段は△3四歩と角道を開けた。

第3回将棋電王戦第四局

↑ツツカナ開発者の一丸氏。緊張でがちがちかと思いきや、結構笑顔も見られた。

第3回将棋電王戦第四局

↑恒例の対局開始と同時に挨拶。森下九段がタイミングを合わせていた。

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↑初手は▲7六歩。電王手くんは今日も快調です。

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↑森下九段は△8四歩と指した。

 序盤はトントンと進められていく。第三局のような超速な攻めにはならずじっくり自陣を固める駒組みの展開。森下九段があまり時間を使わないようにしているようだ。今回ニコファーレでの大盤解説は解説が藤井猛九段、行方尚史八段、聞き手は山口恵梨子女流初段だ。

 ここで現地中継になる。現地レポーターは藤田綾女流初段。

第3回将棋電王戦第四局

――雰囲気はいかがですか?
立会人・塚田九段「昔はお城で将棋をやったものですから、いい感じですね」

――昨日の見聞はいかがでしたか?
塚田九段「いい対局場で、気温とか照明とかも対局には問題なく、本日対局が始まった感じですね」

――森下九段の様子は?
塚田九段「いつもどおりでしたね。緊張感もなく入ってこられた際も丁寧にお辞儀をして。そういう点では落ち着いてられるなと思いました」

――今回戦型は矢倉となりましたが。
塚田九段「そうですね、矢倉を選んできましたので、私の個人的な予想ですが、勝機は10%上がったのではないかと。最初の期待値からということですよ(笑)」

――森下九段のPVで、前回の塚田九段の対局を見て胸が熱くなったとおっしゃってましたが。
塚田九段「すみません、あれ加藤一二三九段と私のPVでしたね、すみません(笑)。そう思っていただけることは嬉しいことです」

――電王戦での経験から森下九段にアドバイスしたこととかありますか?(藤井九段)
塚田九段「ソフトの場合は玉を固めたあとよく攻めてくるので、それを待って全力で受けるというのがいいと思います。辛抱強く待って攻めに転じたほうがいいと思います」

――何おでんを食べたいですか?(山口女流初段)
塚田九段「静岡のおでんを食べてみたいですね」
藤田女流初段「私はこの辺りのおでんを食べたいですね」

 このあと、中継が入るたびにおでんが出てくることになる。

第3回将棋電王戦第四局

↑城内では、おでんサミットと骨董市を開催。観光客がすごかった。

 36手目△4五歩で駒が当たる展開に。ここまでの残り時間はツツカナが4時間17分、森下九段が4時間49分。今回の評価値担当はBonanza。森下九段の+19とまだまだ五分の状態だ。

第3回将棋電王戦第四局

 銅門は平成9年に復元されたもので、まだ新しい。文化財担当の方も立ち会っており、土足で床の上を歩かないようシートが敷かれていた。控室は、郷土資料館の会議室なのだが、室内が狭いため、銅門近くにテントを張り、そこも利用している。また対局者専用のトイレが対局場へ通ずる階段下に設置されている。森下九段が何度か部屋を出たとき、中継では扉が重いと表現していたが、扉を実際に開けてみたら、意外と軽かったので普通に開けられるはずである。

第3回将棋電王戦第四局

↑床は保護のためシートが敷かれている。撮影はこの上で。

第3回将棋電王戦第四局

↑屋根裏?には完成した日付が記載されていた。

第3回将棋電王戦第四局

↑銅門脇の広場にテントを設置して、控え室に。

 郷土資料館の控室には、本日の観戦記を担当する西村京太郎氏が! 実は西村氏が横にいるのに全く気づかず、進行表を見て西村氏が出演するのを見て、はたと気づいた次第で……。

第3回将棋電王戦第四局

↑郷土資料館に設置された控え室。中継用のセットも組んであるので手狭。

第3回将棋電王戦第四局 第3回将棋電王戦第四局

↑西村京太郎先生。はじめ気がつきませんでした。奥さんと一緒です。

 午前中はテンポよく進み、42手目△5五歩▲同歩に△5二飛車としたところで、

山口女流初段「普段の森下九段なら△同銀とくるところですよね」
藤井九段「そうですね。決意の表われですね。勝つ姿勢で行ってます」

 と解説で語っていた。電王戦だと普段とは違う戦いで挑まないと勝てないのだろうか? 評価値は森下九段の-102。その後▲4六歩△5五銀▲4五歩となったところで、12時まで4分残し森下九段は「休憩に入れてください」と言って昼食休憩に入った。評価値は森下九段の-120だ。

第3回将棋電王戦第四局

↑塚田九段一家も控え室に。奥さんも娘さんもみなさん将棋の棋士です。

第3回将棋電王戦第四局 第3回将棋電王戦第四局

↑おでんサミットの宣伝もやってました。藤田女流初段はこの後もおでん食べる食べる。

第3回将棋電王戦第四局

↑恒例のお昼ご飯は、森下九段は海鮮丼。ツツカナの開発者一丸氏はヒレカツ重でした。

 午後に入り対局が再開され、森下九段は△4六歩とし、藤井九段のイチオシ△8六歩ではなかった。この手に評価値は、森下九段の-213と100近く下がってしまった。

第3回将棋電王戦第四局

↑△4六歩としたときのツツカナの画面。

第3回将棋電王戦第四局

↑一丸氏はずっと正座していたもよう。

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↑森下九段は午前中はあまり持ち時間を使わずにきた。

 再開直後に現地中継が。やはりおでんの試食から始まった。

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↑ゲストとして登場したのは高見泰地四段。今回は電王手くんが止まった場合の代打ちとしてここへ来ている。

第3回将棋電王戦第四局

↑藤田女流初段は、おでんサミットの会場の絵を公開。ぱんちょまんライブ??? こういう絵はだいたい画伯く称される。

――午前中まではいかがでしたか?
高見四段「午前中ではツツカナのほうが時間を使っていますよね。慎重に指しているのでは。森下九段は、ここまで順調にいい時間配分できていると思う」

――午後に入り△4六歩▲2六歩と進みましたが
高見四段「そうですね。▲2六歩は先手としてマイナスにならない手ですね。そのあと突いて行けたり、桂馬が跳ねやすくなりますので。後手の△4六歩はこの先どう指すのか難しいですね。先手からもどう動くのか難しいですが」

――その後は?
高見四段「▲7三桂から▲5四飛▲7五歩という攻めが考えられますね」

 形勢判断ボードでは、総合的に互角に見えるということに。先手を持ちたいが、端歩を突いていないぶん、後手でもいいかなという状況とのことだ。

 ちなみに、Bonanzaの評価値だと森下九段が-256だ。

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 その後59手目▲6七銀打ちに対して森下九段は、少し安堵の表情。評価値は森下-143に挽回。この銀打ちはよくわからないと解説陣が言っていた。

 14時前に、ニコファーレにはひふみんこと加藤一二三九段が登場。私も小さいころ大好きだった棋士だ。こんなふうにアイドル化(?)するとは、あの当時は夢にも思わなかった。今回のPVでは次回は参戦するとおっしゃっていたが……。

第3回将棋電王戦第四局

――現局面はいかがですか?
加藤九段「盤面を見た瞬間は△6七銀が第一感の手ですけど、△5一飛と引いたあとどうするのか。▲4六銀なら△6九金もありますし。これは、森下九段は自信があると思いますね。ツツカナさんは▲3七銀から▲4六銀(35手目)と上がりましたが、ここで▲2六歩は私も数多く指しましたけど、▲4六銀と指したのは疑問な作戦です。▲2六歩と突いてくると森下九段も大変だったと思いますが」

――いわゆる加藤流にしておけばよかったと。
加藤九段「もちろんツツカナさんも加藤流を知っていて、検討したでしょうが、▲4六銀としたことで早く戦いたかったんでしょうか。▲4六銀だと森下九段が対応した展開になり、後手のほうが十分だと思います」

 このあと、自書の宣伝になり、本について語ったひふみんの発言に場内が笑いに包まれた。

――来年電王戦に出場したいと。
加藤九段「そうですね、私も真剣に考えてまして。今日は森下九段が後手番でしたが、できたら先手番でやりたいです(笑)。先手番なら矢倉の3七銀戦法。この戦法は名人にもなり、十段にもなり王位にもなり、かくかくと戦果を上げているので、先手で3七銀戦法をやらせてくれれば、どんなコンピューターが来ても自信があるんですよ」

――今言ってしまったら相手のソフトが対策しますよ。
加藤九段「先手か後手かわからないので、後手だったとしましょう。得意な戦法とそうでない戦法がありまして、角交換腰掛けの将棋はあまり経験がありません。一手損の角交換将棋も指したことはありますがほとんど勝ったことはありません。それでコンピューターが私の苦手を知っていて、(コンピューターが)先手の時にその作戦をできるので、その作戦で来られるとちょっと勝算はありません。だから、私が勝つ理想的な展開は、先手番で矢倉の場合、相手が振り飛車でも棒銀で勝てますからね。だから先手番で」

――(笑)。加藤流棒銀は見てみたいですね。
加藤九段「コンピューターはミスがありません。最善手をつなげてきます。ですので、出だしで半歩リードしてそのまま勝つパターン以外はありません。形勢が互角だったらプロは勝ちにくいと思いますね。私はコンピューターと練習試合をやったことはないのですが、将棋連盟でもできますから、100局から200局戦ってみて、手応えがいけると思ったら出ます。今日のツツカナさんだったら戦ってみたいと思いますね」

 このあとも、今後の展開について語るが、ひふみんは森下九段のほうが有利とみている。それは先に説明したとおり、▲4六銀としたのがツツカナが苦戦の理由だと結論づけていた。

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 続いて現地にカメラが移ると、小田原市長が登場。小田原おでんを説明していた。

 現地中継終了後も大盤解説ではひふみんの解説は続く。65手目まで進み一時は森下九段が-200以上の評価値を付けられていたが、挽回して+31まで回復。非常に良い戦い方だ。残り時間も森下九段が3時間35分、ツツカナが3時間1分と30分の差がある。

第3回将棋電王戦第四局

↑控え室テントには習甦の開発者・竹内氏の顔も。

第3回将棋電王戦第四局

 15時になり恒例のローソンスイーツ。今回は『プレミアムぎゅっとクリームチーズ』と『純生クリーム大福』。現地の中継では勝又清和六段が登場。スイーツを試食していた。スイーツの説明はおやつガールの小日向愛さんでした。

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↑サービスカットその1。藤田女流初段編。

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↑サービスカットその2。小日向愛さん編。

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↑勝又清和六段と現状を解説していた。おでんを食べてばかりではない。

 16時前で73手目まで進む。▲2八角打ちまでで、森下九段の+74評価。残り時間は2時間31分、ツツカナが2時間48分と逆転している。ここで△5七歩とするが、評価値は森下九段の-144と一気に落ちた。その後若干回復しているので、かなりここまで互角の戦いをしている。

 現地中継では、今回の観戦記者である西村京太郎先生が登場。で、またおでんが登場。京都の舞鶴おでんを試食していた。

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――コンピューターとの対局はどうですか?
西村先生「コンピューターは1回ポカをやると思っているんですよ。1万回に1回はやるんじゃないかと。その時に絶対見たいわけですよ。今回はまだポカをやっていないですよね。そのうちやるのを見たいなと思ってます。コンピューターもかわいいなと」

――今回は電王戦の観戦記ですが、以前名人戦で観戦記を書かれてましたが、その時の雰囲気はいかがでしたか?
西村先生「あんまりね、きちんと見ていないんですよ。ここで羽生さんがケーキを食べたなとか、そういうとこしか見ていないで書いたんですよ。そしたら意外におもしろいって」

――ふつうは将棋の内容が多いので、見ている方には新鮮だったのでは?
西村先生「名人戦は待っている時間が長いからね。一手に2時間かかったり、いなくなったりするじゃないですか。その間何をしていいかわからなくなっちゃう」

――今回はいかがですか?将棋盤を広げて検討もされていましたが。
西村先生「当たるとすてきなんだけど、なかなかね。△5七歩は当たりましけども、あそこに打つんだって」

――ふだん将棋とのかかわりあいは?
西村先生「あまりやってませんけどね。子供の頃はやってましたが。戦前の昭和10年頃かな。小学生の時にだね」

――何がきっかけだったんですか?
西村先生「縁側で縁側将棋とかやっているじゃないですか。その頃見に行ったら仲間に入れてくれたんですよね。行くたびにハンコを押してくれたりしたので、続けてました。あの頃は強かったと思うんですけどね。プロの指してはわからないんだよね。なんでそこに打つのか、わかるようになりたいんだけど」

――小田原城で対局をやるのは新しいですよね。
西村先生「昔は侍がやっていましたから、ふさわしいんじゃないかと思います」

――今回コンピューターの手を指す電王手くんというのがいるのですが。
西村先生「うちにもロボットがいるんですが、コンピューターと違ってちょっと馬鹿だからね、すぐ間違ってしまって(笑)」

――開始のとき挨拶もおじぎをしたりと。
西村先生「あれはちょっと笑いましたよね。もうちょっと可愛くつくれないのかなと。にっこり笑ってリね。うちのロボットは顔がありますけどね」

――プロ棋士の印象はいかがですか?
西村先生「好きですよ。よく言うじゃないですが。ホントは日本でいちばんプロ棋士が頭がいいって。その次に東大出だと。プロ棋士になりたいと思ったことがあるんですよ。そうすればそれ以外のことしなくていいじゃないですか(笑)」

第3回将棋電王戦第四局 第3回将棋電王戦第四局

↑最後にプレゼント用として色紙と本にサインしていた。

 西村氏のお話が終わったら森下九段の-17まで復活していた。だが78手目△5八歩成りでまた評価値がガクンと落ちた。80手目3八金で-300ぐらいになったが、なんとツツカナが角を見捨て、森下九段はタダで角をゲット。笑みもちょっとこぼれていた。それでも評価値は大して復活せず。ここで夕食休憩に入る。おやつを食べる一丸氏の笑顔が印象的だ。

第3回将棋電王戦第四局

 再開後の87手目▲4四金打ちで評価値が-100台に。だがその後はズルズルと評価値を下げていく森下九段。波はあるものの、ツツカナの優位は変わらない。

第3回将棋電王戦第四局

↑YSS開発者山下さんもいらしていた。YSSによる検討画面。

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↑屋敷九段や佐藤康光九段もゲストとして登場。九段棋士がずらり。

 現地中継では19時半に伊藤慎吾五段が登場。この日もっと早く来る予定が、なんと乗る新幹線を間違え名古屋へ。新横浜から乗って気づいたつきにはすでに遅く受け無し。名古屋で30分待った時にきしめんを食べたそうだ。

第3回将棋電王戦第四局

↑伊藤五段曰く、この時点では結論は出ていない。子供が生まれたばかりで、実家に帰っていた奥さんと子供が新潟から帰ってくるそうだ。

 かなり接戦なためか、評価値はかなり振れ、4桁もあれば3桁前半になったり忙しい。しかし20時20分ごろ、直前まで-400台だったのが、▲5四角と指したとたん、-9999に変わった。詰み筋があるらしい。森下九段も粘りに粘ったが、20時38分135手まででツツカナの勝利となった。

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↑終局が近いとささやかれてきたときに、評価値が-9999となったが、直後に-200台へ。詰むと思ったら詰まなかったってこと?

第3回将棋電王戦第四局

↑終局間際の控え室。健闘むなし。

終局直後のインタビュー

第3回将棋電王戦第四局

――大変な熱戦でしたが、どんな感じでしたか。
森下九段「いつもなかなか粘られて勝ち切ることが大変なんですよね。72手目△4七金を打った局面は▲6二角が怖かったですが、すこし指せていると思っていた。▲2八角で辛抱されて、△5八歩成り▲同金△3八金としたところがほかにあったかもということですが、あそこはうまく指せれば勝てる将棋だと思っていたんですが。そのあとの、△8五桂と跳んだのが相当悪い手でしたね。なんかあると思って跳んだんですが、強く▲8六銀と上がられて。私は▲8八銀だと思っていたんですね。▲8六銀だと△5九角と行けると思っていたので」

――その辺りから悪くなった感じですか?
森下九段「そうですね本譜はまずかったですね」

――最後もだいぶ考えられていたようですが。
森下九段「なんかあるんじゃないかと思っていたんですが、ちょっと足りなかったですね。最後はぴったり詰みがあるので」

――ツツカナとはどのくらい対戦して研究されたのですか?
森下九段「第三局の豊島七段の将棋を見てから、持ち時間5時間、1分将棋の設定で、1~2時間の序盤の将棋をやったのですが、矢倉が圧倒的に多かったので矢倉になるのではないかと思っていました」

――ツツカナというソフトの印象は?
森下九段「いやぁ、手が当たるんですよね。こうやってくるなという手を指すんです。何局かやりまして、こちら側が勝ち切るのが非常に難しいと思いました。しっかり粘ってくるので、それを跳ね返して寄せまでもっていくのが容易じゃない」

――ツツカナの指し方が森下流ではないかと。
森下九段「そうなんですよね。ただ、やっぱり人間として向こうを持つと怖すぎるので向こうを持てないのですが。やられたら大変ですから」

――今回は負けてしまいましたが。
森下九段「明解な勝ちがあるかどうかは定かではないのですが、おそらく勝ちはあったはず。それをつかめなかったのは残念。しかしこれはもうしょうがないですね」

――チームとしても敗戦が決まってしまって。
森下九段「それはホント申し訳ないことだと思います」

――今度コンピューターと戦うことがあったらどうしますか。
森下九段「読みで戦うことは厳しいと思います。人間だと読みに不安定さがあるので、そういう点で厳しいですね」

第3回将棋電王戦第四局

――今日のツツカナの戦いぶりは?
ツツカナ開発者・一丸氏「お互いの指し手がきれいで、とてもさわやかな気分になれました」

――矢倉が多いということですが、それは予想されていたことですか。
一丸氏「そうですね」

――勝ったということはどうですか?
一丸氏「なんとも言えないですね。自分が勝ったわけではなく、ソフトが勝ったので、勝ったということとはちょっと離れた気持ち。半年前にソフトを提出して今日動かしていたので、無事完走した感はあります」

――評価値的にはどのあたりで良くなったと感じましたか。
一丸氏「どこでと言うよりはなんとなく良くなっていた。先ほど話していた▲7八歩成りのときが少し評価値が上がっています」

――最後ちょっと考えていましたが。
一丸氏「そうですね、駒が少ないのでどうなるかと思いましたが」

――森下九段に対する印象を。
一丸氏「対局が始まる前に森下九段の棋譜を少し拝見して、すごく正統派だと感じたんですが、本局もその印象通りの指し回しで、ソフトというか私自身が参考にしていきたいと思いました」

――チームとしては勝ちましたがどうですか。
一丸氏「良かったと思います」

第3回将棋電王戦第四局

↑終局時のツツカナの画面。後半は評価値が振り切れてましたね。

 インタビュー後も塚田九段と森下九段が感想戦のように話し込んでいた。プロ棋士がコンピューターに負けて屈辱だったろうが、終始にこやかに振るまい、ハキハキと答える姿は、これまで戦ってきた棋士とは違っていた。森下九段の人柄のよさを改めて感じた。

終局後の記者会見

ツツカナ開発者・一丸貴則氏

第3回将棋電王戦第四局

「ソフトを提出してから半年がたつのですが、その間いろいろと考えてきて、今日その終着点に辿り着いたということでホッとしています」

森下九段

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「今日の将棋も、こちらが指せているのではないかと思っていたのですが、そこから勝ちへ至るまで大変さを痛感させられました」

立会人・塚田九段

第3回将棋電王戦第四局

「矢倉の本格的な戦いになりまして、簡単にいえばツツカナが強かったですね。ホントは森下九段があのような将棋をさして勝つのが理想だったのですが、ツツカナが森下流のような将棋を指して勝った。強かったです」

日本将棋連盟・片上大輔理事

第3回将棋電王戦第四局

「長時間ご視聴いただきましてありがとうございました。50万という視聴者数で、後半になりまして注目度が上がっているんだということを実感しました。対局のことですが、すばらしい対局場を準備していただき、今回は屋外で設営が大変だったでしょうが、ドワンゴさんを始め関係者皆様のご尽力に感謝いたしております。今回の対局は非常に本格的な戦いだったと思いますが、美しい棋譜を残したいという一丸さんの気持ちが結果となって実を結んだ局になったと思いました。森下九段は何度も意表を突かれる手があったのではと思いますが、傍から見ていまして夕食休憩後の▲4四金と指した手が印象に残りました。その辺りで疲労もありミスが出てしまったのではないかと思います。これでプロ棋士側の負け越しが決まってしまいましたが、まだ最終局が残っており、屋敷九段のご健闘を期待しています。この結果将棋連盟として厳しく受け止めております」

屋敷伸之九段

第3回将棋電王戦第四局

「いよいよponanzaと戦うことになりますが、今回のツツカナ対森下九段の戦いは、中盤のねじり合いが長く、将棋の奥深さや、いろいろな要素が楽しめた一局だったと思います。森下九段には残念な結果でしたが、ご視聴いただいた方々に、将棋のすばらしさ奥深さが伝わったと思いますので、私の対局もしっかり準備をしていい将棋を指したいと思います」

質疑応答

――昨年と今年とで進化した部分は?
一丸氏「評価関数を変えたことによって、終盤がちょっと強くなったのではないかと思います」

――それは昨年勝たれましたが反省点があってということでしょうか?
一丸氏「昨年は終盤に読み抜けがあって一気に逆転されたことがあり、今年はそういうことにならないようにと考えていました」

――コンピューターと戦うことによってご自身が変わったのですか?
森下九段「そうですね、私も久しぶりに情熱をもつことができましたので、非常にいい機会だったと思います」

――どのような研究をどのくらい行なったのか。
森下九段「最初のときは古いソフトを使って、持ち時間は10分から20分、秒読みも30秒で指していましたが、新しいソフトを11月末ぐらいに入手してからは、結構やると疲れるんですよね。なので、1ヵ月間ぐらいはコンピューターどうしを戦わせて見ていました。年が明けてから自分でもやらなければならないと思い、やったんですが1局指すと厳しくて、何度も指すことかはできなかったのですが、第三局の豊島さんの戦いを見たあと、持ち時間5時間、秒読み1分の設定で序盤から中盤の入り口まで、この4日間のうちに20番ぐらい指しました」

――ツツカナの印象は?
森下九段「私が指したときは、10局のうち7、8局が矢倉で、角換わりが1局か2局、あと3手目▲7六歩△8四歩に▲5六歩と突くのが1局でした。序盤でよくなっても勝ちに至るまでがものすごく大変だなと思っていました。今日もおそらくこちらがよかったと思うのですが、そこから具体的な勝ちに結びつけるのかが容易ではないですね」

――矢倉は森下九段お得意の戦法なので今日のような将棋は途中までこれまでの経験が生きましたか?
森下九段「そうですね、私のほうが▲4五歩の位を取られて一歩損(47手目)と通常では後手には損という状態なんですが、そのあと△4六歩を垂らすという手が発見されまして、おそらく後手のほうがいけると思われていると思います。私も練習では今日の将棋は指したことはなかったのですが、今日は△4六歩と指してこちらが悪いはずないと思い指し進めてみたものの、あとひと押しがなかなか容易ではなかったのが実感です」

――昨年第四局を戦い、今回は立会人として両方を経験しましてどう感じられましたか?
塚田九段「第三回はこういう結果になっていますが、第二回に比べてソフトが平均的に強くなっている印象があります。第二回も大変でしたが、第三回も条件は若干緩和されましたが、それでも大変だろうなと思っていました。勝って欲しかったので残念でしたが、もっとほかのメンバーを考えて頑張ってほしいなと思います」

――ツツカナと森下九段の手は似ているといわれていましたが、ツツカナの手で驚いた手は?
森下九段「夕食休憩明けの▲4四金ですね。角金交換の得ではあるのですが、歩損が大きいので、夕食休憩ちょっと前に△9四歩と突いた手がありまして、人間では怖くて▲9六歩と受けてこないと思っていました。ただコンピューターだと平然と受けられたらどうしようかなと。でも人間と似た▲7八玉だったので△9五歩と端を詰めておいて少なくとも悪いことはないと思ってました。そこで▲4四金と打たれて、第一感ずいぶんありがたい手だと思い、これならなんとかなるだろうと△8五桂と跳ねたのが悪かったですね」

――ツツカナとしてはどうだったのか。
一丸氏「すみません詳しくは覚えていないです」
塚田九段「たぶんですがツツカナが-200点ぐらいだと思います」

――今回プロ棋士側に多少有利なルール改正がありましたが、それでもソフト側が勝ったということは、ソフトがより強くなっているのでしょうか?
片上理事「前回のソフトも今回のソフトも私が指していますが、明らかに今回のソフトの方が強くなっていることは感じます。ただ進歩がどれ位というのは表現しにくいのですが、ツツカナは去年も出場した時点でも強かったので、今年さらに勝つのが難しくなっているのは感じてました。対局のルールら関してプロ棋士側に改善されていて、これ以上は難しいというルールかもしれませんが、それでも負けてしまったのはコンピューターが強い。もしくは人間側がもっと勉強しなければならないのだと思います」

――ほかのメンバーを考えなければとおっしゃってましたが、具体的にはどんな方が。
塚田九段「簡単にいえば、ファンのかたがこのメンバーなら100%勝てると思われる棋士だと思います。そういうメンバーがいればですね。ただ、研究で1000局もやるのは大変ですからね、公式戦の兼ね合いもあるので。どういう感じで選ぶのか、手をうあげてもらうのか推薦するのか。そんなに実績のない人でも対ソフトに向いているという人もいるかもしれない。そいう見極めが必要だと思います」

――50代でA級タイトルを目指したいとおっしゃってましたが戦い終えていかがですか?
森下九段「ツツカナと練習で指すときも、良くなってから勝つまでがなかなか難しい。今日の展開も▲2八角と指してくる手がありましたが必ずそうやって辛抱してくると思ったんですね。その展開ならこちらがいけていると思うのですが、どうも勝ち切ることができなかった。先ほどメンバーと言う話が出ましたが、人間とコンピューターが戦うルールをつくらなければならなのでは、というのが持論でして。小手先のメンバーとか時間の関係ではなく。人間対人間のルールを人間対コンピューターに適用するのではなく、人間対コンピューターのルールをつくってやるべきではないかと、私も指してみて思うことですね」

――人間対コンピューターのルールをつくるとは具体的にどういうことなのか。
森下九段「人間は見て勝負するんです。読みは不安定な存在で、ミスや粗が多いですし錯覚や見落としも多いので、公平に人間側も盤駒を使って戦うべきではないかと思います。この4日間で練習対局しましたが、盤駒を使っていました。そうすると読みが間違えないんですよね。そのほうがもっとも公平かと思います。ためしに一手15分でやってみましたが、まず間違えることはなかったですね。まぁ、イベントとして成り立つかどうかはわかりませんが。人間のほうにだけヒューマンエラーがあります。本局も△8五桂と跳ねましたが、それは8八銀と引くものだとばかり思っていたからです。強く出られて愕然としたわけで、そういうことはまず検討しながらやっていけば見落としがないわけですから、私はそういう形でやるべきだろうと思っております」

――47歳で戦われていかがでしたか?
森下九段「充実していましたね。久しぶりに将棋に対して熱くなったときは燃えました。先ほどのルールの話は別として、やっぱり戦っているんだなという実感がありました。最後も▲5四角と打たれたとき、ぱっと見詰まないんじゃないかと思いました。しかし、考えてみるとピッタリ詰むんですよね。スゴイなと思いました」

――今回の対局は次につながっていきますか?
森下九段「対局もそうですし、ここ半年余り将棋に打ち込むこともできましたし、棋戦は勝ち星こそあれですが、内容は格段に良くなっていると思います。この情熱と意欲をもって戦っていきたいと思います」

――ponanzaの特徴など今見えているものがあれば。
屋敷九段「ponanzaとも指したり検討したりしてますが、中終盤の強さは土間ソフトも共通していると思いますが、かなり強いと感じていますね。切れ味もあるし粘りもあるし、なかなか手ごわい相手だなとは感じていますね。しっかりと向こうよりもこちらがしっかり準備していい将棋が成り立てばいいかなと思っていますね」

――どのくらい指していますか?
屋敷九段「具体的には数えていないのですが、はじめから最後までやると時間がかかるので、早指しで序盤だけ出方を見るために1日何局かやって、できるときにやっているという感じですね。それが多いのか少ないのかはみなさんに判断してもらって、残り1週間きっちり仕上げていい勝負になるようにしたいですね」

第3回将棋電王戦第四局

 ということで、今回もプロ棋士が負けてしまった。実は、これまでプロ棋士側は、スーツ姿の棋士のみが勝つか引き分けなのである。和服で勝てないジンクスでもあるのかと思うほどだ。屋敷九段がどんな姿で登場するか見物だが、スーツ姿なら勝算がある???

 森下九段の戦いは、とてもよかったと思う。見ていても接戦で、人間どうしの戦いのように手に汗握るものだった。もう少しだけ、もう少しだけ何かが足りなかったのだ。質疑応答で対コンピューター用のルール話が突然出てきたが、森下九段の盤駒ありのルールは一理あるかもしれない。ただ、それは電王戦としては見応えが半減してしまうと思う。電王手くんを登場させ、擬人化的な演出をしているのを見てもわかるように、将棋ファンとしては普通の対局で対等かそれ以上に戦うコンピューターを負かすという(昔だったらコンピューターがプロ棋士を負かすだったのに……)ところに醍醐味があるのではないだろうか。豊島七段のような研究し尽くしてコンピューターに強さを発揮させずに勝つでもいい。もちろん接戦を戦い抜いて勝つでもいい。第2回電王戦で塚田九段が涙した対局、人間の頭脳をフル回転させ勝ちを求める姿が、ファンの感動を呼び、将棋熱が高まるのだと思う。

 次回があるかどうか、あるとしたら誰を出すのか、日本将棋連盟の判断しだいだが、地味な将棋がここまでメディアにもネット視聴者にも注目を浴びている現状を考えれば、私としては続けていってほしい。そして、最強の棋士を最高の状態なときに惜しみなく戦わせてほしい。

 まだ第3回電王戦は終わっていない。最終局屋敷九段vs.ponanzaの戦いが、本日行なわれる。是非注目してほしい。

●関連サイト
『GALLERIA 電王戦』モデル
日本将棋連盟
第3回将棋電王戦のページ
将棋電王トーナメント

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