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なぜシリコンバレーばかりでイノベーションは起こるのか?その環境と理由

2014年04月16日 08時00分更新

 2014年4月9日から10日、IT起業が中心となる経済会議“新経済サミット2014”が開催、2日間にわたって複数のセッションが行なわれた。9日には安倍晋三内閣総理大臣が来賓挨拶に登場し、雇用などの規制を緩和する国家戦略特区で福岡市などでベンチャー創業支援を強力に推し進めるとした。なぜ、これほどまでに起業、ベンチャーが重要になってくるのか。

 その理由は10日に行なわれた、シリコンバレーで活躍する日本人が語る“シリコンバレーの日本人”、起業家を支援するベンチャーキャピタリストが日本の現状をに進言する“ベンチャーキャピタルとアントレプレナーシップ”の各セッションなどで明らかになった。

新経済サミット2014

“シリコンバレーの日本人”セッションには、左からモデレーターのWiL共同創業者の伊佐山元CEO、エバーノート日本法人外村仁会長、Treasure Dataの芳川裕誠CEO、ソースネクストの松田憲幸代表取締役社長、WHILLの杉江理CEOが登壇した。

 なぜシリコンバレーばかりに人が集まるのか、モデレーターの伊佐山氏がシリコンバレーの現状を説明。2011年の日本のベンチャーキャピタルの投資額1240億円に比べて、米国は3兆円近いと比較。この力がベンチャー企業を引きつけている。Googleなどシリコンバレーのベンチャーは米国GDPの21%を占める。

新経済サミット2014

 Googleを抜いた2000年以降に立ち上がったFacebookなどの代表的ベンチャーの時価総額は23兆円、日本のヤフー、楽天などを合わせても9兆円。これにGoogleやamazonを加えた場合は101兆円となり、日本のトヨタ、ソフトバンクなど上位10社を足してもかなわないという。このほとんどの企業がシリコンバレーのベンチャーから誕生した。ソースネクストの松田氏も「300万人も住んでいないのに、上位3社で時価総額100兆円はありえない集積度」という。

新経済サミット2014
新経済サミット2014

 また伊佐山氏が成功している経営者を4つの特徴で紹介。自信満々で嫌なやつ、世界は自分を中心に回っていると思っている“メガロマニア”、感度が高く自分のプロダクトを常に考えている“パラノイア”、当然不可欠な“グローバル”、人間的に愛される“ヒューメイン”。すべての要素を持っている人もいれば、色々な人がいる。

「シリコンバレーで通用するには、こんな人が行くべきだ」という問いに、シリコンバレーの日本人起業家ネットワークの代表を務めたこともあるエバーノートの外村氏は「大企業は言われたことをちゃんとやっておけ。失敗しないことが大事。日本で成功すればするほど、シリコンバレーに行けないメンタリティーになる」とし、「大企業の人はとんがった若い人を送り込んでほしい」という。

 WHILLの杉江氏は自身のエピソードを紹介、「メールでの戦い方が違う。メールはほぼチャット状態。資金調達の際、ダッシュボードに書き込むとパッと返事が来てメールをしつつ、3分席を離れたらメールが来なくなった。結論はみんな忙しい。重要なメールは離れない方が良いとシリコンバレーで戦うときはスピード感が必要と学んだ」と語った。

新経済サミット2014

 ソースネクストの松田氏は、製品サービスを見ても日本からグローバルなサービスが生まれないのは、日本人と世界では“明るさの感度”が違うと発見したと話す。日本のサービスは複雑につくってしまい彩色が多くきらきらして、「製品、サービスを日本的につくってしまうとまぶしくて見えない。それがお客さんを失っているのかなと。シリコンバレーではいろいろな人種の人がいて、あらゆる感度からチェックっされる。米国のベストバイと日本の量販店はぜんぜん違う。成功お客さんが決めている。今ならシリコンバレーしかない。日本でつくって世界に行くのではなく、世界で見てもらう」のが重要という。

 Treasure Dataの芳川氏は「シリコンバレーは非常に小さいので、マーケットじゃない。マーケットはアメリカ全土、あるいは世界中。シリコンバレーの良いところは人の流動性、会社のステージによって、必要な人材が違う。それがびしっと選べる。1億円の会社を10億にする責任者と、100億の会社を1000億にする責任者はぜんぜん違う。こういう人たちがそれぞれのステージでバシッと選べる。人材の流動の裏返しとして、これ以上は違うステージと思ったら、自ら辞めることもある。自分が求められている役割を真剣に考えている」とシリコンバレーの特徴を紹介していた。なぜシリコンバレーばかりでイノベーションは生まれるのか、その理由が各登壇者のエピソードから浮かび上がってくる。

新経済サミット2014

 また別に行なわれた“ベンチャーキャピタルとアントレプレナーシップ”のセッションでは、500 Startups マネージングパートナー&ファイヤーチーフのジョージ・ケラマン氏は、日本の大企業に対して眠っている貯金を「スタートアップを買収するか、コーポレートファンドをつくるか、他のベンチャーキャピタルファンドに投資するか、どれかやれ」と提言していた。

新経済サミット2014

 この2日間にわたって行なわれた“新経済サミット2014”での議論をふまえて、2014年4月14日には、イノベーション振興に関する緊急提言を、内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)の甘利明大臣宛に提出。そこには“日本をアジアの起業ハブとする”との目標が提案として組み込まれていた。

■関連サイト
新経済サミット2014
安倍首相がベンチャー促進に開業率10%を掲げる 新経済サミット2014(アスキークラウド)

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