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【私のハマった3冊】気にするべきは他人か自分か 大人版モラトリアムにつける薬は

2014年03月29日 10時00分更新

973BOOK

すっぴんは事件か?
著 姫野カオルコ
ちくま文庫
735円

承認をめぐる病
著 斎藤環
日本評論社
1785円

男と女の居酒屋作法
著 太田和彦
角川書店
1575円
 

『昭和の犬』で第150回直木賞を受賞した姫野カオルコさんの『すっぴんは事件か?』(ちくま文庫)は、「そういうことになっている」で進む事柄について、首を傾げ、疑問をはきだしているエッセイ集。タイトルと同じ内容の「すっぴんは事件か?」という項では、女性が化粧を行なう行為自体に異論はないけれど、スカートをはく日もあれば、パンツの日もある様に化粧をする日があるもよし、すっぴんの日があるもよしでいいのではないか。社会人の女性に対する同調圧力に対し疑問を呈している。ちなみに著者の姫野カオルコさんは直木賞の記者会見でもノーメイクであった。

『承認をめぐる病』(日本評論社)では、自己イメージが実は大勢の他人という存在があってこそ疑問を持つことができ、その存在が結果として自己を承認するということにつながっているのだとあった。例として、現在の若者における就労動機というものが、生活の糧を稼ぐというものから、仲間内でのキャラ確立を基礎とした承認欲求になっているというのだ。

 大勢の人はなぜ同調圧力から逃れられないのか、と考えてみたところで所詮、承認からの逸脱でしかなく、それは社会というものがあってこそ。いつまでモラトリアムみたいなことを言っているんだ。恥ずかしい。『男と女の居酒屋作法』(角川書店)では、「とりあえずひとりで酒を飲みに行ってみなさい」とこんな自分に助け舟を出してくれる。しゃべりたくない、黙っていたい、社会生活を営む以上は嫌でも口を開かなければいけない。そんな状況から抜け出すにはひとり居酒屋。当たり前とされている社会生活が嫌になる、他人がいるから自分が存在できているのだと理解してもやりきれないことが日常にはポコポコと現われるではないか。そんな時は、“群衆の中の孤独”を味わうことで、社会というものと向き合える体力を養い日々を過ごしていけばいいと教えてくれる。
 

あんろ
最近のツライことは、ベビーメタルの両脇の娘のお父さんになれないこと。音楽はヒップホップ好き。

※本記事は週刊アスキー4/29増刊号(3月24日発売)の記事を転載したものです。

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