週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ウェアラブルの未来が見えた! ドコモのアプリコンテスト結果発表 by遠藤諭

2014年03月25日 13時00分更新

 ドコモとドコモ・ベンチャーズ共催によるアプリコンテストの最終審査会と表彰式が、3月10日(月)に開催された。最優秀賞となった“OTONE GLASS(オトングラス)”をはじめウェアラブルやAR(拡張現実感)などで見るべきものがあり、スマホアプリもハードウェアとの組み合わせが注目されるこれからを印象付ける内容となった。

 今回のコンテストは、ドコモが開発者向けの情報提供を行うdocomo Developer support(外部サイト)の開設を記念したもので、ドコモ提供のAPIを使うことが応募条件となっている。また、関連イベントとして東京で2013年12月に第1回、2014年1月に第2回とハッカソン(関連記事)、同2月には仙台でアイディアソンを実施した。

図1 アプリコンテスト選考結果
ドコモ デバイスハッカソン
↑アプリコンテストの最終審査会に参加した作品とチーム。

 各部門賞は、図1のとおりとなっているが、これに第1回と第2回のハッカソン(それぞれ、ウェアラブルとデバイスをテーマに実施された)の優秀賞がノミネートして最優秀賞が競われた。ちなみに、第1回は“ミミミル”で受賞者は久田智之、第2回は“フライングキャッチ”で受賞者は中島幸一、中田栄の各氏(敬称略)。

 興味深いのは、最終審査の対象となった9チーム中にメガネのように体に装着するデバイスを自作したものが3チームもあったことだ。その中には審査員からGoogle Glassのプロトタイプに遜色ないと評されるデバイスもあった。最優秀賞も、シングルボードコンピュータ“Raspberry Pi”を搭載したARメガネを使った言語障害者向けリハビリツール“OTONE GLASS”で、彼らが“タンジブル・プロトタイピング”、“インタンジブル・プロトタイピング”と名付けた開発手法も興味深い。

ドコモ アプリコンテスト
↑最優秀賞を受賞した「OTONE GLASS」開発チーム(代表者:右から2人目の島影圭佑氏=首都大学東京、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に進学)とプレゼンターのドコモ執行役員研究開発推進部長栄藤稔氏(右)。
ドコモ アプリコンテスト
↑OTONE GLASSの本体は“Raspberry Pi”がフレームに付く無骨なつくりだが、利用者である父親ひとりにフィットするようフィードバックして調整されている。

 詳しくはすでにデモ動画も含めてウェブで公開されているので、そちらをご覧いただくのが早いが、失語症となった代表者の父親を開発パートナーとして、本人に最適化されたデバイス“father glass”を、コンセプト、最適化、造形の3段階のプロセスを踏んで開発。腕と若さにまかせてがむしゃらに作ったというのではなく、課題を明らかにすることがシステム開発の本質であることを再認識させてくれる内容だった。

ドコモ アプリコンテスト
↑最優秀賞を受賞した“OTONE GLASS”のプロトタイプをテストする開発チーム代表の島影圭佑氏の父。なお、“OTONE GLASS”は読み間違える人が多いため“OTON GLASS”と名称変更するとのこと。

 いわゆるウェアラブルコンピューティングの応用だが、Googleでさえ「こんなメガネが出来たけどどう使う?」と言っているときに、解決すべき課題があってその答えとしてウェアラブルを採用している。チームがハードウェア、ソフトウェアと分担して解決。さらに今回のプロジェクトで得られたものから新ビジネスへの発展を考えているという。

 スマホが普及して4~5年が経過して、いまや全契約の約半数をスマホが占めるようになってきている。また、企業でのタブレット利用はこれから大きな市場になるといわれ、DMS(デバイスマネジメントサービス=多数のデバイスのアプリ管理など)の整備が急務という意見もある。しかし、スマホやタブレットの次の世界といわれるのが、ウェアラブルやIoT(インターネット・オブ・シングス)だ。そこでは、今までのスマホアプリとは、可能性も開発手法も異なるのだという示唆に富んだものといえる。

 最終審査を行なった早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏は、「若い人が単にアイデアだけで何かをつくるのではなく、グループをつくってプロジェクトをマネージして、ビジネスも視野に入れて動きはじめた。こういうことが日本の学生グループにもできはじめたのはとてもいいこと」と講評。ただし、ひとつだけとして「今回はドコモAPIを使うことが前提だったが、学生なら言語認識など自身でAPIを作るなど原理的なことにもチャレンジしてほしい」ともコメントした。

 主催者側からは、ドコモ執行役員研究開発推進部長栄藤稔氏が、「本当に感激しました。OTONE GLASSのみなさんも、ほかのメンバーも情熱を高く持ってやってくれた。今回だけではなくこれからも作品についても必要なのは、人のネットワークです」と全体をしめくくった。日本は、米国にあるようなスタートアップが学ぶ場が少ないと指摘されている。全チームが起業をめざすのではなさそうだが、大学や企業という垣根を越えた活動も行えるこうしたイベントは貴重といえる。

ドコモ アプリコンテスト
↑アプリコンテスト参加者と審査員・関係者の記念写真、この後懇親会が行なわれた。

【筆者近況】

ドコモ アプリコンテスト

遠藤諭(えんどう さとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

●関連サイト
ドコモInnovation Village Developer Application Contestページ
ドコモ Developer support

(2014年3月25日18:00追記)ノミネート作品一覧のビジュアルを差し替えました。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう