PCゲームのダウンロード販売サイト『Steam』のゲームレビュー連載、第7回目は仮想の共産主義国家の入国審査官となり、祖国へ潜入しようとする怪しい奴らを国境で食い止めるゲーム『Papers, Please』を紹介したい。なんと先日、公式に日本語に対応した。日本語で遊べるんです。大事なことなので2回言いました。
『Papers, Please』
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●Steam販売ページ(関連サイト)
Papers, Pleaseでは、プレイヤーは厳正なる“勤労抽選”の結果、入国審査官への労働を命じられて働くことになる。勤務地は隣国コレチアとの6年に及ぶ戦争で祖国が勝ち取った国境の街、グレスティンだ。
戦時中は最前線だったこの街で、祖国アルストツカへの入国希望者をさばいていくことになる。
■指示に従って入国希望者を審査せよ!
ゲームを始めると毎日、入国管理省からの広報が届けられる。広報には“本日の入国規定”が書かれており、プレイヤーはこの規定に従って入国希望者を審査し、入国を許可するか拒否するかを判断しなければならない。
長い長い戦争がおわり、平和が訪れたアルストツカには入国希望者の長蛇の列ができていた。この栄えある入国審査の一人目は、メガネをかけた女性だった。「ようやく家に帰れる」、その言葉に私は少し涙しながら、入国許可のスタンプを押すのだった。
次の入国希望者は“インポール”からやってきた男性だった。書類に不備は見当たらない。入国を許可する緑のスタンプ“APPROVED”を迷いなく押した。入国拒否の赤いスタンプ“DENIED”の出番はまだないだろう。
しかし、さきほどの男性が国境を通り過ぎたあと入管省から通告が届いた。
しまった。外国人を入国させてはいけないのだった。過ぎたことを悔やんでもしょうがないが、もう二度と間違いを犯さないようにしなければ。我が祖国は何度もミスをするような人間の生存を認めはしないのだから。
その後は入国規定を心がけながら、流れ作業のように入国希望者を捌いていった。一種の間違い探しゲーム、と言っても良いだろう。
1日の労働がおわると、その日の給料が支払われるようになっている。
1日中働いて、たったのこれだけ?住居費と食料費を払うと、貯金も底をついてスッカラカンになってしまった。一家五人、今夜は暖房のないなか過ごさなければならない。
■入国希望者と書類の食い違いを見つけ出せ!
寒さに震えながら迎えた翌日、新聞には「検問所を外国人へも開放する」との見出しが躍っていた。今日からは外国人の入国希望者にもスタンプを押して良いらしい。
しかし、すぐにこれが大きな“問題”だと分かる。不正な書類を使って、我が祖国に潜入しようとするスパイが大勢いるのだ。
例えばこの男性、一見すると問題なさそうだが、パスポートには女性と書かれている。
不審な点を見逃すわけにはいかない。国家のためにも、そして私の家族のためにも。アナタ、パスポートには女性と書かれていますが、これはどういうことですか?
答えられない男性のビザに入国拒否のスタンプを押すと、次の入国希望者を呼んだ。審査室に入ってきた男性は生え際前線の怪しいヤツだった。どれ、パスポートの写真は……ハゲているじゃないか!
一体どうやってハゲからフサフサになったというのだ!やや興奮気味に追い返すと、今度は「パスポートなどいらない」と主張しだすちょっとアレなじいさんの相手をするハメになった。
たしかに我が祖国アルストツカは素晴らしい国ではあるが、パスポートは必要なのだ。帰りたまえ。
こうした労働を続けた4日目。ついには妻も、息子も、義母も、叔父も飢えと寒さで病気になってしまった。そのうえ、住居費までもが値上げされた。
祖国よ、あなたは我々をどうしようというのか。私は家族に対して満足に薬も買ってやることすらできない。
■日を追うごとに複雑になる入国審査規定
生活費をどうやって工面しようか悩んでいたところ、検問所に立っている同志が突然やってきた。なんでも、怪しいヤツを拘束すると手当が出るので、私に怪しい入国希望者を片っ端から拘束してほしいらしい。
協力してくれれば、拘束者2人につき5クレジットのお礼をくれるという。今までも怪しい人間は片っ端から拘束していたが、これで心おきなく別室送りにできる。これで家族に少しは楽な生活をさせてやれるかもしれない。
しかし、日が経つにつれ“入国審査の仕事”のほうはどんどん難しくなっていった。整形手術によって顔が変わっていたり、ビザに本名とはべつの通名が記載されていることが多くなった。こうなると、指紋検査になる。
また、X線を使った性別の確認や、危険物の所持の有無なども調べなければいけない。
審査に必要な時間ばかりが増えていき、結果として日々の給料は少しずつ減っていった。しかし、あの同志からの手数料を受け取ることができれば少しはマシになるだろう。
■飢えと寒さで亡くなっていく家族
なんということだ。今日は待ちに待っていた同志からの支払いの日なのだが、彼はたったの5クレジットしか持ってこなかった。
病気?私の家族も病気なんだ。
アテにしていた収入がなくなり、ガックリしていたところに追い打ちがきた。飢えと寒さで病気だった義母と叔父が死んだのだ。
まだ妻と息子は生きているが、息子は重病だ。この貧困から抜け出すには仕事の効率を少しでも良くし、より多くの給料を稼がなければならない。他人などアテにしていられない。
涙をのんで、妻の薬代にあてるはずだったお金を使って入国審査室を改良した。これで少しでも多くの入国希望者を捌き、給料を増やせると良いのだが……。
■トライ&エラーで全エンディングを見よう!
と悩んでいたが、その後のプレイでは食いぶちが減ったこともあって少ない収入でもやっていけるようになった。これがうば捨て山の効果か。まさかゲームでそんなものを実感させられるとは思ってもいなかったのだけれど。
初回プレイではこの後とあることをきっかけにゲームオーバーになってしまったが、Papers, Pleaseはセーブをロードして好きな途中の日からやり直すことができる。
うまくいった日まで戻り、そこから新しい人生を歩み出すのも悪くないだろう。用意されている20のエンディングを見られる日がくるまで、入国審査官としての労働に誇りをもって働いて欲しい。
『Papers, Please』
●3909
●9.99ドル(2013年8月9日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows、Mac、Linux
ジャンル アドベンチャー、独立系開発会社
●著者
篠原 修司
Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: KiDD
個人ブログ:デジタルマガジン
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